カセットは世界中に普及し、誰もが気軽に聴けたアナログメディアだ。

それだけに、その姿形はさまざま。

同じカセットでもラジカセやウォークマン、カセットデッキと再生手段が違えばまた違った音になる。

そんなお手軽なカセットだが、当時はもの凄い執念で各メーカーがカセットの限界と可能性に挑んでいた。

名門TEACのひとつの答えがこれだ。

TEAC Z-7000
価格:298,000円
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亜鉛ダイキャストボディ
録再コンビネーション3ヘッド
N  R:B,C,dbx
ワウフラ:0.019%以下
f  特:20~22,000Hz±2dB(EIAJ,メタルテープ)
S/N比:92dB(dbx IN 1kHz)
Dレンジ:110dB(dbx IN 1kHz,ピークレベル)
寸  法:432(幅)×163(高さ)×437(奥行)mm
重  量:17.9kg
※別売りワイヤードリモコンあり

当時ティアックのフラッグシップモデルである。
高級カセットデッキであるにもかかわらず、名門ナカミチの影に隠れてあまり目立たない存在であるが、当時はかなりの存在感だった。
オレはただただカタログを眺めては操作する妄想をしていたものだ。

見てくれだけでない驚異的なスペック。
ボタンだらけのメカニカルなデザイン。
アクリル製のカセットリッドと大型ディスプレイも目をひく。

とにかくデカイ、重い。
到底カセットデッキと思えない。
カセットデッキなのにアンプ並の重量のため、ラックの一番下にセットしている。
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カセットはアナログ信号で録音再生する音響機器。

アナログはそもそもコピーするごとに劣化していく。

しかしデジタルなら理論的に劣化はない。

オレは逆に劣化があるからこそアナログは楽しいのだと思う。
その劣化を極力押さえ込むところに面白さがあるのだ。
だからこそ手間をかければかけるだけ、その苦労が良い音として返ってくる。

その手間を形にするとこうなるんだ、というお手本のようなデッキだ。


正面左側操作部
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最上段ツマミ オートスペースで設定された秒数でレックミュートが機能する。
ただし、印刷の数字は秒ではない・・・(0で2秒、5で7秒、10で10秒)
フェードイン/アウトはあらかじめ設定しておけば録音開始、レックミュートした時点でそれぞれ設定した時間でレベルが自動で上下変動する。

2段目 3ヘッドならではのモニタースイッチは4種類から選べる。

3段目 NRはdbxもあり。

4段目 入力ソースはライン、マイク(LR入力端子有)、dbxレコード、マルチプレックス
フィルタースイッチもなぜかここにある。

5段目 タイマー使用時の動作セレクトスイッチ。

上の写真に写っていないが、この左スイッチ類の下にはヘッドホンボリュームとピッチコントロールがある。
ピッチコントロール付きのデッキは少ない。
違うデッキで録音したテープと回転誤差があるなら調整もできる。(変速範囲は±10%)

しかしZ-7000のこのボタンの多さ、
同じ機能でもつまみにするとかでもうし少しすっきりはできると思うが、あえてのデザインか?

面白いのは、ここまでボタンを多くしておいて、オートテープセレクトだったり、オートキャリブレーションだったりと、マニュアル志向というよりもオート化と多機能化というアプローチの仕方なのだ。
あくまでもスマートに使いつつ、考えられる機能は全部つけたみたいな感じだ。

こんななりのZ-7000ではあるが、普通に再生するだけなら、カセットをセット→NR SYSTEM選択→再生ボタンを押す だけでいい・・・

それにしてもそんな普通の操作も久々に使うと一瞬とまどってしまうほどのボタンの多さだ。
あれ?どこだっけ?とボタンを探してしまう・・・。

正面下部左側の走行系の操作部
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緩やかな斜め配置のボタンはとても見やすく、使いやすくマニアックでもある。
が、ボタンの配置は直感的に使いやすいとはいいがたい。
再生ボタンはもう少し大きくするべきだな。

正面下部右側の操作部
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L、Rのバランスとマスターレックボリューム。
スライドボリュームはカッコいいが使いやすいとは言えない。
特に横スライドは微調整が難しい。

右側の操作部 ※多すぎるので一般的なボタン類は説明省略
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最上段からオートロケータースイッチ類。STZはゼロカウンター位置をサーチ、CUEスイッチでキュー位置を記憶し、STCでキュー位置をサーチ、STRで録音開始位置をサーチ。

2段目 POSITIONで記憶させた2区間をSESスイッチで消去実行。
REPEATゼロカウンターとキュースイッチで指定した区間をリピート再生。
INTRO CHECKは10秒ずつ全曲の頭を再生。

3段目 CPSは希望曲をサーチ。ディスプレイのCPSカウンターに表示された前後の曲をサーチして再生。
ピークホールドはピーク値の一定時間保持のON/OFF。

4段目 使用するテープの長さの設定、46分はラージハブにも対応。

5段目 キャリブレーションした内容を3つまでメモリーできる。
REFERENCEはZ-7000のリファレンステープのキャリブレーションを呼び出す。
リファレンステープは公表していないがキャリブレーションしない時、急いで録音しなければならない時に使える。

6段目 オートテープポジション表示、ディスプレイにも表示されているが・・・

7段目 MEMORYはテープメモリーにキャリブレーション結果をメモリーする時に押す。
正常にメモリーされると隣のOKインジケータが点灯。
HI-EXTENDはONで録音すると高域が改善。ただし再生時もONにする必要がある。
このスイッチはCrO2ポジションテープとMETALポジションテープ時に120uS-EQで録音する為のスイッチ。
(CrO2とMETALは70uSと120uSのEQを切り換えが出来るということ)

8段目 MOLバランスはオートキャリブレーションの際の音質傾向を選択できる。
HIGHは高域重視(f特優先)、LOWは中低域重視(ひずみ率優先)、STDはその中間。

ちなみにオススメテープは取説に表記されている。
当時を代表するテープがずらりと並ぶ。
メタルはメタリック、MA-R、MX、クロームはSA、JHF、XLII、ノーマルはAD、AHF、UDなどなど。
分かる人はこれで年代が大体想像つくであろう。
この中のどれかがリファレンステープということだろう。

またZ-7000はカセットケースほどの大型FLディスプレイが特徴。
とにかくカウンターは大きく見やすい。
30セグメントのピークメーターも視認性が良くカッコイイ!
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このデッキのヘッドはオリジナルをかろうじて保持している。
TEACのメンテナンス時の点検でまだ使えるとの判断を頂いた。
ちなみにサービスの人曰く、オリジナルではないが代替ヘッドはあるとのこと。
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肝心の音質だが、今回は簡単な再生のみ行った。
他デッキで録ったテープを再生し、ヘッドホンにてモニター。

音質傾向は、中低域が厚く特徴がある。
スピーカーから出た音もやはり中低域がしっかりしている。
ソースに忠実というより、いい意味でやや色付けがされた音だ。
少しリバーブがかかっているような心地いい響きが付加されたような再生音だ。
誰もがものすごく鮮烈な音を想像するかもしれないがアナログらしい柔らかい音には驚くことだろう。
これはナカミチの音とは対極かもしれない。
図体のわりにとても優しい音なのだ。

いいデッキほど原音に忠実かつクセがなくというイメージだったのだが、実際ナカミチはそれである。
しかしZ-7000は別のアプローチでいい音を目指したと感じる。

ただし、今回は他デッキで録音した試聴の結果である。
自己録再ならまた違った感想を持つかもしれない。
そういう意味ではZ-7000の実力を見極めるには、再度検証の必要があるだろう。


※修理時備忘録
ピッチコントローラー部オリジナル部品はTEACで在庫なし。
今回ピッチコントローラを交換したが、ON/OFFの切替えが固定となってしまった。
本来はつまみを押すことでON/OFFの切替えができた。

※2017/4現在 TEACサービス対応不可

※以下検証項目
①SES使用時、もしくはRECポーズ時に耳障りなクリックノイズが記録される事はないか?
②周囲の温度が高い状態で使用していると、未入力時でもレベルメーターの表示が-40dBと-30dBの間(-35dB)の表示が点灯する事はないか?
③dbx録音時(録音同時モニター時)に無信号状態に微かに「プー」とういノイズが入らないか?