メモリーウォークマンとしては三世代目となるのがNW-E8P。

ノンメディアの可能性を最大限に生かせばこういう形も可能ということを早くも3機種目で実現した。

かつてカセットウォークマンにワイヤレスヘッドホンを同梱し、ワイヤレス使用を実現したモデルはあった。
しかし、本体、イヤホン、バッテリー等を全てまとめた一体型はこのE8Pがウォークマン史上初となった。

発売当時はダウンサイジングや奇抜な発想が得意なソニーならいつかやるであろうということもあり、それほど話題にもならなかった気がする。

なぜなら時代はまだMD全盛。

そんな中でメモリーオーディオはまだまだ黎明期であり、時代を先取りしたがためヒットとはならなかったのだ。
よくソニーがやってしまうパターンである。

また、これ以前に発売されていたメモリースティックウォークマンの不振も相まって、これからのウォークマンの方向性も定まっておらず、迷走してたように思える。

当時のポータブルの主流はまだMDであったが、MDはディスクの交換である意味無制限に音源を持ち歩くことができた。
しかし当時のメモリーウォークマンのメモリ容量では、MP3(128kbps)換算でもアルバム1枚分程しか入らず、外出先でのメディア交換はパソコンを持ち歩きでもしない限り不可能。

また、当時のパソコンの普及率も考えると当然持ち歩きには厳しい状況にあったことは間違いない。

時代を先取りするということはそういうリスクも背負うわけだ。

とはいえ、継続は力なり。

この頃からのノウハウがあったからこそ、現在のウォークマンがあるのはいうまでもない。

このウォークマンの発売から8年後、WD-W202という一体型としての二代目が発売された。
つまり、8年かけてやっと技術的にも使い勝手でも満足できるものが作れるようになったのである。

一体型のメリットは、必然的に小さく軽く作られているということ。
また、本体とイヤホンを繋ぐケーブルの心配がないこと。

これがポータブルプレーヤーとしては究極の形であるということだ。

デメリットは、一体型である故、
・ディスプレイを見ながらの操作ができない →逆にディスプレイがあっても意味がない
・従って曲をたくさん入れて使うには不向き →選曲するのがまず大変
・イヤホンの交換不可 →そもそも本体がイヤホンだから
・従ってイヤホン交換で好みの音質を選ぶことができない
・一体型で重いため、耳への負担はかなり大きい →長時間使用には厳しい

と、あまりいいことがない。

これらが一体型不在8年のブランクに大きくのしかかっていた課題でもあっただろう。

当然のことながら現在の一体型であってもデメリットは同じなのだが、E8Pとは比較にならない進化を遂げている。

まず、ディスプレイは不要ということで省略されたのは潔い。
曲の検索にZAPPINという機能を使用することにより新しい選曲の方法を提供した。
見ながらの選曲でなく、聴きながら選曲するという発想だ。

イヤホン部はインイヤータイプとなり、より軽く、高音質化された。
ネックバンドスタイルとなり、従来の耳だけの一点支持が、耳・耳穴・首の三点支持となり、耳への負担と装着性が向上した。

さらには乾電池を内蔵バッテリーに置き換えることにより、重量を大幅に軽減。
当然記録容量も増え、順当な進化を遂げている。

もちろんE8Pのノウハウもあってのことだろう。
こうやってウォークマンは進化しているといういいお手本である。

それでは初代ヘッドホン一体型ウォークマン NW-E8P を見ていこう。

SONY NW-E8P
2001年4月21日発売
40,000円
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仕様
メモリ:64MB
コーデック:ATRAC3(mp3再生不可)
バッテリー:単4型1本
連続再生時間:6~7時間(充電約1.5時間)
重量:LR合わせて約90g(バッテリー含む)

手持ち写真
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片ch分約45gとはいえ、重く感じる。
これが耳に装着となると痛くなること必至。

Rch前面
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装着してしまえば見ることのないディスプレイはバッテリーライフの面からみても無用といえる。
左からディスプレイ表示切替ボタン、プレイモード切替ボタン、メガベース/AVLSのコンビネーションボタン。
もちろんブラインド操作にはボタン配置を覚えておかなければならない。

Lch前面
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左側はウォークマンロゴのみで左右非対称のデザインとなる。

Rch裏面
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E8PはRch側に全てのオペレーションボタンが集中する。

Rch側面
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左からボリューム、ホールド、再生・送り戻し・停止のコンビネーションジョグレバー。
カバーをあけるとUSBミニの汎用端子が現れる。
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Lch裏面
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電池ボックスのみ。
単4乾電池を1本使用するが充電は専用充電器にて行う。
なおUSBによる充電は不可。
汎用電池をバッテリーとして使えるメリットは内蔵電池のバッテリー寿命による交換が不要なこと。
充電はめんどくさいがバッテリーが終わっても心配ないのはコレクターにとってはメリットでしかない。

E8Pはこのようにヘッドホン一体型であるため、耳への装着が一番のネックとなる。
写真のような付属アタッチメントを使用することにより、耳の小さい人への装着もサポートしている。
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装着方法はそのまま耳にかけるだけなのだが、耳が大きい人へはかなりの負担となるはず。
装着部分はバネのように軽くたわむようにできており、個人個人の耳のサイズには対応できるとは思うが平均的と思われるオレの耳のサイズをもってしてもだいたい1時間も装着すれば痛くてつけてられない。
リスニングポイントもずれるので個人個人で聴こえる音が違ってくることも考えられる。

音質的には耳への装着感が軽いこともあり、音も軽い。
メガベースで低音増強するも中域以下のスカスカ感はどうしようもない。
当然のことながら外部ノイズもたくさん入ってくるし、音漏れも激しい。
インイヤータイプでないので音漏れ=そのまま漏れてくる音と判断して間違いないので、手で持った状態で音漏れしないレベルまでボリュームを下げて装着すれば電車でも気にすることはないだろう。
ただし、他人を気にしての低音量での使用はとても使い物にはならない。
ウォーキングなど、他人の目を気にしなくてよい環境でならまだ快適に使えるだろう。

注意点としてE8Pには消耗部分があるということ。
イヤーパッドだ。
スペアーイヤーパッド EP-Q1 250円(大手量販店参考価格)
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これは今でも販売されており、他のヘッドホンとの互換性もある。
スポンジなので経年劣化が最も激しい部分。
使用しない時は本体から外して密閉された袋に入れるなどしていれば多少はもつ。

これに限らずウォークマンの消耗品の確保は重要であり、使い捨てとしないコレクターの間では常識だ。
しかし、このイヤーパッドだけは素材の性質上長期保存はまずできない。
実際ストックしていた新品が数年後にはボロボロに朽ち果てていたという痛い経験もあり。
耐久性のあるものであれば、末永く使う上で消耗品の確保だけはオススメしたい。

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NWD-W202を手にしたら、かつてこんなウォークマンがあったということを知っていると面白いかもしれない。