かつてワーナーパイオニア(現ワーナーミュージックジャパン)はソニーの「マスターサウンドシリーズ」同様に高音質レコードである「スーパーディスクシリーズ」を発売していた。
ソニー マスターサウンドは以下参照↓
松田聖子 マスターサウンドLP
明菜のスーパーディスクは残念ながらわずか5枚のみ。
各アルバムの詳細をみていこう。
1.プロローグ〈序幕〉
型番:SDM-15001
価格:3200円
発売日:1983/4/23(レギュラー盤:1982/7/1)
備考:記念すべきファーストアルバム。レギュラー盤から後追いでSD化された
2.バリエーション〈変奏曲〉
型番:SDM-15004
価格:3200円
発売日:1983/5/28(レギュラー盤:1982/10/27)
備考:レギュラー盤から後追いでSD化された
3.ファンタジー〈幻想曲〉
型番:SDM-15007
価格:3200円
発売日:1983/6/25(レギュラー盤:1983/3/23)
備考:レギュラー盤より3か月の後発
4.NEW AKINA エトランゼ
型番:SDM-15010
価格:3200円
発売日:1983/11/30(レギュラー盤:1983/8/10)
備考:レギュラー盤より3か月半の後発
5.BEST AKINA メモワール
型番:SDM-15012
価格:3200円
発売日:1984/2/22(レギュラー盤:1983/12/21)
備考:レギュラー盤より2か月の後発
この5枚はデビューアルバムから数えてきっちり最初の5枚だ。
(実際は2nd「バリエーション」と3rd「ファンタジー」の間にミニアルバム「Seventeen」が発売されたが、これは12インチシングル仕様だった)
この5枚のレギュラー盤の発売時期を見ると、1982年7月に1stアルバム、そのわずか約4か月後に2ndセカンドアルバム、その約5か月後に3rdアルバム、その約5か月後に4thアルバム、その約4か月後にはベストアルバムが発売されている。
今では考えられない驚異的ハイペースでのアルバムリリースである。
しかもシングルでなくアルバムだ。
いかに多くの作家陣が参加し、レコード会社のバックアップが強力であったのかが伺える。
だがこれは当時のトップアイドルである聖子も明菜同様だし、他のアイドルでも現代よりもハイペースだったのは珍しいことではなかった。
日付データだけを見ても当時の勢いというものが想像できるだろう。
後に年一ペース程度に落ち着くが、それでも大変なことである。
当時はそれを普通のことのように受け入れていたのだから、こっちとしても忙しい。
当然聴きたいレコードがありすぎるのでレンタルに頼らざるをえず、レンタルショップはさぞ儲かっただろう。
話をもとに戻そう。
オレは当時、スーパーディスクの存在を知らなかった。
(と思う)
なぜなら、初めてリアルタイムで買った明菜のアルバムが7th「BITTER AND SWEET」(1985/4)だからである。
すでに明菜のスーパーディクス(5thで完了)は発売されていなかったので知る由もない。
(これ以前のアルバムは当時後追いで全てそろえた)
さてスーパーディスクの高音質へのアプローチであるがソニーのマスターサウンドとほぼ同じだ。
違うことといえば、ソニーはアルバム毎に共通部分以外の高音質技術を細分化(DR、DM等)して明示していたのに対し、パイオニアはアルバム個々では細かい部分は公表していなかった点だ。
それではスーパーディスクをレギュラー盤と比較しながら細かく見ていきたい。
比較用には特典の多かったファンタジー〈幻想曲〉を選ぶ。
ジャケット
左:スーパーディスク、右:レギュラー盤
全く同じ。
左:スーパーディスク、右:レギュラー盤
裏も同じ。
ただし厚さだけは異なる。
左:スーパーディスク、右:レギュラー盤
スーパーディスクには専用インナースリーブが入るため、ジャケットが厚いのはソニーと同じだ。
帯
左:スーパーディスク、右:レギュラー盤
レギュラー盤上方の明菜の漫画キャラクターがスーパーディスクでは下部へ移動。
3rdプレゼントポイントの部分で特典がひとつ多いことに注目したい。
以下共通
◆明菜 自筆 歌詞カード
◆サイン入り ポートレート
◆明菜メッセージ
以下スーパーディスクのみ
◆ミニ・ポスター
聖子のマスターサウンドシリーズではポートレート等のおまけはオリジナルと同様だったが、明菜のアルバムにはすべてスーパーディスクのみの特別なポスターが付属した。
(詳細後述)
価格は3,200円でレギュラー盤よりプラス400円。
(全5枚すべてが同じ価格)
左:スーパーディスク、右:レギュラー盤
帯裏はスーパーディスクは技術説明、レギュラー盤は所属歌手の既発アルバムの宣伝。
インナースリーブケース
スーパーディスクも基本的なパッケージングはソニーのマスターサウンドシリーズと同じだ。
グループガード(レコード盤の音溝保護の物理的仕組み)がない分、盤の保護には気を使っているということか。
内袋
左:スーパーディスク、右:レギュラー盤
ワーナー・パイオニアのロゴはないがやはりマスターサウンドシリーズと同様の仕様だ。
レーベル
上:スーパーディスク、下:レギュラー盤
レーベルはスーパーディスク専用の共通デザインで全アルバムが統一されている。
レコード盤
重量盤とは明言していないが、あきらかにオリジナル盤より厚く重い。
3rdファンタジーの実測値は、レギュラー盤124gに対し、スーパーディスク143gと差があるがこの程度では確かに重量盤とは言い難い。
(重量には個体差があるので参考値)
これは盤面(音溝)の保護を目的とした盤の周辺を他より盛り上げることで音溝部分を浮かせる「グループガード」を設けていないためだ。
音質を優先するならば、音溝の保護よりもターンテーブルに盤を密着させたほうが高音質が期待できるという考えだ。
これもマスターサウンドと同様だ。
高音質技術ほか
比較試聴は別の機会でやろうと思っているが、付属のチラシに書かれているのはこれだけだ。
・デジタルマルチレコーディング
・デジタルマスターレコーディング
・デジタルマスタリング
↑ソニーのマスターサウンドでは盤ごとにここを明確化している
・半速カッティング
・スーパーメッキ方式
・特殊高級材料使用
・厚く重い新形状
・ブックケース型特製ジャケット
↑特に半速カッティングを全てのスーパーディスクでやっているのかは不明だが、やっているのなら聖子のマスターサウンドよりも音質が期待できる。
特典
基本的にオリジナル盤の特典と同じものを同梱するのはソニーと同じであるが、明菜のスーパーディスクにはプラスでポスターがついていた。
これはファンタジー〈幻想曲〉の共通特典のポートレート。
上:スーパーディスク、下:レギュラー盤
各アルバムの特典ポスター
1.プロローグ〈序幕〉
2.バリエーション〈変奏曲〉
3.ファンタジー〈幻想曲〉
4.NEW AKINA エトランゼ
これはどこかで見たことがあると思ったら、同アルバムの初回特典のポストカードセット(6枚組)と同じものだった。
NEW AKINA エトランゼ 初回特典ポストカードセット(6枚組)
5.BEST AKINA メモワール
これはレギュラー盤のLP初回プレスの特典カレンダーの1,2,3月で使用された写真だ。
カレンダーの方は胸の辺りまでしかなかった。
レコード BEST AKINA メモワール 初回盤 特典カレンダー
ちなみに同カセットの初回版と通常版は共にこれとは別ショットを使用したカードが付属した。
カセット BEST AKINA メモワール 初回盤 特典カレンダー
デビューアルバムから数えて5枚だけに終わった明菜のスーパーディスク。
やっぱりもう少し先のアルバムまで欲しかった。
CBSソニーよりもワーナーパイオニアの方が先にアナログを見限った結果だろう。
そもそも高音質レコードへの力の入れようもソニーの方が強かった。
スーパーディスクは総タイトル数でもマスターサウンドシリーズより少ない。
そのせいもあってか、明菜に限らずスーパーディスクはどれも中古の流通が少ない。
これから入手しようするなら、聖子のマスターサウンドとは若干事情が違う。
未開封や極上品でない限り、プレミア価格になることはないが、流通量が圧倒的に少ないのでまず見かける機会が少ない。
オークションサイトでは常に数点程度がいいところだ。
また、帯や冊子がないなど完品も少ない。
帯はジャケットのデザインを邪魔するものなので本来ならない方がよい。
しかし帯には当時の貴重な情報が記載されており、歴史を知るためには必須である。
コレクションするにもわずか5枚しかないことは逆に救いかもしれない。