カラオケといえばカセットテープ。

それが80年代の常識であった。

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実際、家にはオヤジのカラオケテープがたくさんあり、カラオケ=演歌という公式がオレの中に植え付けられた。

そういうわけで
カラオケのカセットテープは当時の若者にはダサい印象があったのではと思う。

演歌を聴く中高年はカラオケ以外でも音楽をカセットテープで聴くことは普通のことだった。

とにかく当時はそんなイメージから、例えポップス分野のカラオケがあっても一切気にすることはなかった。
(オーディオ小僧もオーディオマニアのはしくれだったのでカラオケは許せないと思っていた)


月日は流れ現代。

今更カラオケの重要性に気づき始めた元オーディオ小僧。

オレは音質を気にして聴く時はボーカル(歌詞)が耳に入らないという特異体質で、むしろ普段も気合を入れないと歌詞が頭に入ってこないのだ。
(正確にはボーカルをひとつの楽器のように聴いてしまうということ)

これも長年ポップス音楽の音質について考えてきた賜物であり、弊害でもある。

クラシックやジャズの音質を云々いうのは音楽のジャンルから考えれば当然であっても、ことポップスに関してはそもそも音質は二の次なのだということは重々承知している。
(特に現代ポップスはそれが顕著だ)

しかし、ポップス音楽でオーディオにのめり込んでいったオーディオ小僧は、判断が難しいポップス音楽で音質の良し悪しを見出すことに心血を注いできたのだ。

だからクラシックやジャズを聴くものからすれば、ポップスの音質についてあれこれ言っているオレはこっけいに見えるかもしれない。
(一応ジャズはハマっていた時期もあるのでかなり聴いているが)

そんなオレを支えているのは、やはりポップス音楽の音楽性や音質に変革をもたらした80’sポップス音楽なのだ。

近年では当時以上に80年代ポップスを聴いているのだが、当時はさほど気にしていなかった曲の構成には特に着目して聴いている。

そこで重要となってくるのがカラオケ(オフボーカル)なのだ。
(カラオケを練習するためにカラオケを聴いているわけではない)

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さて、今回取り上げるのは中森明菜の「オリジナルカラオケ」シリーズのミュージックテープである。

これの何が重要であるのか?

それはまず「オリジナルのオフボーカル音源」であることだ。

思えば80年代はニセカラオケが氾濫していた。

知らずに買うとオリジナルとはほど遠いカラオケだったり、下手するとオーケストラ演奏だったり。
カラオケ店に行っても著しくオリジナルと異なるしょぼい演奏のカラオケがあった。
(それは現代でも同じか?)

まあカラオケ店はどうでもいいが、今になってオリジナルのオフボーカルを聴くことで新しい発見があることが面白いのだ。

カラオケを聴くことで、ボーカルでマスキングされた曲の土台が明らかになり、曲の分析がより詳細にできるからである。

ボーカルでマスキングされた音はもとよりギター、ベース、コーラスも手に取るように聴くことができるのだ。

二つ目は「ここでしか聴けないカラオケ」があることだ。

オリジナル曲のカラオケCDもあるにはあるが、それはほとんどがシングル曲とそのカップリング曲(B面)にとどまる。

ファンでなければそれで充分かもしれないが、アルバム曲も聴いてきたファンにとってはアルバム曲のカラオケはとても新鮮で貴重なものだ。

そんなアルバム曲のカラオケが当時のカセットテープで存在したのだ。

既存アルバムのカラオケをいま作ろうとなるとミックスからやり直すということになり、実質需要のないアルバムのカラオケが今後世に出てくるとは到底思えない。

アルバム曲のカラオケもむしょうに聴きたいと思っていた矢先、80年代当時のカラオケカセットをたまたま目にしたのだ。

そこで見たのは、存在しないと思っていたアルバム収録曲のカラオケだった。

まさにカセットでしか聴けない幻の音源だった。

当時、毛嫌いしていたカラオケのカセットがお宝に見えた瞬間でもあった。

もちろんアルバム曲の全てが存在するわけではないが、それでも無いよりは全然いい。


そんなオレにとってのお宝音源を詳しく見てみよう。

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※()内はカラオケ収録CD(収録アルバム全てを記載したものではない

オリジナルカラオケ ベスト6
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※ジャケットはシングル「セカンド・ラブ」から

発売:1982or1983年

品番:LKD-1001
価格:1,000円
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Side 1
セカンド・ラブ(シングル曲、CD「Singles Box 1982-1991」収録)
鏡の中のJ(セカンド・ラブ B面、CD「Singles Box 1982-1991」収録)
夢判断(少女A B面、CD「Singles Box 1982-1991」収録)

Side 2
少女A(シングル曲、CD「Singles Box 1982-1991」収録)
スローモーション(シングル曲、CD「Singles Box 1982-1991」収録)
条件反射(スローモーション B面、CD「Singles Box 1982-1991」収録)


デビューシングルからサードシングルまでのAB面カラオケ集ということになる。
全てCD化されているので特に貴重な音源はない。
当時はカラオケには興味なかったとはいえ、カセットであればオフボーカルを聴けたのだなと思うと感慨深い。


オリジナルカラオケ〈2〉ベスト6
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※ジャケットはシングル「1/2の神話」の別ショット

発売:1983年

品番:LKD-1002
価格:1,000円
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Side 1
1/2の神話(シングル曲、CD「Singles Box 1982-1991」収録)
温り(1/2の神話 B面、CD「Singles Box 1982-1991」収録)
X3ララバイ(アルバム「バリエーション〈変奏曲〉」より、他音源無し)

Side 2
セカンド・ラブ(シングル曲、CD「Singles Box 1982-1991」収録)
少女A(シングル曲、CD「Singles Box 1982-1991」収録)
キャンセル!(アルバム「バリエーション〈変奏曲〉」から、他音源無し)


前シリーズとかぶる曲もある。
どんなコンセプトなのか疑問であるがセカンドアルバム発売周辺の曲で構成されている。
着目すべきはX3ララバイとキャンセル!だ。
(キャンセル!が入るならヨコハマA・KU・MAも入れてほしかった)
特にキャンセル!はサビの部分の明菜セルフコーラスがあるがこれが面白い。
「崩れそうよ 崩れそうよ」の部分はコーラスでは「そうよ 崩れそうよ」のところから重なる。
次の「取り消してよ 取り消してよ」の部分はコーラスでは「してよ 取り消してよ」となる。
確かに相当注意深く聴いていればボーカル入りでもわかるといえばわかるがカラオケで聴くとやけに面白い。
このセルフコーラス部分はボーカルトラックからカットインして抜き出したものではないだろうか?
入りの部分で生で歌って付け足したのとは違う違和感を感じたからだ。
最後の「きゃん せぇ るぅ~」の部分はコーラスに深いエコーをかけてメインボーカルより少しずらすことによってインパクトをもたせているのがよくわかる。
非常に緻密に作っている。
ここはオリジナルを聴いていて、かっこいいなぁと思っていた部分なのでここだけ聴けるのは感激だ。


オリジナルカラオケ〈3〉ベスト6
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※ジャケットはシングル「禁区」の別ショット

発売:1983年

品番:LKD-1004
価格:1,000円
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Side 1
禁区(シングル曲、CD「Singles Box 1982-1991」収録)
雨のレクイエム(禁区のB面、CD「Singles Box 1982-1991」収録)
ストライプ(アルバム「NEW AKINA エトランゼ」から、他音源無し)

Side 2
トワイライトー夕暮れ便りー(シングル曲、CD「Singles Box 1982-1991」収録)
ドライブ(トワイライトー夕暮れ便りー B面CD「Singles Box 1982-1991」収録)
少しだけスキャンダル(アルバム「NEW AKINA エトランゼ」から、他音源無し)


これはNEW AKINA エトランゼ」周りの曲で固めたということだろう。
着目すべきはストライプと少しだけスキャンダル。
なぜストライプが入ったのか(リクエストが多かった?)はわからないが、カラオケで聴いてみるとオーケストラの演奏が凄い。
力強いバイオリンは聴きごたえ十分。
そして、少しだけスキャンダルだが、これは新たな発見。
なんとイントロで「盗んでく~ち~び~る~ 秘密の香り・・・少しだけ・・・スキャンダル」の「スキャンダル」の部分になんとドラマーのスティックカウントが入っていたのだ。
ボーカルで完全にかき消されていたので気づくわけもない。


オリジナルカラオケ〈4〉ベスト6

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※ジャケットはシングル「北ウイング」から

発売:1984年
品番:LKD-1005

価格:1,000円
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Side 1
北ウイング(シングル曲、CD「Singles Box 1982-1991」収録)
涙の形のイヤリング(北ウイング B面、CD「Singles Box 1982-1991」収録)
禁区(シングル曲、CD「Singles Box 1982-1991」収録)

Side 2
1/2の神話(シングル曲、CD「Singles Box 1982-1991」収録)
セカンド・ラブ(シングル曲、CD「Singles Box 1982-1991」収録)
少女A(シングル曲、CD「Singles Box 1982-1991」収録)

またかぶりまくりで、北ウイングが発売されたのでそのカラオケを出したような形だ。
残りはそれ以前のシングル曲をとりあえず入れましたという感じ。
これだとニューシングル出す度にカラオケを出していたのかということになるが。
このカセットの音源に真新しいものはない。


オリジナルカラオケ〈5〉ベスト6

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※ジャケットはシングル「サザン・ウインド」から

発売:1984年

品番:LKD-1006
価格:1,000円
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Side 1
サザン・ウインド(シングル曲、CD「Singles Box 1982-1991」収録)
涙の形のイヤリング(北ウイング B面、CD「Singles Box 1982-1991」収録)
100°Cバカンス(アルバム「ANNIVERSARY」から、他音源無し)

Side 2
北ウイング(シングル曲、CD「Singles Box 1982-1991」収録)
夢遥か(サザン・ウインド B面、CD「Singles Box 1982-1991」収録)
Easy(アルバム「ANNIVERSARY」から、他音源無し)


これはシングル「サザン・ウインド」とアルバム「ANNIVERSARY」が発売されたタイミングでのカラオケだ。
シングルのかぶりかたは相変わらずえげつない。
なぜアルバム曲を入れてくれないのか。
着目すべきは100°CバカンスとEasy。
ANNIVERSARYは大好きなアルバムだったのでこれは嬉しかった。
どうせなら大好きな「アサイラム」も欲しかった。
100°Cバカンスはボーカルで聴こえなかった部分のバイオリンの美しさとコーラスを単体で聴けるのが面白い。
コーラスはサビだけでなくAメロでもでてくるしサビはかなり被ってくるのでコーラスの重要性も確認できる。
Easyはバックの演奏が単調であるが、こんなところで使っていたのかという気づかなかったコーラスの部分があった。


オリジナルカラオケ〈6〉ベスト6

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※ジャケットはシングル「ミ・アモーレ」から

発売:1985年

品番:LKD-1009
価格:1,000円
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Side 1
ミ・アモーレ(シングル曲、CD「Singles Box 1982-1991」収録)
飾りじゃないのよ涙(シングル曲、CD「Singles Box 1982-1991」収録)
十戒(1984)(シングル曲、CD「Singles Box 1982-1991」収録)

Side 2
ロンリー・ジャーニー(ミ・アモーレ B面、CD「Singles Box 1982-1991」収録)
リ・フ・レ・イ・ン(北ウイング B面、CD「Singles Box 1982-1991」収録)
BLUE BAY STORY
ミニアルバム「SILENT LOVE」から、他音源無し)

これは1985年のミ・アモーレ周辺の曲で前年のクリスマス企画ミニアルバム「SILENT LOVE」から1曲ピックアップしている。
このカラオケの目玉はなんといってもBLUE BAY STORYに限る。
これを見つけた時は自分の目を疑った。
まさかの名盤ミニアルバムのカラオケが存在したとは。
BLUE BAY STORYはアルバムの1曲目を飾るロックチューン。
ドラムとギターがかっこいい。
コーラスが楽器の一部になっているということを認識できるカラオケだ。


オリジナルカラオケ〈7〉ベスト6

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※ジャケットはシングル「SAND BEIGE-砂漠へー」から

発売:1985年

品番:LKD-1011
価格:1,000円
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Side 1
SAND BEIGE-砂漠へー(シングル曲、CD「Singles Box 1982-1991」収録)
ロマンティックな夜だわ(アルバム「BITTER AND SWEET」から、他音源無し)
SO LONG(アルバム「BITTER AND SWEET」から、他音源無し)

Side 2
椿姫 ジュリアーナはSAND BEIGEのB面でCD「Singles Box 1982-1991」に収録
★ドラマティック・エアポートはアルバム「POSSIBILITY」収録曲で他音源は存在しない
ミ・アモーレはシングル曲でCD「Singles Box 1982-1991」に収録


これは1985年に代表されるシングル及びアルバムからピックアップされている。
アルバムからはロマンティックな夜だわ、SO LONG、ドラマティック・エアポートの3曲と大収穫。
ロマンティックな夜だわはわりとシンプルなのか真新しい発見はなかったがBメロのシンセの細かい音が面白い。
SO LONGはバラードだが、意識していなかった美しいコーラスがはいっていたのは感動。
同アルバムであれば個人的には月夜のヴィーナスが入っていればうれしかったが。
ドラマティックエアポートはファンなら知ってる北ウイングの続編曲。
北ウイングしか知らない者にとっては、わずか9か月で続編が出ていたことに驚くだろう。
当然のことながら北ウイングアレンジだなということがカラオケでよくわかる。


オリジナルカラオケ〈8〉ベスト6
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※ジャケットはシングル「SOLITUDE」から横にレイアウト

発売:1985年
品番:LKD-1012
価格:1,000円
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Side 1
SOLITUDE(シングル曲、CD「Singles Box 1982-1991」収録)
AGAIN(SOLITUDE B面、CD「Singles Box 1982-1991」収録)
BABYLON(アルバム「BITTER AND SWEET」から、他音源無し)

Side 2
アレグロ・ビヴァーチェ(アルバム「D404ME」から、他音源無し)
ノクターン
(アルバム「D404ME」から、他音源無し)
SAND BEIGE-砂漠へー(シングル曲、CDSingles Box 1982-1991」収録)

1985年に発売された2枚のアルバムのうち後発の「D404ME」を主にスポットを当てたカラオケだ。
このカセットではBABYLON、アレグロ・ビヴァーチェ、ノクターンがお宝。
BABYLONは12インチシングルにもなった人気曲だ。
原曲はボーカルが厚く聴こえたのだが意外にコーラスは少ないという印象だ。
(コーラスはサビのみ)
コーラスっぽいシンセの音が面白い。
アレグロ・ビヴァーチェは奥でかすかるに聴こえるピアノがなかなかよい。
ノクターンはメタル調で激しい曲だが聴こえなかったBメロのベースがかっこよかった。


オリジナルカラオケ〈9〉ベスト6
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※ジャケットはシングル「DESIRE」から

発売:1986年

品番:LKD-1013
価格:1,000円
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Side 1
DESIRE(シングル曲、CD「Singles Box 1982-1991」収録)
ありふれた風景(ミニアルバム「BEST TO THANKS」から、他音源無し)
SOLITUDEはシングル曲でCD「Singles Box 1982-1991」に収録

Side 2
LA BOHEME(DESIRE B面、CD「Singles Box 1982-1991」収録)
モナリザ
アルバム「D404ME」から、他音源無し)
予感(アルバム「BITTER AND SWEET」から他音源無し)

1986年近辺のシングル、アルバムからチョイスされている。
ここではありふれた風景、モナリザ、予感がお宝。
なかなか渋めのチョイスだ。
ありふれた風景はまさかの「BEST TO THANKS」から。
シンプルな演奏で歌を合わせるのが難しそうだ。
同アルバムのDon't Tell Me This is Loveが人気が高いが、何せ英語曲なのでさすがにカラオケにはならないか。
モナリザは意外に演奏が単調だがやはりコーラスがいい。
予感はスローバラードだけにシンプルそのもの。
マスキングされた部分も少ないのでカラオケで聴いて面白いところはほとんどない。


これら全てガイド・メロディーもない純粋なオフ・ボーカルトラックだ。
ジャケットは基本的にA-1のシングルジャケットを使っているようだ。

いままで自身のライブラリのアナログ→デジタル化には興味なかったが、さすがにデジタル化を考えたくなってしまった。

カセットでしか存在しないレア音源こそ、デジタル化して保存すべきだろう。

(文字制限オーバーのため)その2へ続く
中森明菜 ミュージックテープ(オリジナルカラオケ その2)