さくの家電のーと

オーディオ、音楽、家電全般に関する備忘録ブログ

◆音楽ソフト◆

きまぐれ オレンジ☆ロード サウンドトラック(復刻盤LP)

2021年4月24日、「きまぐれ オレンジ☆ロード」のアニメサントラの復刻盤LP(初回生産限定盤)が発売された。

57f788de-330c-4e90-b56e-1587cc442ff6


つい最近まで遠い思い出の中にあったオレには大切なアニメだ。

サントラ復刻の報を聞き、買わずにはいられなかったのだ。


「きまぐれ オレンジ☆ロード」は1980年代に絶大な人気を誇った週間少年ジャンプに連載された漫画だ。

その後、アニメ化されたがその劇中歌のサントラは複数発売されており、今回は当時のLP発売分のみの復刻となる。

オレは当時、週間少年ジャンプで「きまぐれ オレンジ☆ロード」の存在を知り、毎週楽しみに読んでいた。
同時期には「北斗の拳」も連載されており、この二つが一番の楽しみだった。

やがて単行本が発売されるとそれもすべて揃えた。
(北斗の拳は友人から借りた)

そして待望のアニメ化。
(1987年4月6日~1988年3月7日)

アニメが放送されるやいなや、その人気はそれまで原作を知らなかった人々にまで及んだ。

オレがアニメ化に狂喜したのは言うまでもない。

アニメ版のストーリーは簡単にいうと、超能力を持つ主人公の春日恭介が転校先で出会った鮎川まどか、檜山ひかると織りなす三角関係どたばたラブコメディだ。
原作とは異なる設定もあるが基本は原作に準じている。
後の劇場版でアニメシリーズのその後を描き、完結を迎えるがシリアス路線に変更する。
(三角関係に決着をつけるんだからコメディで描けないのは当然だが)
MDKA2060
左から鮎川まどか、春日恭介、檜山ひかる

そもそもの話、ラブコメが当時のジャンプに連載されるのも異例と思うが、そのおかげで当時の男子の間では大きな話題となったのだ。

これの何がそんなによかったのか?

当時を知る者なら誰もが口をそろえて言うだろうことは「鮎川まどかに恋をした」だろう。

鮎川まどか2
鮎川まどか(声:鶴ひろみ)

それほどまでに鮎川は魅力的なキャラクターだったのだ。

2次元の世界の女性に恋するなんてことはこれが最初で最後だった。
おそらくそんな男子は当時ごろごろいたんだろう。

絵心の全くないオレが死ぬほど練習して、鮎川とひかるの絵だけは書けるようになったのは今も忘れない。

とにかくオレの青春のアニメと言えば「きまぐれ オレンジ☆ロード」なのだ。
(「めぞん一刻」もよかったが主人公が浪人生なので年代的な共感という意味ではオレンジロードが上だった)

さて、サントラが複数リリースされたというからには劇中歌が多かったということになる。

アニメ「きまぐれ オレンジ☆ロード」は音楽と切っても切れない関係なのだ。

アニメ化によりそれまで白黒だった世界は鮮やかに彩られ、音楽によりその魅力は倍増された。

このアニメ化に際し特筆すべき点はアニメで使われた楽曲はオープニング(以後OP)とエンディング(以後ED)曲に普通のアーティストを起用したということだろう。

それがどんな感じだったのか振り返ってみよう。。

このアニメ自体にはシーズンはなく、第1~48話は連続して放送されている。
よって以下1期~3期と分けているのはあくまでOPとED曲が変更された節目という意味だ。

第1期(第1話~第19話)

オープニングテーマ
「NIGHT OF SUMMERSIDE」 池田政典
驚異のカット数245の伝説的オープニング。
オレにとってオレンジロードといえばこれが一番のオープニングだ。

エンディングテーマ
「夏のミラージュ」 和田加奈子
間奏のカット割りを除けばわずか6カットで1期オープニングの逆を行く。
エンディングはすべてまどかにスポットを当てたもの。
コメディ要素の強いアニメだがそれだけでヒットしたのではないことはこのエンディングが物語る。

第2期(第20話~第36話)

オープニングテーマ
「オレンジ・ミステリー」 長島秀幸
登場人物がバンド演奏するモノクロのアニメーション。
ファンの間では人気の高いオープニング。

エンディングテーマ
「悲しいハートは燃えている」 和田加奈子
サンドアートをアニメーションで表現する発想は天才的。
全アニメを通しても歴史に残る傑作中の傑作エンディングではないだろうか。


第3期(第37話~第48話)

オープニングテーマ
「鏡の中のアクトレス」 中原めいこ
各シーンをシームレスに繋げた画期的アニメーション。
中原めいこのアルバムを聴きたいと思わせた1曲だ。

エンディングテーマ
「ダンス・イン・ザ・メモリーズ」 中原めいこ
1カットでパズルの様に最後に鮎川が完成するアニメーション。
絵は単調であるが中原めいこの名曲中の名曲がそれを引き立てる。


楽曲の良さもさることながら、アニメーションも今見ればアイデアに溢れ画期的だと思う。
リアルタイムで見ていた時は気にも止めなかったがこれはセンスの塊だ。
オレンジロードの世界を凝縮したような楽し気なオープニング、オレンジロードの切ない部分を表現したエンディングは物語を一層盛り上げた。

それまでのアニメと言えばアニメ用の歌が作られ、アニソン歌手が歌うというものがほぼ慣例だった。

だからアニメという枠を超えて、アーティストの曲をアニメ主題歌に使うことで未知のアーティストを知り、好きなアーティストがアニメ主題歌を歌っているということでアニメを知るという図式がこの頃のアニメでできたのだ。
(そういう意味では「めぞん一刻」「シティハンター」なども同様だ)

現代アニメではそんなことも大して珍しいことではないが、その礎となった原点アニメがあったということだ。

というわけでサントラの話。

オレは当時アニメを見て、そのオープニング・エンディング曲に使われたアーティストを知り、アーティストそのものの曲を聴くようになった。
ただし、いくらアニメが好きでもサントラを買おうとまでは全く思いもせず、その存在すら知らなかった。
そこにはやはりオーディオマニアとしてのプライドのような、こだわりがあったような気がする。
今で言う「アニオタ」じゃないと自負していたので超えてはならない一線のようなものがあったのだろう。

ただ日本で現代生きるほぼ全世代の人々は少なからず子供時代に親しんだアニメはあると思う。
しかし、漫画・アニメは子供が見るものであり、大の大人はやがてそれらから離れていくものだ。
いつまでもそれにしがみつくのは大人になれないオタクしかいない。
そんな風潮は1990年代まではあったと思う。
(そもそもオタクという言葉は90年代のアニメオタクがルーツなのでは?)

また、サントラでなくてもアーティストのアルバムを聴けば同じこと。
そもそもサントラには余計な曲も多い。
薬師丸ひろ子の映画サントラでそんな経験をしていたものだから、アニメでなくてもサントラには抵抗感があった。

いま思うと、いくらアーティストの歌とはいえ、アニソンであることをあまり大っぴらにしたくない自分がいたのは間違いない。
アニオタとオレは違う。
アニオタを下に見て、ほぼ差別的にアニオタを軽蔑すらしていた時期もある。

しかし近年、日本のアニメ・漫画が世界から注目されるようになるとサブカルチャーとしての地位を不動のものとした。
結局のところ日本人の根底にはアニメ文化が不可欠だったことに気づかされた感じだ。
それを否定することは自分の子供時代を否定するも同じ。

素直に認めて、頭の固い昔の考えを捨てるとすごく楽になった。
いまでは大人だからアニメを見るのはおかしいという偏見はなく、むしろ進んでアニメを見るまでになった。

そして思うことは、やはり日本のサブカルチャーになるまで支えてくれたアニオタたちがいたからこそ現在のアニメの地位が確立されたのだと感謝している。

そんな思いがあったわけで、長い時を経て当時は聴いたこともないサントラを今手にしたのは感慨深い。
(正確には90年代にオレンジロードのCDを1枚だけDATにダビングしたものを今も持っている)

今回復刻されたのは当時LPレコードとして発売されたもののみだ。
では復刻盤全7タイトルをオリジナルの発売日順に見てみよう。

IMG_0123


きまぐれ オレンジ☆ロード Sound Color 1
IMG_0125

発売日:2021年4月24日(オリジナル:1987年6月21日)
価格:4,180円(税込)(オリジナル2,800円)
品番:UPJY-9157(オリジナル:LB28-5049)
仕様:ターコイズ・ヴィニール、、高田明美描き下ろしB2イラストポスター
帯コピー:レモンよりちょっぴり甘い、オレンジ味を知りたい人に送るシティ派サウンド・トラック!

IMG_0126

UPJY-9157_2
※封入物の写真撮影は面倒なため全てユニバーサルミュージックストアHPから抜粋

Side A
01. NIGHT OF SUMMER SIDE(池田政典)
02. 赤い麦わら帽子
03. E・S・P にも T・P・O
04. 青空をぶっとばせ!
05. まどかのテーマ ~ひとりぼっちのConcert
06. Walk Struttin'
07. 危険なトライアングル(池田政典)

Side B
01. 夏のミラージュ(和田加奈子)
02. 疑問符はナイショで
03. Aerobics on "RAP"
04. Rock 'n' Roll Diabolic
05. Exclamationの悪だくみ
06. ホンキートンクHip Hop to Us
07. 湾岸Dancing Way
08. ジェニーナ(和田加奈子)
※以降()は歌入りで歌手名を記載

アニメ放送開始からわずか2か月ちょっとで発売された最初のサントラ。
このサントラにはOP(A-1)とED(B-1)の1期分を収録。
各面歌入り(OP・ED)で始まり、間は全てインスト、歌入り(挿入歌)で終わるという構成。
インストはロック、ジャズ、フュージョン、テクノと多彩である。
基本的にアニメシリーズを見ていない人にとっては曲構成に脈絡を感じず、退屈かもしれない。
(見ていてもアルバムとしては微妙だがきまぐれファンとしては及第点だ)
通しでOPに始まりEDに終わると考えるなら、B-1とB-8を入れ替えれば構成としては美しかったかもしれない。

ただ、大して本編で尺が多く使われもしないシーンの音楽をこれだけ本格的に作るのには頭が下がる。
中でもA-6「Walk Struttin’」はフュージョンとして聴けばそれなりに聴けてしまう。
もっとも全てのインストのクオリティが高いので、当時のスタジオミュージシャンのテクニックを堪能するにはもってこいのアルバムだ。

サントラ共通仕様としては封入物はすべてオリジナルと同様に復刻。
ジャケット・帯・ピクチャーセンターラベルも極力オリジナルを再現している。
また、新たな仕様としてカラーレコードとなり、オリジナルの普通の黒レコードとの差別化がされている。
タイトルごとに色が違うため「きまぐれカラーレコード」と呼んでいるようだ。
オリジナルは所有していないがネットで調べる限り復刻盤でも遜色ない。

先に書いたように、収録曲はアニメを見ていれば知っている曲(ほとんど覚えていないが)であり、主題歌・挿入歌についても元アーティストのアルバム等で聴いているが、サントラ自体を聴くのは今回が初めてだ。
これについてオリジナルも揃えるかは悩んでいるが、やはり当時聴いていないものなのでこの復刻盤があればいいかなとは思っている。
これに限らず、個人的に復刻盤の立ち位置については非常に悩ましい問題だ。
オリジナルを持っていれば不要と割り切れればいいが、現代新品で懐かしいレコードが手に入る魅力は捨てがたい。
明菜の復刻LPの時は音が違うからという言い訳で全て揃えたが、毎度そんなことを言ってたら音源的にはかぶるものがどんどん増えていく。
どこかで線引きしていかなくてはと思うが、考えを整理するにはオレにはもう少し時間が必要なようだ。
こんなことで悩む日が来るとは当時は想像もしていなかった。


きまぐれ オレンジ☆ロード Sound Color 2
IMG_0127

発売日:2021年4月24日(オリジナル:1987年10月26日)
価格:4,180円(税込)(オリジナル2,800円)
品番:UPJY-9158(オリジナル:LB28-5056)
仕様:オレンジ・ヴィニール、高田明美描き下ろしB2サイズパステルタッチポスター、きまぐれピンナップ
帯コピー:夏の海に流れるポップスだけがシティミュージックじゃない、ホントの恋を知ってから聴きたいサウンド・トラック。

IMG_0128

UPJY-9158_2

Side A
01. オレンジ・ミステリー(長島秀幸)
02. 夜霧の忍び足
03. FUTARI-DE
04. サルビアの花のように(和田加奈子)
05. 瞬間サスペンス
06. まどかのテーマ ~in blue
07. Heavy and severe
08. Eye Catch!
09. ふり向いてマイ・ダーリン(藤代美奈子)

Side B
01. Again(藤代美奈子)
02. A boy meets a girl
03. ブレイキング ハート(坪倉唯子)
04. 君とIsland cafe
05. THE DRAMATIC SQUARE
06. BACK TO THE RED STRAW HAT TIME
07. 悲しいハートは燃えている(和田加奈子)

アニメ放送も中盤を迎えた頃に発売されたサントラ。
このサントラにはOP(A-1)とED(B-7)の2期分を収録。
挿入歌は4曲に増え、残りは全てインスト。
OP・EDに採用されなかったものの、このアニメを語る上で欠かせない藤代美奈子の挿入歌(A-9、B-1)は王道のアイドルソングとしても必聴だ。
(特に「Again」は最高)
また、B-3「ブレイキング ハート」はあのB.B.クィーンズのボーカルである。
オレも愛する国民的楽曲「おどるポンポコリン」の坪倉の本気の歌声をこんなところで聴けるとは。
こちらはアニメの2期OPで始まり2期EDで終わるというスマートな構成。
効果的に歌入りを挟んだ構成は飽きさせず、聴き終わったあとの充実感は名盤の証だろう。

この復刻シリーズのウリはやはりカラーレコードである。
ただ、カラーレコード自体は別に珍しいものではなく、当時からあったものだ。
最近だと聖子のBibleアナログ盤が記憶に新しいところ。

もともとレコードの素材はポリ塩化ビニール等のため、何もしなければ無色透明だ。
そこへカーボンブラックを混入して黒色にしているのが普通のよくあるレコード。
黒色にする理由は、ほこりや傷を認識しやすくするためだ。
逆にいえば、黒以外のカラーだとこれがほとんど目立たなくなる。
レコードにとってほこりや傷は再生時のノイズの原因となるため大敵だ。
カラーレコードは見た目にも綺麗で一見してほこりも目立たないのはいいが、メンテナンスを考えるとそこが落とし穴ということになる。
ほこりが見えなくてもノイズがあれば当然クリーニングは必要だ。
もっともクリーニングしても綺麗になったかもわからないのだが・・・
そういうわけで一気にカラーレコードが7枚も増えたのはちょっとやっかいであるが、カラーであることで昔は気分が上がったものだ。
(いまも上がっているが)


きまぐれ オレンジ☆ロード Singing Heart
IMG_0129

発売日:2021年4月24日(オリジナル:1987年12月25日)
価格:4,180円(税込)(オリジナル2,800円)
品番:UPJY-9159(オリジナル:LB28-5061)
仕様:イエロー・ヴィニール、高田明美描き下ろし大型A全ポスター
帯コピー:TVアニメの常識をはるかに超えた掟破りの洗練サウンドで迫るソング・スペシャル・アルバム!!

IMG_0130

UPJY-9159_2


Side A
01. 夏のミラージュ(和田加奈子)
02. オレンジ・ミステリー(長島秀幸)
03. ふリ向いてマイ・ダーリン(藤代美奈子)
04. ジェニーナ(和田加奈子)
05. NIGHT OF SUMMER SIDE(池田政典)
06. もうひとつのイエスタデイ(和田加奈子)

Side B
01. Again(藤代美奈子)
02. ブレイキングハート(坪倉唯子)
03. サルビアの花のように(和田加奈子)
04. 危險なトライアングル(池田政典)
05. 悲しいハートは燃えている(和田加奈子)
06. この胸にONE MORE TIME(長島秀幸)

まだアニメ放送中であったが、ここまでで使われた劇中歌のみをまとめたサントラ。
Sound Color 1,2の歌入り曲にA-6・B-6の2曲を追加した、全曲歌入りのアルバムだ。
アニメ放送途中のリリースということもあり、全てのOPとEDが収録されておらず、中途半端感は否めない。
1曲目に「夏のミラージュ」をもってくるところはいかに人気曲であったかがわかる。
ただし、曲の流れ自体はレコード時代の曲順セオリーを無視しているように感じるのはオレだけか。
歌入りばかりを集めているので全体の流れが起承転結またはストーリー仕立てであるのが理想とは思うがこの曲順には少々疑問が残る。
楽曲自体は捨て曲がないだけに曲順さえ見直せば気持ちよく聴けるのだが。
とはいえインストがないのでヘビロテ必至の1枚だ。


きまぐれ オレンジ☆ロード Sound Color 3
IMG_0131

発売日:2021年4月24日(オリジナル:1988年2月25日)
価格:4,180円(税込)(オリジナル2,800円)
品番:UPJY-9160(オリジナル:LB28-5067)
仕様:グリーン・ヴィニール、高田明美描き下ろしB2ポスター
帯コピー:こんな女の子たちが二人も目の前にいたら、恭介じゃなくてもこまっちゃう♡!!?ラブ・トライアングルの甘さと優しさ、そしてNAMIDAを感じたい、ポップスファン必聴のサウンドトラック第3弾。

IMG_0132

UPJY-9160_2

Side A
01. ダンス・イン・ザ・メモリーズ(中原めいこ)
02. 追想…赤い麦わら帽子の君へ
03. After Heartbreak
04. Fly Me To The Ski
05. 想い出の樹の下で
06. Night & Day(BLUEW)
07. Orange Vice
08. ナイトレンジャーになりきりたい

Side B
01. まどかのテーマ~in Lovers Room
02. 君とRomantic
03. My Little Girl
04. Next Go Come (3rd. Season)
05. 鏡の中のアクトレス(中原めいこ)
06. 愛は瞳の中に
07. Tell me that you love me
08. もうひとつのイエスタデイ(和田加奈子)
09. また明日!

アニメ放送も残り1か月となった頃、Sound Colorシリーズの構成を踏襲した最後のサントラ。
3期OP(B-5)とED(A-1)を含むアルバム。
ここまではアニメ放送期間内のリアルタイムでのサントラだ。
挿入歌+インストも含む構成はSound Colorシリーズの共通仕様だ。
OPとEDに同じアーティストは起用したのは3期が初。
両曲とも中原めいこ自身の代表曲のひとつだ。
中原めいこは「君たちキウイ・パパイア・マンゴーだね」で一躍誰もが知る存在となった。
オレも歌番組で彼女を知ってはいたものの、アルバム「鏡の中のアクトレス」にこのオレンジロードに使用された曲が収録されるまで本格的に聴いてはいなかった。
オレンジロードのサントラで聴けるにも関わらず、それをせずに中原めいこのアルバムの方で聴くことを選んだのは当時のオレのポリシーだ。
(中原めいこのアルバム「鏡の中のアクトレス」はこのサントラの8日後に発売された)
もっともサントラの発売自体は知らなかったが知っていたとしてもサントラで聴くことはしなかっただろう。
やはりどこかアニメを小ばかにしてた感がある。
いまでこそ今回の復刻盤を買ったが、インストが大半を占めるこのようなアルバムは頻繁に聴くことはまずないだろう。
ただ、今だからこそ聴こうという気になったのも、音楽に対する姿勢が柔軟になったからなのかなとも思う今日この頃だ。


きまぐれ オレンジ☆ロード Kimagure Orange☆Station
IMG_0133

発売日:2021年4月24日(オリジナル:1988年4月6日)
価格:4,180円(税込)(オリジナル2,800円)
品番:UPJY-9161(オリジナル:LB28-5069)
仕様:サーモン・ヴィニール、後藤真砂子(原画)B2ポスター
帯コピー:恭介、まどかがアバカブからお送りする特別放送!ひかる、くるみ、まなみ、一弥も参加して、テレビシリーズゆかりの地を訪ねて実況中継。忘れられないあの曲を10曲、楽しいおしゃべりにのせてお届けします。
IMG_0134

UPJY-9161_2

Side A
01. オレンジ・ミステリー(長島秀幸、曲中もMC有り)
   MC
02. 悲しいハートは燃えている(和田加奈子)
   MC
03. ふり向いてマイ・ダーリン(藤代美奈子、曲中もMC有り)
04. ブレーキングハート(坪倉唯子、曲中もMC有り)
   MC
05. 鏡の中のアクトレス(中原めいこ)
   MC

Side B
   MC
01. 危険なトライアングル(池田政典)
   MC
02. ダンス・イン・ザ・メモリーズ(中原めいこ)
   MC
03. 夏のミラージュ(和田加奈子)
   MC
04. サルビアの花のように(和田加奈子)
   MC
05. NIGHT OF SUMMER SIDE(池田政典、曲中もMC有り)

アニメ放送が終了し、ちょうどその1年前のアニメ放送開始日と同日に発売されたサントラ。
全期(1~3期)のOPとEDにおそらく好評であった挿入歌をプラスした決定版。
これだけ聴いていればアニメのオレンジロードを語れるヘビロテ必至のアニメ集大成のサントラだ。
アニメのサントラというより、通常のVarious Artistのアルバム感覚で聴けるのがうれしい。

と、曲目だけを見ればそう思うが、キャッチコピーにあるように実は全ての曲に登場人物のおしゃべりが入っている。
曲中・曲間のMCは曲とともにアニメを振り返るまさにFMのDJ仕立てだ。
曲だけでよかったのにとも思うが、実際のところそのおしゃべりが楽しく、逆にアニメを見ている途中で曲がかかる感覚のようで実に気持ちいい。
おしゃべりが結果的に曲を引き立てているとも言える。

ここまでのサントラは一見して適当に発売されていたように見えるが、実はアニメ放送に準じたサントラであり、ストーリーが成立しているように思う。
当時リアルタイムで聴いていたならそれを実感できただろう。
アニメだけを重視するなら、ここで一旦ひと区切りという感じになる。
よってここまでの5枚を持っていればアニメ版サントラはコンプリートだ。
アニメ版集大成として必聴必携盤だろう。


きまぐれ オレンジ☆ロード <オリジナル ドラマ篇>カセットテープの伝言
IMG_0135

発売日:2021年4月24日(オリジナル:1988年4月29日)
価格:4,180円(税込)(オリジナル2,800円)
品番:UPJY-9162(オリジナル:LB28-5072)
仕様:ブルー・ヴィニール、高田明美描き下ろし特大変型ポスター
帯コピー:鮎川がロストバージン?恭介は狂った様にまどかを捜し求める。そしてついに恭介は、まどかに自分の本心を打ち明ける・・・・・・。

IMG_0136

UPJY-9162_2

Side A
01. BATSIDE DANCER(古谷徹)
02. こがね色の坂道(原えりこ)
03.オリジナル・ドラマ>カセット・テープの伝言
(挿入歌:鏡の中のアクトレス/ジェニーナ)

Side B
01. オリジナル・ドラマ>カセット・テープの伝言(続き)
02. Whispering Misty Night(鶴ひろみ)
03. 優しいジェラシー(富沢美智恵、本多知恵子)

アニメ放送終了の興奮冷めやらぬ、その約2か月後に発売されたオリジナルサウンドドラマ。
これ用に作られた主題歌も収められ、サウンドのみではあるがひとつの追加エピソードという位置づけの異色なサントラ。
オレンジロードファンとしてはもっと見たいと残念に思っていたところの発売なので、サウンドのみであってもありがたいアルバムだっただろう。
のちにラジオドラマ化シリーズがオンエアされたことを考えれば、こんな形があってもいいのだなと思う。
これ以前のアルバムはアニメさえ見ていれば覚えのある曲が多かったが、ここからはオレには未知の領域だ。
アニメ同様OP曲があり、本編ストーリー、ED曲で締めくくる構成。
歌は全て声優による歌唱。
春日恭介役の古谷徹はじめ、全員がさすがに歌がうまい。
声優が歌うことは近年では珍しいことではないが、当時としては先駆的だったのだろう。

ここで描かれるストーリーのあらすじ。
恭介、まどか、ひかるの微妙な三角関係は相変わらず。
夜、主人公恭介の妹まなみとくるみ、飼い猫のジンゴロの入浴シーンで始まる。
長風呂の妹たちにイライラしながら恭介は部屋でラジオを聴いている。
たまたまラジオで紹介された視聴者からのはがきは恋の悩み。
しかし、これはどうやら鮎川まどかの投稿ではないか?
まどかの本音(不満?)を知り、恭介はとまどう。
翌日、まどかは学校を休んだ。
まどかは一体どこに消えたのか?
帰宅した恭介は妹たちがまどかから受け取ったというカセットテープを渡される。
カセットテープでまどかが語った伝言とは・・・

と、アニメでもエピソードのひとつとして描かれそうなストーリー。
しかしながらいつもながらセンスのいいまとめ方。
すっきりしないもやもやを残しながらひっぱるのがこのアニメのいいところ?だ。
「世界の中心で愛をさけぶ」といい、カセットテープを恋のツールとして使った時代もあったのだと、使ってなくてもそれに近いことをやっていたと懐かしく思う人は結構いるだろう。
まどか(鶴ひろみ)が歌う「Whispering Misty Night」は特によかった。
この歌だけならいつでも聴きたいところ。
結果聴きごたえあるアルバムとは思うが、当然原作を把握していなければ楽しめない(情景が思い描けない)のは言うまでもない。


きまぐれ オレンジ☆ロード あの日にかえりたい
IMG_0137

発売日:2021年4月24日(オリジナル:1988年10月5日)
価格:4,180円(税込)(オリジナル2,800円)
品番:UPJY-9163(オリジナル:LB28-5084)
仕様:ピンク・ヴィニール、高田明美描き下ろしB2ポスター
帯コピー:お待たせしました!まどか、恭介、ひかる、のトライアングル・ラヴ。劇場の大スクリーンでたっぷり堪能したかな?”きまぐれ”は音楽から耳を離せない!要チェックです。

IMG_0138

UPJY-9163_2

Side A
01. あの空を抱きしめて(和田加奈子)
02. ラジオのように
03. Say Good-bye
04. Return to three
05. I don't know why, why you don't!?
06. 哀しい賭け
07. いつも ABCBで
08. オジャマ虫's グラフィティ

Side B
01. 不確かな I Love You(和田加奈子)
02. Shop Of "Dry"
03. Beat emotion
04. Teardrops
05. Call my name
06. Be your only one
07. 鳥のように(和田加奈子)

アニメ放送終了と同年に公開された劇場版のサントラ。
劇中の主題歌と挿入歌、インストで構成される。
(歌入りは和田加奈子の歌唱のみ)
劇場版1本のみのサントラなのでインストが多く、構成としてはやや退屈だ。

アニメ版では中学生活が描かれたが、「あの日にかえりたい」では高校生となったその後が描かれる。
しかし、このストーリーは原作者が描いたものでなく、原作の松本氏の逆鱗に触れたようである。
(そもそも原作者の許可なくそんなことがよくできたものだ)
とはいえ、声優や和田加奈子の歌は継承しており、見る側としてはそんな大人の事情を考えなければ違和感なくそれなりに楽しめる人もいるだろう。
アニメ版のサントラに比べればややクオリティは落ちると言わざるを得ないが、劇場版好きにとっては貴重な音源。
「きまぐれオレンジ☆ロード」としても最後のアナログ音源という意味では意義あるものだ。
なにはともあれ、これで全ての当時のLPレコードがコンプリートできるのだからありがたい話だ。


というわけで今回の再発はうれしいがいいことばかりではない。
全て聴いてみて気づいたのは、なぜかレコードの反りが大きいものが多かった。
カラーレコードが原因かとも思ったが、やはり製造工場や製造工程に問題があるのではと思う。
ここ数年は新譜でレコードを買う機会が増えたがここまで酷いものはなかった。
当時を思い返すに、ここまで揃いも揃って同じ状態のレコードに当たるとは思いもしなかった。
レコードの反りは音質にも影響を及ぼしかねないので品質管理もしっかりしてもらいたいものだ。

さて、懐かしさのあまり購入してしまった「きまぐれ オレンジ☆ロード」のサントラ。
これを機に改めてこのアニメを調べていくうちに時を超えて再びはまってしまった。
サントラは映像見てから聴いてなんぼの世界だ。
幸い今年(2021年)秋にアニメのブルーレイが発売されるので予約したのは言うまでもない。
それを見てから聴くサントラはさらに味わい深いものとなるだろう。

実はアニメのサントラレコードを購入したのは幼少期以来だ。

果たしてヘビロテで聴くのかどうかは微妙だが一部はそうなるだろう。
どちらかというと今回は音楽を聴くことより、ジャケットをはじめとするアートワークに惹かれた部分が大きい。

そう考えると、ダウンロードや配信ではそんな動機で購入することは最初からないわけだ。

物理メディアのメリットは目でも音楽を鑑賞することができるということ。

「きまぐれ オレンジ☆ロード」のアートワークはテレビ版アニメとは手法が異なる、ひとつの絵画としての魅力がある。
とても美しいイラストだ。
漫画の単行本を揃えているような感覚に近いかもしれない。

それがLPサイズであることの意義は大変大きい。

物理メディアの魅力の本質を改めて認識できたのは収穫である。

1980年代は歌だけでなく、アニメ・ドラマも名作揃いということを忘れてはならない。

当時はオープニングとエンディングの重要性をよく理解したものが多かった。

良質なアニメ・ドラマに良質な楽曲が合わされば最強なのは言うまでもない。

それが80年代を愛してやまない理由のひとつでもある。


最後に・・・

原作者のまつもと泉さん。

鮎川まどか役 声優の鶴ひろみさん。

心よりご冥福をお祈りいたします。

「きまぐれ オレンジ☆ロード」は忘れられない大切な青春の思い出です。

21831418511050_748

松田聖子 ミュージックテープ(オリジナルアルバム)

聖子のオリジナルアルバムでミュージックテープ(カセット)として日本で公式発売されたのはレコード同様CBSソニー在籍時代のもののみ。

事実上、聖子のオリジナルアルバムで最後のミュージックテープとなったのは1996年5月発売の「WAS IT THE FUTURE」だがこれは海外のみの発売だった。
従って、国内ではそのひとつ前のアルバム「It's Style'95」(通算25枚目)が最後のミュージックテープとなった。
(ただし、アジア地域では独自にカセットでの発売が継続されていた)

そんな聖子のミュージックテープ。
どんな特徴があったのか、当時人気を二分した明菜のカセットと比較してみる。

まず、聖子の方がタイトル数が圧倒的に多い。
明菜が16タイトルに対し、聖子は26タイトル。
もちろんデビューが聖子の方が2年早く、休止期間にも違いがあることを考えれば差が付くのは当然。
しかし、現代の常識で考えればアルバムは1年に1枚出せば良い方で、10枚なら少なく見積もっても10年分にあたる。
現代の常識で考えればせいぜい3,4枚の差となるはずが実際はそうではないということだ。
つまり現代よりも約3倍ほどのペースでアルバムをリリースしていたということになる。
実際、両者とも一年に2,3枚のペースでアルバムをリリースしていた時期があったからこそ、これほどまでに差がついてしまったのだ。
もちろん明菜の16タイトルも活動期間を考えれば聖子同様異常な数字だ。
さらにベストやコンセプトアルバムをカウントすればいっそう現代の常識では考えられない枚数となることも付け加えておこう。

次に聖子のミュージックテープにはカセットならではの特典がほとんどないことが挙げられる。
カセットテープであるということはそれだけで音質に不利である。
だからこそレコードと同価格で販売されたカセットは価値を見出しにくいのだ。
明菜のミュージックテープにはレコードに付属したピンナップやカレンダーをカセットサイズにしてつけてきたし、カセット独自のお得な部分もあり、カセットを選択しても大きな負い目はそれほどなかっただろう。
なので明菜のカセットと比べれば聖子のは質素そのものだ。
(もともと聖子のアルバムはおまけが少ないというのもあるが)
聖子の場合、1タイトルだけカセットだけの限定盤が存在したが、カセットでお得と思わせたのはこれだけだった。
比べてお得感があるのは断然明菜のカセットということになる。

次に注目したいのがミュージックテープのリリース年による形状の変化だ。

レコードは時代が変わっても変化は感じられないが、カセットの場合パッケージングが大きく変化していくので面白い。
よってミュージックテープではその歴史も感じ取れるのだ。

そういうわけでミュージックテープにはならではの驚きや発見があるのも魅力のひとつだ。

それでは詳しく見ていこう。


松田聖子 オリジナルアルバム分のミュージックテープ全巻
IMG_0118

個人的には、公式発売されたオリジナルアルバムは上の全26タイトルだと定義している。
うち、一番右端の「WAS IT THE FUTURE」は国内発売はされなかったものの、もともと海外向けアルバムであり、海外では公式発売されたためここに含めている。

よって国内発売分のみと考えるなら下の25タイトルが全てとなる。
IMG_0117

さらに細かく言うなら「North Wind」の初回限定盤と海外盤オリジナル「Seiko」を含めた全28タイトルでコンプリートとなる。
IMG_0121


ところで、並べてみてまず気になったのは背タイトル部分。
IMG_0059

「Windy Shadow」以前までの初期パッケージ9タイトルに限るが、アルバムタイトル以上に目を引くのがシングルタイトルだ。
アルバムタイトルとほぼ同サイズフォントでアルバムに収録されているシングル曲名が記載されている。
これはレコードにはないミュージックテープ独特の慣習によるものだ。

ミュージックテープの収集を始めた頃、これに違和感を持つと同時にすぐにピンときた。
そういえばそうだった。
当時レコード屋で見かけたミュージックテープの棚はこういう感じのが多かったのだ。

カセットで買うということはレコードプレーヤーを持っていないからだろう。
しかし、シングルヒット曲をカセットで聴きたいと思っても当時はまだポップス分野ではカセットでシングルを発売するという感覚はなかったのだ。
(あくまでそういう時期もあったという意味、後発ではカセットでシングルも発売された)
つまり、当時シングルといえばシングルレコードの一択だった時期があった。
なのでカセットでシングルヒット曲を聴きたいとなるとアルバムが出るまで待たなければならなかったのだ。
だからアルバムに収録されているシングル曲を前面に出し、これを買えば聴けますよとわかりやすく明示していたのだ。
ミュージックテープはこの背部分を表にして店の棚に陳列されていたので、膨大なカセットの中からでもお目当てのシングル曲を探しやすかっただろう。

ではなぜこんなご丁寧なことをする必要があったのかということになる。
これは当時を知らなければ理解できないだろう。
まずバックグラウンドにあるのは当時は老若男女問わず音楽ジャンル問わず音楽が親しまれていたということがある。
若者は普段聴かない演歌のヒット曲を知っており、年配者は若者のポップスを知っている。
例えば小学生の誰もが流行りの演歌を歌えるほど知ってるし、おじいちゃんおばあちゃんがアイドルの曲をいくつも知っているという状況だ。
今では到底考えられないだろう。
つまり、アイドルのレコードやカセットと言えど、購買層が広かったということが一番の理由だと思っている。
例えばカセットの購入者はレコードプレーヤーを持たない子供や高齢者が多かったと仮定すれば合点がいくのだ。
もっといえば中学時代のクラスの女子はラジカセオンリーという子が当時はまだ多かった。
単にヒット曲を聴きたいだけであればアルバムタイトルだけを書かれていてもどれを買っていいかわからない。
おじいちゃんが孫に「夏の扉」が入ったカセットを買ってきてと頼まれたら「夏の扉」と書かれた「シルエット」を簡単に見つけることができるだろう。
これはそもそも当時の演歌のカラオケテープ等では当たり前にやっていたことだ。
そういう意味で初期のミュージックテープアルバムはシングルの代わりも担っていたということだ。
この慣習は聖子のアルバムだけでなく多くのアーティストのカセットでも見ることができた。

次にカセットの形状の変化を見ていきたい。

【初期または終末期】
IMG_0061

最もシンプルでコストがかからなそうな形状。

しかし、長期保管には向かない一番ダメなタイプでもある。
見てわかる通り、カセットケースの外に露出した部分(レコードでいう背表紙とジャケット裏部分)が問題となる。
IMG_0060

カセットのインデックスだけでレコードと同じジャケットデザインを再現するにはこうするしかないという苦肉の策だ。
この部分が普段の取り扱いや経年劣化でボロボロになっていくのは当然だ。
しかも紙が薄っぺらく強度がないのでさらにたちが悪い。
中古ではこの部分がボロボロだったり、切り取られていたりと程度の良いものが少ないのがこの仕様の最大の欠点である。
綺麗に保つにはもう自分でカバーをかけるか極力触らないという方法しかない。

これは初期だけに限らず、ミュージックテープの終末期になると再びこのタイプを目にすることになる。
終末期に再びみかけたのは売れないものにお金はかけられないコスト的な理由からだろう。
聖子のミュージックテープでは初期ものに多く見られた。

【中期】
IMG_0063

初期の裏ジャケットぼろぼろ問題を解決した決定版。
これは聖子のオリジナルアルバムではなぜか存在しない。
厚紙製のスリーブケースにカセットケースを収納するタイプだ。
このスリーブケースにジャケットの裏表を印刷することでレコードと同等のジャケットデザインが可能となった。
当然ジャケット写真はLPに比べずいぶん小さくなるが初期仕様と比べれば大きな進歩だ。
IMG_0062

しかし、スリーブケースもLPジャケットほどの耐久性はないので、汚れや破れの問題はそのままこのスリーブケースが引き受けることになる。
そのおかげで中のカセットケースは保護されるのは利点である。
ミュージックテープといえばまずこれ、という佇まいで親しまれた形状だ。

聖子のオリジナルアルバムでこれを採用したものはないが、初期のベスト盤やサントラでこの形状を採用しているものがある。

【後期】
IMG_0064

これぞまさにミュージックテープの最強進化形だ。
これは当時Gカセットと呼ばれソニー系レコード会社で多く見られた。
初めて見た時は画期的だと思った。
ジャケットとケースが一体型でまさにCDケースのカセット版といったところ。
IMG_0066

ジャケットはさらにビニールカバーで覆われ、ぼろぼろ対策も万全。

IMG_0065

カセットはワンアクションで取り出し可。

IMG_0068

歌詞カードは収納場所が確保され、この樹脂製ケースは非常に割れにくい。

IMG_0067


あえて欠点を挙げるなら、カセット側面が露出しており、ここだけは汚れる。
カセットへのほこりの混入も避けられないのは言うまでもない。

カセット全般の残念な部分のひとつにプラケースが割れる、または汚れて曇るというのがある。

(これはCDのプラケースにもいえることだが)
そのケースがなくなったというだけでなんとストレスが減ることか。
ただし、これは一時代に採用されたミュージックテープ専用ケースのため、交換用ケースが存在しないのが泣き所だ。
また、複数収納できないので2枚組の場合は2個口にする必要がある。
(Bible等はこの仕様)

とにかくミュージックテープは他メディアに比べて外装を美しく保つことがとても難しいメディアなのだ。

ちなみにこのGカセット形状は改良版であり、これ以前の初期仕様ケースも存在する。

下の大滝詠一「A LONG VACATION」はいち早くこのケースを採用していたが、ビニールカバーがないのでジャケットが汚れるタイプである。
IMG_0070

露出したジャケットは多少の防水加工がされており、破れにくいものの汚れだけは避けられない。

さらに歌詞カードの収納スペースを確保していないため、ケースとジャケットの隙間に挟むことになる。
IMG_0069

固定されない歌詞カードはケースの開け閉めでずれていき、背ラベル部分に移動すると曲がって癖がついてしまうという欠点があった。

聖子のミュージックテープは全て改良版が採用された。


それでは個別に見ていこう。


SQUALL
IMG_0001

発売日:1980年8月1日
価格:2,700円
品番:27KH 844

IMG_0002

IMG_0071

記念すべきファーストアルバム。
レコードとカセットの2メディアで同時発売された。
1980年と言えばオレはまだ小学生で聖子のアルバムまでは聴いておらず、リアルタイムでは知らないアルバムだった。
(とはいっても歌番組を見てシングル曲は知っていた)
そもそも初めて聖子のアルバムを聴いたのは1982年の6th「Candy」で、それも友人がレコードからダビングしたカセットを借りて聴いたのが初だった。
その後、自分の意思で聖子を聴いたのは「オーディオ小僧ダビングの流儀」でソースとした1983年の8th「Canary」を貸しレコード屋から借りてきた時だ。
なので数年遅れて聴いた「SQUALL」には当然思い入れはないのだが、後追いで聴いた時の感想は「なんか古臭い」だった。
何しろ「ユートピア」「Canary」「Tinker Bell」あたりが聖子の入口となればそりゃ古臭いと思うのも無理はない。
それだけ聖子の楽曲が進化していたということでもある。
しかも声質が「風立ちぬ」あたりから変わっていたのでいわゆるキャンディボイスではないファーストアルバムの頃の聖子の歌声にさらに違和感を感じたのだ。
聖子ほどの長いキャリアになると、ファンには必ず自分の世代のアルバムがあるわけで、どんなに名作と言われようが自分の中の名作は人それぞれなのだ。
とはいえ、年を取れば好みも多少は変わる。
(というより、いいものがわかるようになるといった方が正確か)
子供の頃に食えなかった野菜が食えるようになった程度であるが、そんな好みの変化が一番大きかったのもこのファーストアルバムである。
ここから「Tinker Bell」までは初期仕様形状のため、ジャケットにあたるインデックスカードがいかに綺麗に残存しているかがポイントとなる。
聖子のミュージックテープとして最古であるが、タマ数が多いので中古といえど程度のいいものもまだ存在するだろう。


North Wind
IMG_0003

発売日:1980年12月1日
価格:2,700円
品番:27KH 932

IMG_0004

IMG_0072

聖子のオリジナルアルバムのミュージックテープでは唯一初回生産限定仕様の特殊パッケージが存在するアルバム。
(聖子の限定仕様カセットは2つあるが、もうひとつはベストアルバム「Seikoe・Plaza」である)
レコードでは初回仕様がないアルバムでなぜカセットだけなのかは謎であるが、当時は確かにカセットのみの発売とかカセットが優遇されるケースも少なくなかった。
品番は同じであり、価格も据え置きなのでかなりお得といえる。

その初回限定盤を細かく見てみよう。
IMG_0107
発売日:1980年12月1日
価格:2,700円
品番:27KH 932

一目瞭然、カセットケースサイズではない。
サイズはおよそ14cm×11cm×1.5cm。
通常盤ではカットされている部分(両肘)のその先まで見ることができるジャケットがうれしい。
IMG_0108
この手のものはだいたい紙で作られており、サイズは規格外で自由自在だ。
IMG_0116

型は全て紙で作られている。

カセットサイズに縛られないことで封入されるものも制限がなくなる。
しかし、通常サイズのカセットと一緒に保管できないのは難点だ。
また、紙製である以上ケースの経年劣化は避けられない。
IMG_0109

固定されていない蓋を開けると、上のように収納されている。
蓋裏には別ショットの写真、ケース側には聖子のサインが印刷されている。

カセット本体はこの時期の通常色であるホワイトハーフとは異なるブラックのハーフを使用し、通常盤との差別化を図っているようだ。
IMG_0110

歌詞カードは見開きタイプで、開くと横12.7cm×縦20cmのビッグサイズになる。
LPの歌詞カードと同じ紙質で作られているため、丈夫で歌詞も見やすい。
IMG_0111

このショットはレコードでも使用されていない特別な撮りおろしなので、レコードよりもお得な部分といえる。

カセット本体は通常のプラケースでなく樹脂製の特別ケースに収納され、聖子のイラストとサインが印刷されている。
IMG_0115

このケースはソニーのブランクテープでも一時期使われたことがあり、これが初見ではない。

屋外に持ち出す時はこのケースだけを持ち運べるよう配慮されている。
ケース用に曲目が記載されたカードが付属するのだ。
IMG_0113

これはシールになっており、ケースに直接貼り付けることができる。
タイトルは上の写真の背ラベル部分に張り付けられる。

曲目はここら辺だろう。
IMG_0114

聖子の限定仕様は少ないので希少な一品といえる。


Silhouette ~シルエット~
IMG_0005

発売日:1981年5月21日
価格:2,800円
品番:28KH 992

IMG_0006

IMG_0073

レコードとカセットの価格が2700円から2800円に変わった価格変更後のアルバム。
以降1980年代はレコード・カセットとも2800円が定着することになる。
オレの中ではレコードといえば2800円だ。
当時でも2700円のLP、600円のシングルを見ると古いなぁという印象を受けた。
2800円といえば子供には大金だが、価格相場は現在とさほど変わらないようにも思う。
しかし、現代のアルバムは余計なものをつけすぎだ。
それで価格をつり上げている感があり、現代のほうが高いと錯覚してしまう。
限定盤、通常盤、配信など選択肢が増えたのは手放しで喜べるものではない。
大した特典もなく、皆同じアルバムを持っていた当時のほうが純粋に音楽に没頭できていたような気がしてならない。


風立ちぬ
IMG_0007

発売日:1981年10月21日
価格:2,800円
品番:28KH 1083

IMG_0008

IMG_0074

聖子の声質の変換期として有名な4thアルバム。
聖子として初めてシングルタイトル名がそのままアルバムタイトル名となり、コンセプト性が強いことでも有名だ。
A面は大滝詠一のアルバム「ロングバケーション」の曲と対をなしており、大滝がリリースできなかった実質のロンバケ2であると大滝は後に述べている。
聖子の初期ミュージックテープの中で「風立ちぬ」のような、色使いの少ないジャケットは傷みが目立つ傾向にある。
初期仕様のケースであるゆえ、ジャケット写真が色落ちしやすいのだ。
もちろんこれはカセットでのみ言えることで、レコードジャケットは紙質が違うので問題ない。


Pineapple
IMG_0009

発売日:1982年5月21日
価格:2,800円
品番:28KH 1160

IMG_0010

IMG_0075

ここにきて一気に聖子のアルバムイメージが明るくなったと感じるアルバム。
ジャケット写真も初めて歯を出して笑う姿が採用され、最も夏を感じさせる1枚だ。
キャンディボイスに明るい曲調、全編元気に歌い上げるこのアルバムは初めて聖子を聴く人にもおすすめだ。
個人的な感覚として、パイナップルのミュージックテープは意外にまともな個体が少ないように感じる。
人気盤であるせいか、流通量は多いものの痛みが激しいものも多く、コレクションに苦労したカセットのひとつだ。


Candy
IMG_0011

発売日:1982年11月10日
価格:2,800円
品番:28KH 1252

IMG_0012

IMG_0076

オレが人生で初めて聴いた聖子のアルバム。
別記事に書いた通り、初期ロットでテイク違いが収められたアルバムだが、それがこのミュージックテープにも存在することを確認している。
松田聖子 オリジナルアルバム「Candy」ファーストプレス盤検証

もちろん当時はそんなことは知る由もない。
当時聴いてどう感じたかはよく覚えていないが、シングル曲しか知らないガキだったオレは大人の世界を垣間見たような気持ちだっただろう。
当時聴いたのは友人のK君がダビングしたカセットでだ。
インデックスにはK君が手書きした曲名が記されていた。
ただ、B-5「真冬の恋人たち」が「真冬の変人たち」と書き間違えていたことだけは忘れられない。
「これ間違いだよな」と一応確認したことを覚えている。
結果的にK君のおかげで思い出のアルバムとなったのだ。
(ただし、K君がダビングしたカセットの音はキラキラしていて抜群によかった)
貸しレコード屋の存在を認識したのもこの頃だろうか。
買えないなら借りればいい。
お金がなくても聴ける音楽が増えることにワクワクした。
ある意味オーディオに目覚めるきっかけにもなったアルバムだ。


ユートピア
IMG_0013

発売日:1983年6月1日
価格:2,800円
品番:28KH 1310

IMG_0014

IMG_0077

前作で聖子のアルバムを意識したにも関わらず、この超名盤の当時の記憶がほとんどない。
ダビングしたものを聴いていたのには間違いないが、発売後すぐではなかったと思う。
数年後にレコードで所有することになるが、やはりリアルタイムで聴いていないと当時の感想が溢れ出てこないようだ。
やはり音楽は可能であればリアルタイムで聴くことがとても重要だ。
その時代の出来事、空気も含めてアルバムに想いを託すのは何事にも替えがたい財産になるのだ。


Canary
IMG_0015

発売日:1983年12月10日
価格:2,800円
品番:28KH 1425

IMG_0016

IMG_0078

「オーディオ小僧ダビングの流儀」の記事ではソースアルバムとした、オレが初めて自分でダビングした思い出のアルバム。
オーディオ小僧 ダビングの流儀 その1(カセット選定編)

当時の貸しレコード屋で見た店内の様子など細部を未だに記憶しているのもこのアルバムのおかげだろう。
なぜこのアルバムを借りたのか理由を覚えていないが、これでも自分の中では目一杯背伸びした方だ。例えば、気になっていた女の子を急に意識してしまったような、恋心に近い感覚だったかもしれない。
そんな不純な理由で選んだ最初の一枚だ。
とにかくオレのオーディオの原点となったアルバムといっても過言ではない。
といってもまだラジカセしか持っていない頃なので、ダビングするかFMラジオが新しい音楽を聴くための手段だった。
そういえばオーディオを意識するようになってからはミュージックテープを買うことはなくなった。
もっぱらレコードからダビングを繰り返し、これから買うならレコードという感じだった。
自分でカセットに録音した音は本当に最高だった。
なぜこんないい音で録音できるのか不思議でしょうがなく、そこからオーディオに興味を抱いたのだろう。


Tinker Bell
IMG_0017

発売日:1984年6月10日
価格:2,800円
品番:28KH 1485

IMG_0018

IMG_0079

オレにとって聖子にどハマりするきっかけとなったアルバム。
もちろん聖子アルバムマイベスト10には確実に入るほどのお気に入りだ。
当時はやはりダビングしたものであるがここからはリアルタイムで聴いたのは間違いない。
(たしか奮発してマクセルのXL-ⅡS(金ラベル)にダビングしたはず)
この頃になると、とにかくレコードからダビングするという作業が面白くて仕方なかった。
未だにA-1イントロのロードスターのエンジン音を聴くと当時の情景が目に浮かぶ。
友人の間でもオーディオ仲間は多くなり、オーディオ談義に花を咲かせたあの頃が懐かしい。
カセットテープにはごひいきのメーカーがあり、「流派」があることを意識したのもこの頃だっただろう。
ダビングしたカセットが1本また1本と増えていくことがとても嬉しかった。
それと共に自分でダビングしてみたいと強く思い始めたのもこの頃だ。
兄貴がいる友人はそのおかげですでに自分でダビングできる環境を手に入れており、すごく羨ましかったのを覚えている。
その友人の家には学校帰りによく集まっていた。
メーカーは忘れてしまったがレシーバーにレコードとスピーカーを組み合わせた本格的なコンポを兄から譲り受けたのだと言っていた。
貸しレコード屋にも一番近いその友人宅で1枚のレコードを全員でダビングしたことはいい思い出だ。
ダビングの最中はもちろん電気屋でもらってきたオーディオのカタログをみんなで眺め、あれが欲しいこれが欲しいと語り合った。
オーディオのモチベーションのひとつの要素は競い合いであると思っている。
そんなオーディオ好きな友人に囲まれて、誰が一番最高の音質で聴けるのかに熱くなっていたからだ。
では、今のオレのオーディオに対するモチベーションは何だろうかと考えた。
結局のところ今は楽しかった80年代の追体験をするために当時のオーディオやレコードを買い集め、アナログの音をたしなむことが一番のモチベーションになっている気がする。
オーディオの音質はその次なので、ハイエンドとは到底言い難いシステムで聴く貧乏オーディオマニアなオレであるが、それに満足もしている。


Windy Shadow
IMG_0019

発売日:1984年12月8日
価格:2,800円
品番:28KH 1600

IMG_0020

IMG_0080

ここからはミュージックテープ史上最強の樹脂製ケース<Gカセット>の出番となる。
中古でもこのケースを採用したものはだけは綺麗なものが多い。
汚れには非常に強いが日焼けしないわけではないので油断は禁物だ。
また、このアルバムからカセットのハーフが白からグレー系スケルトンに変わる。
ただし、再び白ハーフに戻るのでこの変更理由は未だ判然としない。
このアルバムはプレス時期の違いで別テイクが収録されていることで有名だ。
松田聖子 オリジナルアルバム「Windy Shadow」ファースト/セカンド/サードプレス盤検証
LP、カセット、マスターサウンド(LP/カセット)、初盤CD、と発売当時の全メディアでテイク違いが存在すると思われる。


The 9th Wave
IMG_0021

発売日:1985年6月5日
価格:2,800円
品番:28KH 1685

IMG_0022

IMG_0081

聖子のCBSソニー中期アルバムとしては個人的にそれほど印象に残っていないアルバム。
やはりこれ以前のアルバムが良すぎて、明らかなパワーダウンを感じていたからだと思う。
ただし「星空のストーリー」だけはなぜか好きすぎて未だに何度もリピートしてしまう自分がいる。
ベースラインが独特でかっこいい曲なのだ。
聖子のようにたくさんのアルバムが出ていると、もうなかなかアルバムを1枚通しで聴くことがなくなってくる。
そんな時はお気に入りの曲だけ飛ばして聴くのだが、ミュージックテープであれば曲飛ばしは逆に面倒。
(というか選曲が難しい)
そういう意味ではアルバムに最も真正面から向き合えるメディアこそカセットなのだなと思ってしまう。
好きな曲が1曲でも入っているアルバムはその理由だけで、アルバム自体を思い出して聞き返すきっかけとなるものだ。


SOUND OF MY HEART
IMG_0023

発売日:1985年8月15日
価格:2,800円
品番:28KH 1720

IMG_0024

IMG_0082

全編英語詞で話題となった1枚。
当時はてっきりこれで海外進出するかと思ったが、実際は国内販売に留まったようだ。
未だにこれはなんだったのかと思うが、その後の聖子の海外向けアルバムを見ても、アジア人はそうそう欧米圏で受け入れられるものではないのだと当時実感していた。
ただ「DANCING SHOES」など一部の曲は海外盤シングルが存在しているので、アルバムも海外で発売されていた地域があるようだ。
(日本では12インチシングル化された)
当時の感想は歌詞はわからないが曲はかなりカッコいい曲ばかりだと思っていた。
当然のことながらこれまでの聖子の楽曲とは大きく雰囲気は異なるが、決して駄作というわけではなく、むしろ十分評価できる作品だと思っている。
まぁ逆にこの時聖子が海外流出してしまっては後の名盤も生まれなかったわけで、現代のスタンスが確立できたのも、この当時からの地道な積み重ねがあったからということなのだろう。


SUPREME
IMG_0025

発売日:1986年6月1日
価格:2,800円
品番:28KH 1850

IMG_0026

IMG_0083

前作から約10か月、本来の聖子が帰ってきた。
ミュージックテープの裏面にはここからバーコードが印刷されるようになる。
ひとつ思ったのはカセットのサイズではバーコード部分が結構場所を取るものだということ。
以降のカセットを見てもデザインの妨げになっていると感じる。
また、カセットのハーフが再び従来の白に戻ったのは謎である。
この時、聖子は結婚・出産し、その芸能活動休止中にリリースされたのがこのアルバムだ。
普通、アイドルは結婚してしまえば人気は落ちる、当時は特にその傾向が強かっただろう。
正直オレもがっかりはしており、聖子熱が冷めていたのは否定できない。
しかし、このアルバムを聴いた時、クオリティの高さに驚いたことを覚えている。
実際、未だにセルフカバーや多くのアーティストがカバーもする「瑠璃色の地球」や「蛍の草原」などの名曲揃いでいまもよく聴くアルバムだ。
オレとしては結婚してしまった聖子のファンをやめようと思っていたさなかのことだ。
思うに「The 9th Wave」「SOUND OF MY HEART」と明らかな失速感(迷走?)があったと思っていただけに意表を突かれてしまった。
こんなアルバムを出されては、もう復帰が待ち遠しくて仕方なかった。
もし新しいアルバムが出るのなら絶対に買おう、と聖子ファンであり続けることを決心したことを覚えている。

”アイドルは結婚すればもう終わり”。

そんな常識を覆したのは聖子だったのではないか。

オレはアイドルとしての聖子が好きなのではなく、聖子の歌声が好きだったんだと思った瞬間だ。

大人の階段を1段登って、アイドル好きのオーディオ小僧が音楽好きのオーディオ小僧に成長した節目のアルバムとなった。


Strawberry Time
IMG_0027

発売日:1987年5月16日
価格:2,800円
品番:28KH 2157

IMG_0028

IMG_0084

聖子のオリジナルアルバムカセットとしては初めて冊子タイプの歌詞カードが添付された。
IMG_0085

前作から待つこと約1年。
待ちに待った復帰第1弾アルバムが発売された。
この時ほどうれしかったことはない。

このアルバムは発売の報を聞いてレコード屋で早々に予約していたので、本当に待ち遠しかった。

(買ったのはレコードだが)
当時、オーディオ小僧の行きつけのレコード屋は2軒あった。
その内の1店舗で店長と顔見知りになっていたのでこれの販促用のポスターをもらう約束をした。
店長が「ポスターの裏に名前書いといて」と言うので名前を書いておけば後でもらえたのだ。
考えてみたら「SUPREME」の宣伝用ポスターも貰ってたことを思い出した。
(もちろんお店に1枚しかないので早いもの勝ちだった)
さらに思い出したが、行きつけの家電屋でも宣伝用のポスターなどを貰っていた。
珍しいものでは薬師丸ひろ子の等身大パネルを貰ったことがある。
(確か東芝ビデオデッキの宣伝用パネルだった)
自転車で持ち帰るのに風に煽られたり、人に見られたりでちょっと恥ずかしかった思い出だ。
我ながら当時の行動力(情熱)には呆れるほどだ。
さて、発売日には手にしたこのアルバム、早速家に帰って聴いてみた。
その時の感想はもう言葉で言い表せないほどの感動だった。
当時人気だったTMネットワークの小室の曲あり、その他ビッグアーティストから提供された楽曲ありでそれはもう素晴らしい。
聖子がパワーアップして帰ってきたと思ったし、もう聖子ワールド全開な曲ばかりだし音もいい。
未だにマイベスト3に入るほど好きなアルバムとなった。
また、このアルバムはオレが買った聖子最後のレコードにもなった。
この後CDプレーヤーを手に入れたので、以降全てCDで買うことになる。
月日は流れ2020年、長い年月を経て聖子の新譜レコードを再び手にすることになる。
その時思い出したのがこのストロベリータイムだ。
あれから33年の月日が経ち、オレはおっさんになった。
しかし、ストロベリータイムを聴けば気持ちだけは当時のオーディオ小僧に戻れるのだ。


Citron
IMG_0029

発売日:1988年5月11日
価格:2,637円
品番:28KH 5040

IMG_0030

IMG_0086

前作からさらに1年。
オレが聖子のオリジナルアルバムとして初めた買ったCDだ。
また、国内で発売された聖子のオリジナルアルバムのレコードはこれが最後となった。
この時、もうレコードを買うという選択肢はなくなっていたのだ。
当時の心情は「レコードよさようなら、CDウエルカム」だ。
レコードの終焉に名残惜しさなど一切なく、ただ新しいCDというメディアに夢中だった。
そんなレコードの影に隠れて発売されていたカセットは存在すら忘れていた。
CDの販売から実に6年、やっと手にしたデジタルの聖子の世界に魅了されていた。
ここまではレコードが存在するとはいえ、当時オレが聴いたのはCDのデジタル音源。
よってこのアルバムの音の基準はオレの中ではデジタル音源だ。
そしてこのCDの音はそれはまぁいい音だった。
録音はロサンゼルスでデビッド・フォスターがプロデュースの完全海外録音だ。
しかしこのアルバムには一種独特のスタジオの音があるような気がした。
表現が難しいが、柔らかく、日本の録音とは違って聴こえたのだ。
良いか悪いかとかではなく空気が違う感じだ。
これまでの聖子のアルバムとは何か違う不思議な感覚を覚えた。
空気感といえばこれ以前にも同じ感覚を持ったアルバムがある。
松任谷由実の「昨晩お会いしましょう」だ。
気のせいかこれも独特の空気感があってやけに生々しさを感じたのだ。
スタジオの空気が録音されているのか、もっと電気的な何かの影響なのか、とにかくそういうアルバムに出会った時はオーディオやっていてよかったと思うし、オレの中では強く印象に残るアルバムとなる。


Precious Moment
IMG_0031

発売日:1989年12月6日
価格:2,800円
品番:CSTL1039

IMG_0032

IMG_0087

CBSソニーのカセット品番がここから変わる。
そして、このアルバムからはもうレコードが存在しないので、アナログ音源はこのカセットだけとなった。
そういう意味ではこの品番の変更がその目印になる。
アナログ音源が残ったとはいえ、CDと比べれば音質はかなり劣ると言わざるを得ない。
だからこそレコードだったらどんな音がだっただろうと考えることがある。
そういう意味でここからのアルバムをレコードで復刻するというのも有りだろう。
とにかくこれ以降のミュージックテープは当時のアナログ音源として価値があることは間違いない。
カセットで聖子のアルバムを買い続けていた人にとっては、そのまま継続できるのはありがたいだろうが、さすがにこの頃はCDの普及にも拍車がかかっていた頃だ。
カセットの売り上げは右肩下がりになっていただろうことは想像に難くない。
そういう事情もあってか、これ以降の聖子ミュージックテープの中古は激減する。
デビュー当時のミュージックテープはゴロゴロあるのに、新しいアルバムほど入手しにくいという状況になっているということだ。
売れてないからという理由で希少なのは、MDやDCCソフトも同様なので不思議ではない。
これ以降のミュージックテープは音源的に全て最重要となる。


Seiko
IMG_0033

発売日:1990年6月7日 ※海外では5月15日
価格:2,300円
品番:CSTL1090

IMG_0034

IMG_0088

事実上の海外デビューアルバム。
国内では約1か月遅れの発売であったため、オレは当時輸入盤CDを購入し、後に国内盤CDも手に入れた。
ミュージックテープにおいても同様、国内盤と海外盤が存在した。
価格は海外相場を反映したためか2,300円となる。
売上的にはまず成功を収めたようであるが、やはり外国人には聖子のボーカルは理解できないのだと痛感したアルバムでもある。
結局は日本国内ではそこそこ売れたようだ。
現代に至ってはシティポップのブームで聖子の楽曲までも見直されているようであるが、このこともあり、今さら認められてもという感じだ。
そりゃ日本人からすれば英語より日本語の曲の方がいいに決まっている。
だからこのアルバムは聖子の他のアルバムに比べて国内では売れなかったかもしれないが、聖子の声は類まれなる日本の絶対的宝なのだ。
声量ばかりデカく技量にこだわるばかりの海外アーティストを基準に比較し、それ以外を見ようと(聴こうと)しないのは海外のダメなところだ。
(米国のオーディション番組アメリカンアイドルを見てるとそれがよくわかる)
日本人は理解できない言語の歌でも単純にメロディ(音)だけで好む人は多くいる。
だからなんでも受け入れることができるし音楽の幅も広がるのだ。
ボーカルを楽器の一部として聴くことが潜在的にできる民族なのだろう。
おそらくは欧米人にとって聖子の声はアニメ声優のような声に聴こえ、子供っぽいということが本音なのだ。
(本当にくだらない)
まぁそういったことで音楽そのものを聴こうともしない固定観念がなくなりつつある現代であるからこそ、いま日本のシティポップが理解されはじめたのだろう。
さて、恨み節はこれくらいにしておいて、このアルバムは海外デビュー作であり、発売も海外が先ということで、海外盤がオリジナルという解釈が正しい。
なのでそれも掲載しておこう。

・北米盤
品番:CT46046
IMG_0035

IMG_0089

これが北米オリジナル盤となる。
カセットはスケルトンでテープとハーフの接触を防ぐセパレーションシートが黒色となる。
また、インデックスカードがジャケット、裏ジャケット、歌詞カード兼一体型という画期的?な形状だ。
海外ではこれが一般的なのだろうが、驚くべきはジャケット裏がカセットケース内に収められていること。
これにより、初期国内盤の弱点であった裏ジャケットぼろぼろ問題は解決するのだ。
IMG_0090

ケース内で取りまわすので、裏ジャケット部分には穴を開けてテープ止めを通すという発想は素晴らしい。

ついでに手持ちがある香港盤も載せておこう。

・香港盤
品番:CJK1472
IMG_0036

IMG_0091

これは香港で発売されたいわゆるアジア盤というこになる。
ケース形状は日本の初期仕様に近く、カセットはほぼ国内仕様と同等だ。
裏ジャケットは切り取られたような形跡もあるようで、これが完全な形かどうかは不明。


We Are Love
IMG_0037

発売日:1990年12月10日
価格:2,800円
品番:CSTL1569

IMG_0038

IMG_0092

CDの初回盤はスペシャルパッケージで豪華だった。
レコードの時とはそれほどでもなかったパッケージの差もCDに置き換わり大きくなった。
ミュージックテープの限界は音質だけでなく、サイズの限界でもあり、CDにはもう太刀打ちできない状況になっていた。
例えば「North Wind」の初回限定のようなパッケージにでもしない限り、明らかにカセットでは損した気分になってしまう。
もう、持てる武器はアナログ音源であることだけでそれ以外何もない状況だ。
とはいってもこの時代のアナログ音源はレコード亡き後の貴重音源。
レコード発売が無くなってからのカセット音源はアナログの音を聴ける唯一のメディアとしての意義がある。
アルバム自体は12月の発売ということもあり、季節感あるクリスマスアルバムのような雰囲気をまとっている。
「SOUND OF MY HEART」の時同様、英語アルバムの後の懸念は全くなく、いつもの聖子ワールドも健在のお気に入りのアルバムである。


Eternal
IMG_0039

発売日:1991年5月2日
価格:2,800円
品番:SRTL1714

IMG_0040

IMG_0093

ここでも品番が少し変わった。
聖子初の初カバーアルバムだがフルカバーでなく1曲だけオリジナルが収録されている。
オレ的にはカバーアルバムならコンセプトアルバムの部類に入るのではと思っているが、公式にはオリジナルアルバムとして分類されている。
カバーなのでオリジナルを知っている曲、知らない曲があったが、総じて言えるのはアレンジの素晴らしさが光るアルバムということ。
カバーと言えば80年代の大映ドラマ主題歌として日本で大ヒットした曲たちを思い出す。
中でも「スクール★ウォーズ」の「Hero(麻倉未稀)」や「ヤヌスの鏡」の「今夜はANGEL(椎名恵)」は秀逸だった。
これらは日本語詞に置き換えられ、アレンジは原曲以上にかっこよかった。
原曲を知らずにカバーを先に聴いた当時のオレはこれらカバー曲に熱狂したものだ。
とにかく日本語版のアレンジは絶妙で、申し訳ないが原曲よりカバーの方が好きなものがほとんど。
そんなバックグラウンドがあって、このアルバムのアレンジも安心して聴けたというのがある。
後に続編が制作されたのはこのアルバムの評判がよかったからということだろう。


1992 Nouvelle Vague
IMG_0041

発売日:1992年3月25日
価格:2,800円
品番:SRTL1807

IMG_0042

IMG_0094

90年代に入るとオレは聖子のライブにかなり足を運ぶようになる。
全て日本武道館公演だったが、3日間全てを見た年もあった。
その後発売されるライブのLD(レーザーディスク)も欠かさず購入したものだ。
このアルバムを引っさげたライブツアーも例にもれず見に行った。
この頃からか、ライブ前に発売されたアルバムを短期間で聴き込むようになる。
直近のアルバム曲を知らなければライブが盛り上がらないという理由からだ。
聖子は毎年定期的にライブをやってくれたので、ファンの間ではいつの間にかそんなことが慣例となったのだ。
ただこんなことが続くと、アルバムを聴くという行為がライブのためということに置き換わるのは当然の流れだろう。
(逆にいうとライブが終わると聴かなくなる)
当の聖子もライブツアーのために新譜を出さなければという義務感のようなものがなかったとは言い切れない。
この頃になると聖子のアルバムは自ら作詞作曲した楽曲が多くを占めるようになる。
一人でそれをこなすことがどれだけ大変なのかは想像を絶する。
そしてそれを待ち望む何万人ものファンがいるのだ。
となると懸念されるのは楽曲のクオリティだ。
多くは語らないが、アルバムの目的がライブのためという比重が高くなれば残念なアルバムが出てくることも予想できる。
しかし、ひとつ言えることは90年代のアルバムはそれでもクオリティが高かったということだ。


Sweet Memories'93
IMG_0043

発売日:1992年12月2日
価格:2,800円
品番:SRTL1853

IMG_0044

IMG_0095

既存曲のリメイクを多く含むコンセプト性の高いアルバム。
残念ながらオリジナルアルバムとしてのクオリティは持ち合わせていないと思っている。
(リリース時期も12月だし)
おそらくこのアルバムを好きなアルバム上位に持ってくるファンは少ないことだろう。
完全コンセプトアルバムとすればまた意味が違ってくるのでそれなりの評価はできるアルバムであるが、オリジナルアルバムにラインナップするのであればこれはかなり弱い。
あまり聴きこんでいないアルバムのひとつで、このアルバムを今聴いてもなにも思い出が出てこない。
タイトルの付け方でも損をしている、これはないなと思う一枚だ。


DIAMOND EXPRESSION
IMG_0045

発売日:1993年5月21日
価格:2,800円
品番:SRTL1864

IMG_0046

IMG_0096

オレ的にはオリジナルアルバムとは認められなかった前作から約半年後。
待ちに待ったニューアルバムはとても満足のいくものとなった。
まずジャケットがいい。
「Pineapple」を思わせる黄色を基調とした派手なジャケットだ。
タイトルも何やらゴージャスな雰囲気。
(ダイアモンドというワードは聖子にとって定番ワードな気がする)
もちろん曲も粒揃いの良曲が多く、今でもちょいちょい聴きたくなるアルバムのひとつ。

好きすぎて怪しいアジア盤も入手したのでついでに載せておこう。
IMG_0047
聖子の「聖」が・・・
やはり国内盤だけでいいやと思わせた1本だった。


A Time for Love
IMG_0048

発売日:1993年11月21日
価格:2,800円
品番:SRTL1899

IMG_0049

IMG_0097

クリスマスコンセプト要素が強いアルバム。
しかしこのアルバムとにかくジャケットが好きなのだ。
この聖子は最高に可愛いと思う。
(髪型がかなりレア)
オレのジャケットベスト10を選ぶなら必ず入ってくるだろう。
これのAmazonメガジャケが欲しい。

それはそうと、この記事ではすでにレコード未発売分に何タイトルか突入しているわけだが、ミュージックテープについてひとつだけ考える部分がある。
それはA面とB面のことだ。
1989年の「Precious Moment」からはレコードが存在しないのでつい忘れていたのだが、カセットでは当然のことながらA面とB面が存在している。

つまり作り手として、A面B面を意識したアルバム作りをまだやっていたのかということだ。
(それは現在にも通ずることだが)
以前どこかの記事で書いたが、レコード時代のアルバムはA面からB面に切り替える間が発生するため、これを前半後半と捉えて、ある種のストーリー性がそれぞれの面にあったということ。
(別にストーリーがなくてもいいが)
また、レコードの外周と内周の音質差や収録時間という制約がそのストーリーを描くための一種の縛りの要素があったのだ。
ただ、CDの時代になると真ん中で分けて考える必要はないので制約無しで自由に作れる。
1曲目から10曲目までで大きなストーリーを好きに描けばいいのだ。
しかし、カセットでもリリースする以上はまだ何かストーリーがあるのではとつい意識してしまうのだ。
たしかにレコードからCDへ移行したての頃は、オレもなんとなくCDにはまだその名残りはあるなと意識していたものだが、果たしてどうなのか。
カセットテープで音楽を聴くということは、そんなメッセージも含めて聴くということなのだ。
CDであってもそんなことを考えながら聴くと、また新しい発見があるかもしれない。


Glorious Revolution
IMG_0050

発売日:1994年6月12日
価格:2,800円
品番:SRTL1911

IMG_0051

IMG_0098

このアルバムでもいえることであるが、オレはアルバムの1曲目はロック調で導入するものが好きだ。
(最低限キャッチ-なポップスであればよい)
90年代に入ってからもその傾向が続いていたので、作曲は聖子本人がやっているということはほとんど意識していなかった。
もちろん当初の作曲は小倉良との共作ではあったものの、80年代の天才作家の協力により作り上げられたアルバムと比べても大きな遜色があるとは感じなかったのだ。
聖子はアイドルなので曲まで作る必要はない、ボーカルだけに集中してくれればと思うのはファンの偏見かもしれないが、ファンとしてはやはりいい曲を聖子に歌ってほしいと思うものだ。
しかし、90年代のアルバムを振り返ると好きな曲は山ほどあることにも気付く。
つまり聖子は作曲の才能もあるってことだ。
ただし、どんな有能な職業作家であっても駄作はあるし、出てこないこともあるだろう。
アイドルである聖子ならなおさらそこは責められない。
しかしながら90年代のアルバムは80年代の流れから大きなギャップもなく順当に聴いていられたような気がするのだ。
何が言いたいかというと、全曲聖子が作曲のアルバムも忖度なしでいいアルバムはあるということだ。
現代に至るまで、かなりの曲を聖子は作ってきたが、さすがに90年代までの勢いは感じられない。
そんな中でも自分が好きな傾向の曲を集めてマイベストを作るとするなら、かなり強力なアルバムが作れると思うのだ。


It's Style'95
IMG_0056

発売日:1995年5月21日
価格:2,800円
品番:SRTL1951

IMG_0053

IMG_0099

聖子の国内盤ミュージックテープとして最後のアルバムとなった。
よってこれ以降、アナログ音源は国内では公式に存在しないということになる。
(ただし、プロモ盤としてレコードやカセットが作られることもあった)
そういう意味ではアナログで聴ける最後のアルバムであり、このミュージックテープは大変貴重だ。
特筆すべきは最後までGカセット仕様を貫いたことだ。
ミュージックテープの歴史を見る限り、90年代の終末期は先祖返り(初期に戻る)していったメーカーも多い。
CDが普及し、売れなくなったカセットにコストがかかりそうなGカセットで出してくれたことの意義は大きい。
この形状は汚れに強いため、未だ中古品でも綺麗なままであることが多いからだ。
アルバムは全体にキャッチ-かつポップな安定の仕上がりとなっており、今でも時々聴きたくなる1枚だ。


WAS IT THE FUTURE
IMG_0054

発売日:1996年5月14日 ※国内はカセット未発売
価格:不明
品番:31454 0480 4

IMG_0055

IMG_0100


「Seiko」に続く第二弾全米向けアルバム。
パッケージングは前作同様の海外仕様。
このアルバムは裏ジャケットにも写真を使っているので仕組みがわかりやすい。
シンプルにして非常に優秀なパッケージ仕様なので日本でも採用してもらいたいほどだ。
日本国内ではCDが約1か月遅れで発売され、メディアもCDのみとなった。
そうなると、やはりオリジナルはこの北米盤ということになるだろう。
このジャケットはかなりお気に入りでLPサイズも欲しいなと思わせる。


おまけ

Vanity Fair
IMG_0057

発売日:1996年5月27日
価格:不明
品番:532454-4

IMG_0058

IMG_0103

これはミュージックテープの公式盤としてカウントしないおまけ。
基本的に海外盤には興味がないのでオリジナルでなければほとんど所有していないが、リリース順につながるということでこのアジア盤を掲載することにした。
日本語の通常のアルバムは当時もアジア圏では広く発売されていたため、このようにカセットが存在するのだ。
(おそらくレコードまではないはず)
そもそもアジア盤は日本語のままでリリースされることが多い。
それゆえ怪しい日本語が散見されるのはこの手のものでは珍しいことではない。
IMG_0104
明日へと駆け出してゆこ

IMG_0105
ロマンテックにKissしましよら
もし、も一度戻れるなら

まず、ハーフに直接印刷されているのは珍しい。
「う」を「ら」と勘違いし、また小文字は不得意のようだ。

日本国内ではメジャーレーベルのミュージックテープのリリースはほぼ90年代中頃には終わっている。

細々と2000年頃までリリースしたレーベルもあるが、終焉は実質1995年くらいと見ている。
新しいものが好きな日本人はメディアの切り替えも早い方なのだろう。
対するアジア地域では日本のポップスは人気があるため、日本よりもまだ売れるカセットという形態で販売は続いていたようなのだ。

90年代中盤となれば日本ではCDがメインの音楽メディア。
MDやDCCがカセットの後を引き継いだが、CDよりも音質が劣ることや記録メディアでもある(カセットテープの代替)というイメージから販売数は従来のカセットに遠く及ばなかった。
しかしアジア圏でMDなど普及するわけもなく、継続してカセットが使われ続けため、日本発売されていないミュージックテープが海外でだけは存在したのだ。

「Vanity Fair」はデビュー当時から在籍したCBSソニーを離れ、マーキュリーへの移籍第一弾アルバムでもある。
当時のことはよく覚えている。
まずCBSソニーから離れたことはちょっと残念には思っていたが、アルバム自体は見た目も含め、それをあまり意識させないものだった。
CDにはもちろんマーキュリーのクレジットがあるので確かに変わったのだがやはり聖子は聖子だと思わされた。
とはいえ、鮮烈な印象が残るソニー時代のアルバムに比べれば物足りなさがあることも事実だ。
このアルバムは全アルバムを通しても個人的にはそれほど印象に残るアルバムではなかった。


さて、これが聖子のオリジナルアルバムでカセットでの公式発売分の全てになる。

もともとミュージックテープというメディア自体には思い入れはなかったものの、アルバムはどれも親しんできた思い出があふれるものばかり。

いまとなってはレコード以上に希少性が高いと思われるミュージックテープだが、その存在自体を気にする人は少ないだろう。

そういうオレも少し前までは特に興味もなく、逆にここまで手を出したら沼にハマりにいくようなものだとわかってはいた。

ただ、アナログの一時代を担った音楽メディアのひとつとしてカセットの存在を見過ごすわけにはいかないという思いも少なからずあった。
結局試しに1本手に入れてみたら、レコードでは味わえない音とカセットならではの魅力に気づかされたのだ。

当時レコードやCDで聴いたアルバムを、現代あえてカセットテープで聴いてみて思ったのは、やはり音質はレコードにはまるで敵わないということ。
解像度、音場ともにカセットでは追いつけない部分は多くある。
ラジカセさえあれば、レコードよりは手軽に聴けるとはいえ、複雑な機構を持つ機器を維持していかなければならないのも煩わしい。
ただし、この音こそがカセットならではの音であり、レコードでは味わえないものなのだ。

ノンメディアで音楽を聴く現代において、カセットはおろか物理メディア自体を所有することの意義さえ揺らいでいるのも確かだ。

では物理メディアで所有する意義は何かと考えた時、オーディオマニアの観点からまず言えるのは「音がチューニングできるから」の一言につきると思う。
言い換えるなら、再生環境の影響を大きく受けるので人それぞれ聴く音が違うのが面白いとも言える。

今の時代なら音源をバックアップする必要がないということも重要な要素だろう。

また、物理メディアで聴いていたらこそ、この記事に書いたような思い出が心に残ったのだろうとも思うのだ。
もともと形のない音楽を物理メディアで形として所有する。
歌詞や写真も直接手に取って五感でも音楽を感じる。
どちらが心に残るのかは比べるまでもなく明白だ。

保管スペースや再生の手間が無くなるノンメディア音源は、効率の良さと引き替えに大切なものが欠けている気がしてならない。
それは、オレがこのブログで何度か言っている「音楽は写真アルバムと同じ」という部分だ。
思い出が残せないなら、オレがノンメディアだけで音楽を聴くことは一生ないだろう。

ただし、オーディオの本質を考えた時、高音質再生が第一命題となろう。
それを基準にするとカセットは全メディア中ではもっとも音が悪いという評価になる。
であればよりいい音で聴きたいというのが人間の単純な欲望だ。
より音のいいCD、それに加えて再生時に物理機構を必要としないデータ音源。
高音質で手間もかからないとなれば主流となるのは当然のこと。
そこは全く同意だ。

しかしオーディオの楽しみは高音質だけにこだわると実は全く面白みがなくなるとも思っている。
一番音が悪いカセットをどこまで高音質で再生できるか、なんてことを考えてるとこれはこれで面白いのだ。
つまり、物理メディアはノンメディアよりも遊べる要素が多く、その変化量も大きいということだ。

ノンメディア一択はオレには無理だが、物理メディアとの共存はむしろ大歓迎である。

オレは可能性を秘めたミュージックテープが今は愛しくて仕方がない。

松原みき 真夜中のドア~Stay With Me(シングルレコード復刻盤)

松原みき。

1970年代後半から1980年代後半にかけて活躍した日本の歌手である。

ここのところ、なぜか彼女のかつての楽曲が世界で注目されている。
IMG_0102

事情を知らない日本人にしてみれば、なぜなのか疑問しかない。

事の発端は海外のYoutuber(Rainych)が彼女の曲をカバーしたことから始まるようだ。

その後、音楽ストリーミング大手のSpotifyのバイラルチャートで松原のオリジナル曲が世界1位を取り、多くの人々に知られることとなったのだ。

松原のデビュー曲である「真夜中のドア~Stay With Me」は1979年リリースなのでオレはまだ小さい子供だった。
当然そんな大人の曲を聴くわけもなく、存在すら知らなかったのは言うまでもない。
(その頃はアニメ音楽を聴いていたくらいだ)

そして2004年にがん闘病の末、彼女が亡くなったことも今になって知ったほど。

そんな松原みきを知ったのはネットニュースからだ。
興味本位でYoutubeで聴いてみると、なるほど確かにいい曲。

ただ、この系統の曲は1980年代にかけて多く存在しており、この曲だけが群を抜いて優れているというわけでもなさそうだ。

だからこそ日本人にとっては「世界の気まぐれ」でヒットしたのだなという捉え方になる。

しかし、これを機に過去の日本の音楽が発掘されるようにもなったのだ。

それが「シティ ポップ」と呼ばれる音楽分野になる。

シティポップという言葉は正直聞きなれないが、それが何を意味するのかはすぐに理解できる。
少なくとも当時はそんな言い方は一般的ではなかったはずだ。
例えば、ニューミュージックとかポップスとか大まかなくくりで呼んでいたような気がする。
具体的には山下達郎、竹内まりや、角松敏生など、まさに都会的に洗練されたおしゃれな音楽。
オレも80年代から好んで聴いていたアーティストがこれにあたる。

松原みき、シティポップ、これだけが独り歩きしていたから違和感を感じていたのだろう。

そもそもの話、日本人としては今更日本の音楽になぜ世界が注目するのかというのが疑問だ。

オレが思うに、それは当時の日本の音楽業界のプロモーションの仕方が世界に向けられていなかったことが原因の一つと考える。
とはいえ、日本の音楽はアジア圏には当時から認知されており、オレもいくつかアジア向けのカセットは持っている。
だから日本の音楽はアジア圏の人々にはわかってもらえても、欧米圏では認めてもらえないのだろうと思っていた。
ずっと昔の話だが、松任谷由実の曲を聴いた欧米人が「なんてヘンテコな音楽なんだ」的なニュアンスで揶揄していたのを覚えている。

日本が誇るユーミンの音楽をこき下ろすとは「もうお前らに理解してもらわなくて結構だ!」と怒りを覚えたのだ。
また、聖子が世界デビューした時も、それが全く売れなかったわけではないにせよ、そこに留まり、日本でリリースされた過去のアルバムが聴かれるということはなかったのがあまりに残念だった。

こんなことがあったから、オレは今の世界のシティポップブームに不信感が拭えないわけなのだ。

だが、そもそも欧米圏の人々は日本の音楽に触れる機会がなかったことも事実。
もっと多くの人々の耳に入っていればきっと状況も変わっていたのではと思う。

その状況が変わったのが近年のことなのだ。
インターネットにより、Youtubeで全世界にコンテンツが労無くして共有できるようになった。
しかし、それだけではまだ足りない。
バックグラウンドにあったのは、やはり近年の日本ブームだ。
おそらくはアニメから始まり、日本料理、日本旅行と日本の文化に対する世界の関心は集まっており、それが日本の音楽にまで波及する準備は整っていたといえる。

しかしながら、まだ根本的な問題は解決していない。

それは日本語だ。

我々日本人は洋楽に対し、言葉の意味はわからなくても曲がよければ無条件に受け入れる民族だと思っている。
また、それを理解しようと努める人々も多くいるということだ。

外国人によれば、日本語は多くの言語の中でもかなり難しい部類に入ると聞く。
これは英語ほどのグローバル感がない日本語は個人で翻訳することが非常に難しい言語であるということでもあるだろう。
今なら翻訳サイトを使えば一瞬で翻訳もできるが、ニュアンスが違うなと思うものも多い。

この問題に変化の兆しを感じたのは「アナと雪の女王」だと個人的に分析している。
「アナと雪の女王」は2013年に公開され、世界、老若男女問わず大ヒットしたディズニーアニメ映画だ。

「アナと雪の女王」の主題歌である「レット・イット・ゴー」は上映する国ごとに、その国の言語で公式に歌詞が作られたのだ。
その日本語版を歌唱したのは「松たかこ」である。

当時、各国の言語で歌われた「レット・イット・ゴー」をYoutubeで公開していたが、その中に25か国言語ミックスバージョンがあった。
そのコメント欄に寄せられたものに、日本語がいいというコメントも多く寄せられていたのだ。
ここまで多言語で構成された音楽などなかったので、当然聴く側はもう雰囲気(音)として聴くしかない。
そんな中でも日本語がいいという人は「語感が心地いい」「かわいらしい」という感想を述べていた。

オレはこれを見た時、世界が日本語を(意味を理解しなくても)日本語のまま受け入れたのだなと思ったのだ。

つまり、日本人が洋楽の言葉の意味がわからなくても受け入れる感覚が、外国人もそう割り切った瞬間ではなかっただろうか。

「音楽に国境はない」とはよくいうが、それは確かにそうだと思うが、そうではない部分も大いにあったはずなのである。


と、話が長くなったが見ていこう。

松原みき「真夜中のドア~Stay With Me」
IMG_0101

発売日:2021/3/10(オリジナル:1979/11/5)
価格:2,177円(オリジナル:600円)
品番:SCKA00002
B面:そうして私が

発売日からわかる通り、これはオリジナルでなく復刻盤だ。

値段はさすがに高いが、オリジナルはすでにこの値段では買えないだろう。

松原みきが話題になり始めたころ、権利を持つポニーキャニオンは動いた。

これはポニーキャニオンによるクラウドファンディングである、「パッケージ・オーダー・プロジェクト」により復刻が実現した。
つまり規定数量を満たさなければ商品化が叶わないものだったのだ。

ちなみにファーストアルバムも同様の手法で商品化されたが、セカンドシングル「愛はエネルギー」、セカンドアルバム「Who are you?」は予約するも中止の連絡を受け取っている。

知らなかったとはいえ、外国人に「これいいぞ」と言われて購入したようなもので悔しいが、自分にとって知らない音楽を聴くことは何よりも嬉しいことなのでよしとしよう。
(もちろん事前に曲を何度も聴いていてお気に入りだったこともあるが)

基本的にオリジナルが欲しいのだが、これについてはリアルタイムで知らないので、思い入れはなく、今の若い世代が80's90'sの音楽を初めて聴く感覚に近い。
オリジナルに未練はないのでとりあえず復刻盤でよしとしたのだ。
(とはいえ本国の人間ならオリジナルを所持すべきか?)

IMG_0098
ジャケット裏の歌詞面は斜めに書かれた歌詞。
シンプルでなかなかオシャレな感じ。

IMG_0099
ケースは白、ラベルも白ととても美しい。
ただ、オリジナルのラベルはピクチャー仕様のようで完全復刻ではない。
この当時はポニーキャニオンでなく、キャニオンレコードだ。

IMG_0100
ひとつ思ったのが、このスリーブケースは非常に厚くしっかりしている。
オレが所有するシングルレコードの中でも一番かもしれない。
ほとんど厚紙な感じでレコードの保存に不安がない。

ただし、やはりこれもオリジナルとは違うようだ。

楽曲自体はネットを検索すれば簡単に聴けるのでオレが言及するまでもない。

これがいわゆる「シティポップ」と呼ばれる典型的な音楽なのだ。

きっかけがどうであれ、松原みきのおかげで日本の音楽が世界に知れ渡っていくことは単純に嬉しい。

ただこのことで日本の中古レコード市場が高騰するのは憂うべきことだが。
海外への流出も歯止めが効かないだろう。

いずれにしても日本のレコード業界が活況に沸くことはいいことであるが、当のアーティストは中古が売れたことで儲けにはならない。

せめて、この機会に現役で頑張るアーティストのCDやレコードも売れてくれることを願うばかりだ。

日本人としては「世界のきまぐれ」に踊らされることなく、自分の好きな音楽をただ聴いていればいい。

だが、過去の膨大かつ良質な音楽資産を当の日本人が知らないことは本当にもったいないなと思った次第だ。

中森明菜 ANNIVERSARY COMPLETE ANALOG SINGLE COLLECTION 1982-1991(ワーナー期全シングル)

2021年 明菜デビュー40周年記念として、早くから告知されていたワーナー期全シングルレコード復刻ボックスがついに発売された。

半年前から予約していたので喜びもひとしおだ。

さて、本ボックスはデビュー時から在籍したワーナー期のアナログシングル発売分の復刻コンプリートボックスである。
明菜のシングルは、ワーナー・パイオニア在籍時にレコードからCDへ移行されていた。

従って当時リリースされた明菜のアナログ分としてはこのボックスがあれば「ほぼコンプリート」ということになる。
「ほぼ」というのは、MCAビクター移籍後のカセットテープや後にアナログ復刻された分もあるためだ。
別の記事にも書いたが、CDへ移行後もカセットだけは1995年前後まで発売されていた。
つまりこれはワーナー期だけのコンプリートという意味になる。

だが、果たして本当にこれでコンプリートできているのかはこれから検証していくので結論は後にしたい。

さて、近年のアナログ人気については世界的なものとなっており、これはもう一時的なものに終わらない様相を呈してきた。
今後はアナログレコードやカセットテープも新譜としてCD等と同時発売されることも多くなりそうだ。

それにしても今やサブスク等で音楽を聴く時代、CDさえも古いと言われる現状にアナログ回帰とは極端なものだ。

オレはレコードはともかく、カセットテープだけは録音メディアとして絶やさず使い続けてきたが、近年のレコード人気にレコード世代としては複雑な感情を持ちつつもしっかり便乗している。
新譜でCDとレコードを発売すると聞くと、何より最優先でレコードを買ってしまうのだ。
(ここに来てレコードラックがすでに満杯で保管場所に頭を悩ませている)

今後のアナログ復刻は古くからのファンのための復刻だけでなく、若年層へのアピールにもつながりそうなので歓迎すべきことと捉えている。

さらに世界的な1970~80年代のJ-POP人気も後押しし、それが明菜にも及べば大変意義のある復刻であることは違いない。

ここで明菜の過去のアナログ復刻についてもおさらいしておこう。

まずは2018年のデビュー36周年記念の「ワーナー期オリジナルアルバム重量盤アナログLP復刻」が記憶に新しい。
中森明菜 レコード復刻盤(2018年カッティング 180g重量盤)
body_171612

今回のシングルボックスと両方揃えれば、明菜のワーナー期のアナログ分はコンプリートできることになる。

次に非常にレア盤となっているが2016年の「全世界999セット限定アナログセット」もある。
これは当時のMCAビクターと現ユニバーサル発売分(ガウス在籍時の5枚を除く)のCDシングル(18枚)を初アナログ化したものもだ。

D2JJ-1
もともとCDで発売されたものをEPレコード化し、レコードプレーヤー(明菜モデル)とセット売りしたもので正確には復刻ではない。
さらにこれは999セット限定のため、今では入手困難なレア盤となっている。
(のちにレコードのみ追加プレスしたようだがそれも完売)

なにはともあれ中古でちまちまと集めていくより手っ取り早く、しかも新品で手に入るとなればこのボックスはとても有意義だ。

過去の記事でオリジナルレコードは検証済みのため、それを踏まえて厳しく見ていきたい。

過去のワーナー期のオリジナルシングル関連記事は以下。
ワーナー期オリジナルシングルレコード
中森明菜 シングルレコード(ワーナー・パイオニア期)

ワーナー期オリジナルシングルEPサイズ復刻CDボックス(文中のCDボックスはこれを指す)
中森明菜 Singles Box 1982-1991


ANNIVERSARY COMPLETE ANALOG SINGLE COLLECTION 1982-1991
IMG_0054

ボックス裏
IMG_0055

発売日:2021年6月9日
販売元:ワーナーミュージックジャパン

価格:48,400円(税込)
品番:WPZL-31821~50
組数:EP盤28枚、カセット1巻、12インチシングル1枚
キャッチコピー:ワーナー期全シングルを復刻

本ボックスはEP盤シングルの復刻がメインとはいえ、12インチシングル盤の復刻も含まれるため、予想通りLPサイズの巨大なボックスとなった。

大きさはLPレコードの約20枚分に匹敵する。

このボックスだけでLPレコード20枚分のスペースを取ってしまうのは我が狭小オーディオ部屋においては深刻な問題・・・。

ボックス内にはEPレコード、カセット、12インチレコードが収められているがどう収納されているのか。

蓋を外すとまずボックスデザインと同じLPサイズブックレットがでてくる。
IMG_0056

冊子の次は「赤い鳥逃げた」の12インチシングル2枚。
レコードは片方にしか入っていないがオリジナル通り二種類のジャケット再現ができている。
IMG_0058

レコードの次は上にカセット1巻、下にシングルレコードが収納されている。
IMG_0059

ちなみにカセットの下にはポータブルプレーヤーのイラストがある。
レコードの下はレコードプレーヤーのイラストがあり、なかなか粋な演出だ。
IMG_0060


特典

このボックスにはもともとメーカー特典は準備されていない。
よって今回はAmazonでオリジナルトートバッグがつくということでAmazonで購入。
下の写真がその特典となる。

IMG_0052

特典はボックスに張り付けられていた。
予想していたが、ペラペラのトートバッグで実用では買い物袋程度にしか使えなそうだ。

それぞれを詳細に見てみる。


ブックレット
表のデザインは先の通り。
裏はデビュー時からしばらく使われた明菜のイメージキャラがさりげなくあしらわれている。
IMG_0061

次にブックレットの内容。
IMG_0062
各マスターテープに貼られていたレコーディングデータの写しが延々と掲載されている。
オーディオマニアとしてはうれしい情報である。
ただ高額なボックスの冊子としては?な内容だ。
できればレコーディング時のエピソードや関係者のレビュー記事もほしいところだ。
ともあれ、カッティングに使用したマスターテープの出所を明確にしているのは評価できる。
なぜなら明菜の音源は度重なる復刻でリマスターしたマスターテープが多数存在しているはずなので、どのマスターテープを使用したかで意味が大きく違ってくるからだ。
当時のシングル発売時のマスターテープを使用しなければ本来の復刻にならない。
これはその証拠資料ということになるだろう。


IMG_0063
他にはレコーディングリストと呼ばれるトラックシートの写しも掲載されている。
これはかなり貴重なデータである。

IMG_0064
特筆すべきは松本隆がレコーディング時に渡したとされる「二人静」の歌詞もあった。
解説でもつけてくれればと思うが、ブックレットについてはやや手抜きが散見される。


EP盤仕様
IMG_0065
右から、シングルジャケット、オリジナルスリーブケース(柄)、ボックス用スリーブケース(白)、ジャケットカバー(透明)。

まず最初に目についたのがオリジナルスリーブケースではなく、白いケースの方にレコードが収納されていたこと。

スリーブケースも復刻の対象であるという意味だろう。
また、このボックスに収納して保管することを考えると、これで1枚の厚みが増すので重ねた際にレコード同士が干渉しにくくなり、ジャケットの保全効果も期待できそうだ。
高価なボックスなので少しでもプレミアム感を出したいという意向もあったのだろう。

ジャケットの色味。
IMG_0070
左:復刻盤、右:オリジナル

オリジナルと比較すると肌の色が復刻盤のほうがやや赤みを帯びているように見える。
全体にボケ感はないが、復刻盤は背景がややザラついた感じがある。
オレが所有するオリジナルは40年前に発売されたものなので、色褪せや焼けが多少あることを考慮しても状態はいいほうだ。
全てを細かく見比べたわけではないが、オリジナルと全く区別がつかないというほどではない。
復刻盤のクオリティはがんばったほうで、許容範囲である。

さらに細部を見ると違う部分は当然だが品番の部分。
価格表示なども含め、そこまでオリジナルに忠実にはできない。
ここまでオリジナルと同じにすると、当然中古市場が混乱するからだ。
IMG_0071

スリーブケースはオリジナルよりも濃いめ。
(オリジナルが色褪せただけかもしれないが)
IMG_0072
左:オリジナル、右:復刻盤

デザインは規則性があり、一部シンボルが変更されている。
品番同様、現在存在しない旧シンボルは使えないということだ。

透明なレコードカバーはEPサイズCDボックス復刻の時と同様、ボトム溶着部(スカート)がない高級タイプ。

サイドシールがカットされた省スペースで保管できるカバーだ。
しかし今回はカバーの厚みが若干薄いものを使っているようだ。
枚数がかさむので厚くなりすぎないようにということか?

センターラベルを見ると、復刻盤のラベルが小さい。
オリジナル9cm、復刻版8.3cmとやはり復刻版はやや小ぶりだ。
IMG_0073
左:オリジナル、右:復刻盤

そのせいもあってか、復刻版の文字がオリジナルより全体に小さい。
フォントも違うようだ。

そしてもっとも衝撃的だったのが音溝の刻み方だ。
IMG_0074
左:オリジナル、右:復刻盤

比較すると違いは明白。
オリジナルは音溝を外周から内周にかけて記録面を無駄なく使用しているのに対し、復刻盤は外周に寄せて内周の余白が多い。
全ての盤を確認したわけではないが、2,3枚を確認する限り写真のような外周寄りのカッティングのようだ。
これは確実に音に違いが生まれることだろう。

角速度一定で回転するレコードプレーヤーは内周へ行くほど1秒あたりに記録される溝の長さが外周よりも短くなるため、音質は悪くなっていく。
従って理論的に外周寄りのほうが音がよい。

復刻盤は曲の始まりから終わりまでを音質の変化(劣化)を最小限に抑えるカッティングをやっているということになるんだろうか。

ここで一般的に言われるレコードが外周から内周に向かうに従い、どのような音質の変化があるのかを挙げておこう。
1.高低音が出にくくなる
2.音量が小さくなる
3.音が歪みやすくなる

これらの変化を最小限に抑えることもカッティングのテクニックである。

となると外周寄りの復刻盤の方がより高音質で記録できているのでは?となる。

しかし、このカッティングはメリットばかりとも言い難い部分もある。
復刻盤は外周よりに詰めた録音のため、隣の音溝との間隔がオリジナルより狭い。
音溝の間隔を狭くするということは振幅も小さくなるということなので大きい音が入れづらい。
よって録音レベル(音圧)が低く、振幅を必要とする低音もやや出ない音になるということだ。
録音レベルが低いとアナログの世界ではノイズの問題も出てくる。
このようにメリットばかりではないが、カッティングエンジニアの腕次第ではオリジナル以上の高音質も夢ではない。

とにかく、音はまだ聴いてないがこの音溝を眺めていて思うのは、復刻盤の音は曲全体で音質の変化が少ないが、迫力にはやや欠ける音ではないかと思っている。

(あくまで予想)

音質までオリジナルに寄せるのはレコードでは難しい。
もちろんオリジナルのラッカー盤が残っていればコピーは作れるがないだろうし、最新のカッティングの音も興味がある。
そのうち音質比較もやるが非常に楽しみだ。


12インチシングル仕様

IMG_0067

オリジナルに非常に忠実である。
シール帯も再現しているが、オリジナルはシュリンクに貼られていたのが、ここではジャケットカバーに直接貼られている。
シュリンクは薄く破れやすいのでオレは好まない。
これに関しては歓迎すべき変更点だ。
内袋は通常のビニールタイプでなく、紙製となった。
これは2018年のLP復刻時に使用されたものと同様のものだ。
高級感がでてとてもいいし、レコード自体にも優しい内袋だ。

カセット仕様
IMG_0068

開封してないので中まで確認できてないが、外から見る限りオリジナルに忠実だ。
カセットハーフの色は同じ白だが、当時のものとは少しだけ形状が違う部分はある。
(ほぼ同じだが)
IMG_0069


次に過去のオリジナル盤記事の内容に沿って、その再現性を細かく見ていく。

スローモーション
スローモーションにはプロモ盤として別ジャケット(右)が存在した。
IMG_0076

本ボックスではそれぞれ独立したジャケットが作られているのが素晴らしい。

ちなみにCDボックス(下写真)の時は2枚見開きだったので今回は完璧。
DSC01517


1/2の神話
オリジナルはセカンドプレスで別ジャケットが存在した。
IMG_0077

これもそれぞれ独立したものだ。

やはりCDボックス(下写真)では2枚つづりだったので今回は気合いが違う。
DSC01518


北ウイング
オリジナルは初回盤のみ三つ折りジャケット、さらに両A面特別盤のリフレインバージョンがある。

ボックスでは三つ折りを再現し、
IMG_0079

リフレインバージョンも別に付属している。
IMG_0078
左:初回盤のみの三つ折りジャケット、右:両A面リフレインバージョン

リフレインバージョンはリフレインのジャケットが見開きでついた。
IMG_0080

完璧だ。


飾りじゃないのよ涙は
オリジナルは三つ折りジャケットで紙質が他シングルとは違う質感だ。

本ボックスでは紙質も含め見事再現。
IMG_0082

紙質はツルツルしてない独特の質感を持つ。
IMG_0081


赤い鳥逃げた
オリジナルは12インチシングルでこれも2つのジャケットが存在している。
IMG_0075

本ボックスでも2通りのジャケットを再現した。
ちなみにシール帯(丸ステッカー)はビニールカバーに張り付けられて1セットのみ付属。
どちらにも使えるのが素晴らしい。

CDボックスはシングルサイズでの再現だったので論外だった。


SAND BEIGE-砂漠へ-
オリジナルは和紙のような特別な紙を使用していた。
IMG_0083

本ボックスもオリジナルと同等の質感で忠実に再現されている。
IMG_0084


DESIRE-情熱-
ジャケット裏の歌詞面でオリジナルは違いがあった。
初期プレスはタイトルの「DESIRE」のみ。
後期プレスからプライベートCMのタイアップ記述とタイトル横に「ー情熱ー」が追加された。

本ボックスではタイアップと情熱有りの後期プレスの方を再現している。
さすがにこんな細かい部分までは求めないので問題ない。
IMG_0085


ジャケットの折り返し
オリジナルではバーコード隠しを目的とした明菜考案のバーコード部分折り返しがある。
対象はジプシー・クイーン、Fin、
TANGO NOIR、BLONDE、難破船、TATOO、LIARの7枚。
(ただし「I MISSED ”THE SHOCK”」はもともとなかった)
IMG_0086
本ボックスでもそれは再現されている。

ただバーコード部分はCDボックスと同様、読めないフェイクバーコードだ。
IMG_0087


ノンフィクション エクスタシー
オリジナルは公式ではカセット発売のみ。
プロモ盤としてシングルレコードも存在した。
ここはこのボックスの売りでもあるオリジナルカセットに加え、プロモ盤もレコードで復刻したことがすごいところ。
IMG_0088
このプロモ盤は中古市場でも希少で高値で取引されるレア盤。

当時のプロモ盤(本物)が右、CDボックス盤(左)でも再現されているが忠実ではない。
DSC01528

今回のボックスはオリジナルに忠実なのだ。
CDボックスで一度やっていたので今回も使いまわすだろうと予想していたが、いい意味で裏切られたのがうれしいところ。


AL-MAUJ
オリジナルは明菜唯一のハードジャケットを採用したシングルだった。
IMG_0089

CDボックスではフェイクだったのに対し、今回は完璧に再現されたのが嬉しい。
レコードは他同様白いスリーブケースに収納され、ビニール製内袋も付属するという細かさ。
IMG_0090

ちなみにCDボックスがフェイクだったというのはこういうこと。
DSC01529
CDを収納すると裏面が見えなくなるというおそまつさ。


初EP化分
オリジナルはシングルCDとカセットでしか発売されなかった「
Dear Friend」「水に挿した花」「二人静 -「天河伝説殺人事件」より-」の3タイトル。
このボックスの目玉である初のEPレコード化分である。
CDボックスの記事でも触れたが、レコードサイズでのジャケットデザインがどうなるかがポイントだった。

ただ、レコードサイズジャケットはCDボックスですでに作られていた。

今回のボックスは、
IMG_0091
IMG_0093
IMG_0094

予想通りCDボックスと全く同じジャケットを使いまわしている。

ディア・フレンドは三つ折り。
IMG_0096

水に挿した花は広げるとカットされた部分が現れ、CDシングルと同じジャケットになる。
IMG_0092

二人静もCDボックスを踏襲した。
IMG_0095

もともと存在しないものなのでデザインに文句はない。
しかし、CDボックスで気になっていた引き延ばしによる写真のボケ感や色味の違いは修正されることはなかった。


さて、検証の結果この復刻盤は細かいことを言わなければ十分満足できるレベルにあると思う。

非常にでかいボックスであるが
ひとつにまとまっているし、これでワーナー期がコンプリートできると思えば言うことない。

さすがワーナーの復刻だ。

オリジナルをすでに持っていない往年のファンや新規ファンにも申し分ないボックスとなった。

結論をいうと、これからあえてオリジナルをコレクションしなおす必要性を感じないレベルだ。
ただ音の違いは間違いなくあると思うので当時の音で聴きたいのならオリジナルを持つ意義は大きい。
これを機にオリジナルのレア盤の価格変動も気になるところだ。

現状、明菜の40周年記念企画はワーナーミュージックは積極的であるが、なぜか現所属のユニバーサルは今のところ動きがない。
ガウスエンタテイメント(現徳間ジャパン)期はリリース数が少ないとはいえ、初アナログ化等できることはありそうだが今後の動きに注視していくしかない。

それはともかく近年の明菜関連の新譜は復刻やリマスターばかりだ。
往年のファンとしては焼き直しばかりで辟易としている。

せめてお蔵入りとなった音源や映像などを蔵出しするとかできないものか。

まだ世に出ていない音源は確実に存在しているはずだ。

中森明菜 シングルCD(MCAビクター期)

明菜のヒット曲で誰もが知るシングル曲のほとんどはワーナー・パイオニア期のものだろう。

実際、さまざまなランキングに挙がる曲はワーナー期のものが多い。

しかし明菜の現在に至るまでのキャリアを考えればそのワーナー期も一部にすぎない。

本当の明菜を理解するためにはワーナー期以外にもしっかりと目を向けたいところだ。

そこで今回はそのワーナー・パイオニアの次の移籍先であるMCAビクター期のシングルについて見ていく。
IMG_0045

MCAビクターはメジャーレーベルに比べれば聞きなれない名だが、その名の通りビクター系のレコード会社となる。
(日本ビクターが出資しているが本家とはまた別)

ここら辺の経緯は買収や統合を繰り返している業界だけに非常に複雑。
ざっくりでも知っておいたほうがよさそうなのでざっくりまとめてみる。

MCAはミュージック・コーポレーション・オブ・アメリカの略でアメリカのレコード会社。
そのMCAレコードの日本での販売を日本ビクターが担っていた。
その後松下電器産業がMCAを買収したことで、松下とビクターの共同出資会社として誕生したのがMCAビクターというわけだ。
さらにその後、松下がシーグラムへ売却し、その売却先が社名をユニバーサルミュージックに変更したため、かつてのMCAビクターは完全に現代のユニバーサルミュージックの傘下に入ったということになる。
よって明菜のMCAビクター期の復刻盤を出す権利はユニバーサルミュージックにあるのだ。

明菜のレコード会社の変遷は以下の通り。

1.ワーナー・パイオニア
2.MCAビクター
3.ガウスエンターテイメント
4.@ease
5.ユニバーサルミュージック

今回は2の時期にリリースされたシングル分が対象となる。

先述したように2021年現在では2・4・5が統合やらでユニバーサルが権利を持っているため、1・3以外ユニバーサルが新たにリマスター盤等をリリースすることができるということになる。
実際、すでにユニバーサルは2と5の時期にリリースされたCDシングルを合わせて、初レコード化による再発※をやっている。
※全世界999セット限定 アナログセット(2016年)を指す

そんな経緯がある当時のMCAビクター期のCDシングルだが、オレはかなり重要な時期であると考える。
ワーナーから移籍後、MCAビクターから第一弾シングルが出るまでは前作から約2年のブランクがあった。
とはいえ、明菜が不動の人気を誇ったワーナー期の勢いはまだ衰えてはいない。

つまりワーナー期からの明菜人気にあやかり、かつての明菜っぽさもまだ残っていたからだ。
そしてワーナー期とまではいかなくても多くに知られない名曲が数多く存在するのも事実だ。

しかし、ワーナー期をひと区切りとして一定数のファンが明菜から離れていったことも事実。
明菜に限らず、アイドルの世界というのはそういうものだ。
アイドルの性質上、活動空白期間はファン離れが加速する。
(かくいうオレもその一人であった)
今となっては新譜を買わなくともせめて明菜の動向だけは注視すべきだったと後悔している。

リアルタイムで聴くのと後追いで聴くのとでは印象が異なるからだ。
実際惜しいと思うほどMCAビクター期の楽曲も素晴らしいものだった。
その時代時代の音楽は世相を反映する鏡でもあり、曲を本当に理解するにはその時代背景を体感しつつ聴くことは重要なのだ。

今では全期の明菜の楽曲を把握していると自負するオレであるが、その上で俯瞰してみてもやはりMCAビクター期の楽曲が素晴らしかったということが見えてくる。


それでは細かく見ていこう。

明菜のMCAビクター期のシングルは約5年間(1993~1997年)で全8枚、すべて8cmシングルCDで発売された。
(Everlasting Loveのみカセット発売も有り)

時代はすでにレコードが終焉し、CD時代となった頃である。
IMG_0047

当然のことながら全て初期CDシングルの縦長パッケージである。
しかし、すべて縦長ジャケットデザインなのでCDシングル熟成期であることがわかる。

シングルディスコグラフィ(リリース順)
1.Everlasting Love/NOT CRAZY TO ME
2.片思い/愛撫
3.夜のどこかで~night shift~
4.月華
5.原始、女は太陽だった
6.Tokyo Rose
7.MOONLIGHT SHADOW -月に吠えろ
8.APPETITE

ラインナップを見ると明菜の全期を知っていれば名曲だらけだとわかるはずだ。

1と2についてはジャケットの記載通り2曲のタイトルを入れている。
これは両A面という意味である。

両A面とは
そもそもレコード世代でなければA面B面の概念を理解できないと思う。
レコードは表A面、裏B面としてどちらがメイン曲なのかを区別する。
基本的にA面がメイン曲でB面はおまけ曲という解釈でも問題ない。

たとえばB面曲がゆうせん放送等でヒットするなどしてA面として再び発売し直すことはかつてはよくあった。
その結果両A面扱いとなったシングルは実質B面がないのだ。
(物理的にはあるが)
よって両A面という考えはレコードの時代に生まれたものである。

CD時代になるとCDにはそもそもA面B面などないので、通常は1曲目がA面で2曲目がB面扱いという捉え方となる。
CDシングルではレコードB面にあたる曲はジャケットの隅に小さくC/W(カップリング・ウィズ)としてメイン曲より小さく曲名を記載するのでここでも確認できる。
CDシングルはA面曲、B面曲、両A面曲かの区別はジャケットのタイトル記載方法や曲順によりそれを判断するということだ。

従って、
1.Everlasting Love/NOT CRAZY TO ME
2.片思い/愛撫
はC/W(B面)扱いの曲がないので両A面シングルということになる。
つまりどちらもメイン曲。
個人的には作詞・作曲家の力関係とかもあるんだろうと思っている。
作り手の思いや大人の事情も絡む、どちらを立てるというわけでもない「両A面」も現代ではあまり聞くことがなくなった言葉である。

CDシングルはオリジナルのカラオケが入っていることもレコードでできなかった強みと言える。
(それまではカラオケ収録はカセットテープのみの特権であった)
これらのシングルでなければカラオケは聴けないことがほとんどなので、CDならあえてシングル盤も所有する意義は大きい。
サブスク世代はサブスクだけでは聴けない音源もあることを認識しておく必要がある。

それでは各シングルを細かく見ていこう。

Everlasting Love/NOT CRAZY TO ME
IMG_0029

発売日:1993/5/21
品番:MVDD-10001
C/W:両A面

1曲目は「Everlasting Love」。
ミュージシャンの大貫妙子による作詞、坂本龍一の作曲と豪華な顔ぶれ。
バラード調の美しい曲で坂本龍一が作曲だがさすが教授、幅の広さを感じる。
個人的にはバラードを好まないので移籍後第一弾シングルの1曲目がバラードなのは弱いかなと思っている。
反面、明菜の次なるステージの予感も感じさせるものとなった。
IMG_0030

2曲目が「NOT CRAZY TO ME」。
ミディアムテンポのダンスミュージックだ。
作詞はNOKKO(レベッカ)でこちらも作曲は坂本龍一。
この時すでに惜しまれつつもレベッカを解散していたNOKKOだが、その勢いのままソロ活動でも目覚しく活躍していた。
レベッカ時代の楽曲の大半をNOKKOが作詞していたが、彼女の成長と余裕を感じさせる大人の詞といったところだ。
両A面とはいえ、本来のA面があるとすれば断然オレはこっちを推す。
明菜節も多少聴けるしメロディも洗練されていてかっこいい。
ちなみにこの曲は同年発売のオリジナルアルバム「UNBALANCE+BALANCE」の先行シングル扱いだ。
先行シングル扱いと言っているのは、アルバムがこの4か月後に発売されたからだ。
期間が空きすぎているところを見ると、アルバム曲の頭数合わせにこれを収録したのではと勘繰っている。
なぜなら「UNBALANCE+BALANCE」は「NOT CRAZY TO ME」がなければ全8曲しかないからだ。
同アルバムにはアレンジが異なるLP Editが収録されたが、明菜本人も言う通りシングルバージョンとの違いが微妙すぎる。
個人的にはシングルCDでカラオケが聴けるのは嬉しいところ。
BGMとして流していても違和感がない気持ちよさがある。

なお、本作が明菜最後のアナログリリースがあったシングルであり、カセットでも発売されたので一緒に載せておこう。

Everlasting Love/NOT CRAZY TO ME(カセット)
IMG_0048

発売日:1993/5/21
品番:MVSD-10001
IMG_0049
カセットなのでCDと全く同じ曲構成だ。

明菜最後のシングルレコード発売となったのはLIARだ。
以降、ワーナーからは3作がシングルをカセットで発売。
そしてこのカセットを最後に明菜のアナログ時代は終わったのである。
そういう歴史的に重要な意味を持つのがこのシングルカセットなのだ。
ポップス分野においてカセットというメディアは当時それほど重要視されてはいなかった。
(カセットが必須なのは演歌だった)
聖子は1995年までカセットを発売したが、どこで見切りをつけるかはレコード会社の方針によりけりだったのだ。

IMG_0051


片想い/愛撫
IMG_0031

発売日:1994/3/24
品番:MVDD-10004
C/W:両A面

2作続けての両A面シングル。
それだけシングルカットしたい候補曲が多かったともとれる。
1曲目は「片想い」。
普通に考えれば1曲目がA面扱いなのだろうと思うと、前作同様1曲目にバラードを持ってきているのが興味深い。
しかもこれはオリジナル曲でなくカバーである。
ではなぜカバー曲をシングルにしたのか、理由は簡単だ。
これは今ではお馴染みとなった明菜のカバーアルバムである歌姫シリーズ第一弾からのシングルカットという意味であり、プロモーションの一環だからだ。
(アルバム、シングル共に同日発売)
ちなみにアルバム「歌姫」に収録された「片想い」はアルバムバージョンで多少アレンジが異なる。

思えば明菜のカバーシリーズはここから始まったわけだ。
オリジナルは槇みちるのシングル「鈴の音がきこえる」(1969年)のB面からとのことだが全く知らない歌手だった。
(その後中尾ミエがカバーしたことで有名になったらしい)

さて、カバー曲については当世代・別世代の間でよく論争が巻き起こるものだ。
オリジナルを知るものにしてみればオリジナルがいいという意見が多く、カバーを受け入れない。
別世代がカバーがいいと言えばオリジナルを聴いたのか?と当世代が目くじらを立てる。
こんな世代違いのバトルをYoutubeのコメント欄でたまにみかける。

「片想い」についてはオレは明菜により初めて知った曲であり、別世代ということになる。
カバーと知ってオリジナルを聴くきっかけにもなり、自らの音楽の幅が広がることは単純に楽しい。
そもそもカバーしたアーティストはオリジナルを超えるつもりでカバーしているわけではない。
自分が好きだからカバーするわけであり、そこにはまずトリビュートの精神があるわけだ。
にもかかわらず、それを外野の我々がどっちがいいだの言い争うのは非常に滑稽だ。
我々聴き手はカバーのおかげで過去の名曲を聴くきっかけを得ているのだ。
カバーが好きなら大いに結構。
ただし、オリジナルをトリビュートする気持ちは聴き手であるものも絶対に忘れてはならないと思うのだ。
IMG_0032
裏面は同日発売のカバーアルバム「歌姫」の裏ジャケットと同様、着物を着た明菜が鮮やか。

そして2曲目が「愛撫」。
作詞は明菜ではとても珍しい松本隆。
歌詞を聴かないオレでも歌詞カードを読み返したほどの秀逸な詞。
詞がかっこいいと初めて思った曲だ。
イントロから数秒聴けば小室哲哉の曲だとすぐにわかる。
小室と明菜は合わないという声もあるが、クセのある小室の曲を自分のものにしているのはさすがとしか言えない。
これはオリジナルアルバム「UNBALANCE+BALANCE」からの第二弾シングルでもある。
このアルバムの中では最も人気が高いであろう「愛撫」はもともと移籍後第一弾シングルの候補曲だったというエピソードからもここで陽の目を見たのも納得だ。
打ち込みの音があまり好きでない明菜はレコーディング時、せめて低音を効かせてくれと注文したらしいが、その通り低音が力強いサウンドで、平面的な音場でオーディオ的に退屈になりがちな打ち込み曲には効果的かもしれない。
明菜のマイシングルベスト10に入るほど好きな曲。
カラオケも必聴だ。


夜のどこかで~night shift~
IMG_0033

発売日:1994/9/2
品番:MVDD-10007
C/W:Rose Bud

ジャケットでまず目を引くのがテレビに映った櫻井よしこ。
これは当時の日テレ深夜ニュース番組「きょうの出来事」のエンディングテーマに使用されたためだ。
(櫻井さんが好きでよく見ていた)
明菜も夜のニュース番組のテーマ曲をどう歌えばいいのか悩んだらしい。
その結果がファルセットということになるのか。
言われてみれば終始ファルセットで歌唱しているようでもある。
しかし、明菜はファルセットをそう思わせないほど普通に使うので、もうこれも地声だといってもいいのでは。
「警部補 古畑任三郎」の記念すべき1stシーズン第一話のゲスト主演は明菜だったが、ここでの明菜の役はコミック作家 小石川ちなみ(ちなみは漫画家と言うと怒る)で全てのセリフがファルセットだった。
そういうことができるのが明菜なのだ。
「素顔のままで」では完全地声の明菜が見られるので比較すると面白い。
こんな驚くべきことを普通にやってのける役者もそういない。
(のだめカンタービレの上野樹里の声もすごいが・・・)

「夜のどこかで~night shift~」はニュース番組というよりも、むしろサスペンス系のドラマに合いそうな雰囲気。
シングル「二人静」や「帰省」が好きな人なららこの曲もきっと気に入るだろう。
前から思っていたのが明菜はこの雰囲気の曲が割と多いので、いつか「サスペンスドラマに使われそうな曲ベスト」でも作ってみたい。
共通するのはスロー~ミディアムテンポなのにどこかかっこいい部分があるということだ。
作曲したのは後藤次利。
やはり天才作曲家だが明るい曲を作る人のイメージだったので少々驚いた。
ミディアムテンポであるが、ストリングスとエレキギターで音に深みを持たせた傑作だ。

IMG_0034
裏面はカップリング曲側のイメージで撮影されているようだ。

カップリング「Rose Bud」もフジテレビトーク番組「新伍&伸介のあぶない話」のエンディングテーマでこのシングルは完全タイアップ曲構成ということになる。
(この番組は見た記憶がない)
明菜の多くの曲のなかでも目立たない部類に入るだろうが、アップテンポでメロディも抜群にいい。
明菜ビブラートも聴けるので本領発揮の明菜らしさが感じられる曲だ。
自分でB面ベストを作るなら確実に入れたくなる良曲だ。


月華
IMG_0035

発売日:1994/10/5
品番:MVDD-10009
C/W:BLUE LACE

「月華」は前作から2か月連続の第二弾シングル。
タイトル通り和風テイストなアレンジがアクセントのミディアムテンポなバラード曲。
明菜は全体に地声で歌えるキーなのは久しぶり、とコメントしているがどんだけファルセット使ってたんだということだ。
これも「二人静」「帰省」系だと勝手に分類しているが、明菜のこの系統の曲は本当に好きだ。
明菜の憂いのあるボーカルがおそらくこのような曲を呼び寄せるのだろうし、実際ぴったりだ。
クセになる泣きメロとでもいうのか、やっぱりこの系統のベストは作ってみたい。

IMG_0036
DESIREを思わせる奇抜なファッションの裏ジャケット。

カップリング「BLUE LACE」はアコースティックな響きが美しいバラード調。
オーディオチェック用に使いたくなるような好録音だが、アルバム「UNBALANCE+BALANCE+6」のボーナス曲として収録のリマスター音源のほうがより重厚な音だ。
バラード嫌いなオレだが、なぜか明菜のバラードは好きなものが多い。
(聖子も好きなバラード曲はたくさんあるが、あまりに近年量産しているのでちょっと食傷気味なところがある)


原始、女は太陽だった
IMG_0037

発売日:1995/6/21
品番:MVDD-10014
C/W:綺麗

「原始、女は太陽だった」はラテンの雰囲気を纏うアップテンポ曲。
それにしてもインパクトのあるタイトルだ。
ラテン系と言えば「ミ・アモーレ」を思い出すが、あそこまでラテンではなく、ほどよく洗練されたラテン系といったところ。
実はこの曲、Aメロ・Bメロ部分でボーカルが微妙に多重録音されている。
最初は追っかけエコーかと思ったのだが歌詞とは違う声が入っている部分もある。
(00:49辺りがわかりやすい)
カラオケで確認したがコーラスはサビの部分にしか入っていなかった。
このさりげない小細工が実に気持ちいい。
現代の曲はボーカルにエコーをあまりかけないデッドな音が多いので、この曲のボーカルを聴くと不思議な感覚を覚えることだろう。
このようなエフェクトをかけたボーカルは多くないので貴重だ。
オリジナルアルバム「la alteracion」ではアルバムバージョンを聴くことができる。
アルバムバージョンはシングルから大きくアレンジを変更しているわけではない。
ただし、シングルのようなボーカルのエフェクトが変更されていることはわかる。
よって断然オリジナルのシングルバージョンが圧勝で好きだ。
IMG_0038
この頃からだろうか、明菜のジャケット写真にアイドル然とした雰囲気がなくなってくる。
ピントをぼかすとか、顔を一部しか写さないとか、よりアーティスティックになったと言えば聞こえはいいが、手抜き感を感じるのはオレだけだろうか。

カップリング曲「綺麗」は明菜としてはそう多くないサビ始まり曲でインパクト大。
オールドJ-POPなメロディだが洗練されたアレンジで古臭さを感じさせない良曲となった。
とはいえ、シングルB面を脱するほどではないとも思う。


Tokyo Rose
IMG_0039

発売日:1995/11/1
品番:MVDD-10017
C/W:優しい関係

このシングルはジャケットからもわかるように「中森明菜」ではなく「Akina」名義でのシングルだ。
言われなきゃスルーしてしまいそうでそれで何が違うのかと思うが、それも含めてのキャラクタープロデュースといったところだろう。
(聖子の「SEIKO」名義とはまた意味が違う)

「ノンフィクション エクスタシー」も同様で架空のキャラクターを作り出したのを思い出す。
「Tokyo Rose」は明菜には珍しいロカビリー曲で「TATTOO」的な雰囲気もある。
ここではロカビリー歌手の「AKINA」という演出なのだろう。
そもそもロカビリーを狙ってロカビリーを手掛けるメンバーを迎えているほどなので本格的だ。
ノリノリなバック演奏も聴きどころのひとつ。

IMG_0040

カップリング「優しい関係」も同じくロカビリー。
このシングル自体がそういうコンセプトというわけだ。
この曲では珍しく曲中に明菜のセリフが入るのが聴きどころ。


MOONLIGHT SHADOW -月に吠えろ
IMG_0041

発売日:1996/8/7
品番:MVDD-10024
C/W:なし

これも小室哲哉の作曲。
期間はかなりあいているがオリジナルアルバム「SHAKER」の先行シングル曲。
オレはこれを初めて聴いた時、小室っぽいなとは思っても当初はそれほどいい曲とは思わなかった。
しかし、数回聴いてすぐにドはまりした経緯がある。
聴けば聴くほどクセになるのだ。
同じく小室の「愛撫」よりも打ち込み独特の閉塞感がいくらか軽減している。
ボーカルのエコーとドラムのキレがあるため、そう聴かせるのかもしれない。
作詞はさすがのTHE ALFEE 高見沢俊彦だ。
ちなみにオレは高見沢さんと誕生日が同じ(年は違うが)で昔から勝手に親近感を持っている。
とにかく、この二人が組めばいい曲ができて当然。
IMG_0042

なお、本作はカップリング曲はなく、同曲のクラブミックスとカラオケの3曲で構成される単曲シングルだ。
(そもそもシングルは2曲でなければいけないというルールはないと思うが、価格は1000円で他と同じシングル価格である)
好きな曲なのでクラブミックスには大いに期待したが、正直このミックスは残念としか言いようがない。
曲の持ち味のグルーブ感が失われ、ただ間延びしただけでオリジナルより大人しいとさえ思う。
この翌年のオリジナルアルバム「SHAKER」ではこれのアルバムミックスが収録されたが3曲を比べるとアルバムバージョンが断トツでよい。
前奏が30秒ほど追加されたのとボーカルとコーラスのエコーが深くなり、より打ち込み感が緩和されて聴きやすくなっているからだ。
デッドな音のシングルに対し、ライブな音のアルバムバージョン、間延びしたクラブミックスといったところか。
シングルマイベスト10に入れたい良曲が期間の短いMCAビクター期から2曲も入ってくるとは、小室好きにもほどがある。
そもそも小室のことはTMネットワーク時代から大好きで、小室ファミリーの曲と共に青春を過ごしたオレとしては小室愛が半端ではないのだ。


APPETITE
IMG_0043

発売日:1997/2/21
品番:MVDD-10027
C/W:SWEET SUSPICION

「APPETITE」はMCAビクターで最後にリリースされたシングル。
やはりオリジナルアルバム「SHAKER」の先行シングルとなる。
終始ジャズ風アレンジのウッドベースの重厚な音が印象的だ。
しかしこの曲の特筆すべき点はエコーエフェクトの切替につきる。
1コーラス目はイントロ演奏こそリバーブがかかるがAメロのボーカルはデッド、サビはボーカルにエコーをかけるという変則的な効果をつけている。
さらに2コーラス目のAメロはボーカルはこもらせた上でのデッドなボーカル、サビで再びエコーをかけ、後半はずっとエコー。
一体どうなってる?
こんな構成はかなり珍しい。
歌番組では再現不可能だろう。
明菜のシングルでも5本の指に入る異色な曲となった。

アルバムには「APPETITE ~HORROR PLANTS BENJAMIN」とサブタイトル付きでアルバムバージョンとして収録された。
もともとはサブタイトルの方が最初のタイトルだったらしい。
イントロが多少違うことを除けば大きな違いはないが、ボーカルのエフェクトにシングルのような変化はつけず一定なのが特徴だ。

IMG_0044
シングル「TATTOO」のジャケット歌詞面の写真を思わせるアングル。
明菜のスタイルの良さを押し出した写真はあまり多くはないので貴重。

カップリング「SWEET SUSPICION」も多少変則さをにおわせる曲だ。
こっちはAメロBメロと爽やかなフレンチポップなメロディとアレンジを見せるがサビに入ると竹内まりや的なニューミュージックな雰囲気になる。

このシングルは全体でかなりクセのある曲作りをしているのが面白い。


さて、MCAビクター期のシングルを振り返ってみて思うのは「明菜らしさ」と「新しい明菜」が混在した過渡期のようなものだったと感じる。
ワーナー期においても明菜は自己プロデュースしていたが、より明菜の強い意思のようなものを感じる。
自分の歌いたい歌・表現など大手レーベルでは意見出来なかったこともここではやりやすかったのかもしれない。
これまで以上に実験的な音作りをしており、その振り幅の広さにも驚かされる。
シングル・アルバム含め、MCAビクター期の楽曲は明菜のキャリア中でもかなりの高水準だと思っている。

しかしそれは必ずしもファンが求める明菜とは違っていたのかもしれない。

だからこそワーナー期の明菜だけでいいという意見もうなずける。

人間はいくつになっても成長しつづけるものだ。

思い通りに成長してくれなかったからとファンをやめるのも自由。

でもやっぱり明菜が好きなんだとなれば、成長の過程を全て見返してみるとまた何か別の発見があるかもしれない。

それは今からでも決して遅くはないと思うのだ。
アクセスカウンター
  • 今日:
  • 累計:

読者登録
LINE読者登録QRコード
QRコード
QRコード
  • ライブドアブログ