つい最近まで遠い思い出の中にあったオレには大切なアニメだ。
サントラ復刻の報を聞き、買わずにはいられなかったのだ。
「きまぐれ オレンジ☆ロード」は1980年代に絶大な人気を誇った週間少年ジャンプに連載された漫画だ。
その後、アニメ化されたがその劇中歌のサントラは複数発売されており、今回は当時のLP発売分のみの復刻となる。
オレは当時、週間少年ジャンプで「きまぐれ オレンジ☆ロード」の存在を知り、毎週楽しみに読んでいた。
同時期には「北斗の拳」も連載されており、この二つが一番の楽しみだった。
やがて単行本が発売されるとそれもすべて揃えた。
(北斗の拳は友人から借りた)
そして待望のアニメ化。
(1987年4月6日~1988年3月7日)
アニメが放送されるやいなや、その人気はそれまで原作を知らなかった人々にまで及んだ。
オレがアニメ化に狂喜したのは言うまでもない。
アニメ版のストーリーは簡単にいうと、超能力を持つ主人公の春日恭介が転校先で出会った鮎川まどか、檜山ひかると織りなす三角関係どたばたラブコメディだ。
原作とは異なる設定もあるが基本は原作に準じている。
後の劇場版でアニメシリーズのその後を描き、完結を迎えるがシリアス路線に変更する。
(三角関係に決着をつけるんだからコメディで描けないのは当然だが)
左から鮎川まどか、春日恭介、檜山ひかる
そもそもの話、ラブコメが当時のジャンプに連載されるのも異例と思うが、そのおかげで当時の男子の間では大きな話題となったのだ。
これの何がそんなによかったのか?
当時を知る者なら誰もが口をそろえて言うだろうことは「鮎川まどかに恋をした」だろう。
鮎川まどか(声:鶴ひろみ)
それほどまでに鮎川は魅力的なキャラクターだったのだ。
2次元の世界の女性に恋するなんてことはこれが最初で最後だった。
おそらくそんな男子は当時ごろごろいたんだろう。
絵心の全くないオレが死ぬほど練習して、鮎川とひかるの絵だけは書けるようになったのは今も忘れない。
とにかくオレの青春のアニメと言えば「きまぐれ オレンジ☆ロード」なのだ。
(「めぞん一刻」もよかったが主人公が浪人生なので年代的な共感という意味ではオレンジロードが上だった)
さて、サントラが複数リリースされたというからには劇中歌が多かったということになる。
アニメ「きまぐれ オレンジ☆ロード」は音楽と切っても切れない関係なのだ。
アニメ化によりそれまで白黒だった世界は鮮やかに彩られ、音楽によりその魅力は倍増された。
このアニメ化に際し特筆すべき点はアニメで使われた楽曲はオープニング(以後OP)とエンディング(以後ED)曲に普通のアーティストを起用したということだろう。
それがどんな感じだったのか振り返ってみよう。。
このアニメ自体にはシーズンはなく、第1~48話は連続して放送されている。
よって以下1期~3期と分けているのはあくまでOPとED曲が変更された節目という意味だ。
第1期(第1話~第19話)
コメディ要素の強いアニメだがそれだけでヒットしたのではないことはこのエンディングが物語る。
全アニメを通しても歴史に残る傑作中の傑作エンディングではないだろうか。
絵は単調であるが中原めいこの名曲中の名曲がそれを引き立てる。
楽曲の良さもさることながら、アニメーションも今見ればアイデアに溢れ画期的だと思う。
リアルタイムで見ていた時は気にも止めなかったがこれはセンスの塊だ。
オレンジロードの世界を凝縮したような楽し気なオープニング、オレンジロードの切ない部分を表現したエンディングは物語を一層盛り上げた。
それまでのアニメと言えばアニメ用の歌が作られ、アニソン歌手が歌うというものがほぼ慣例だった。
だからアニメという枠を超えて、アーティストの曲をアニメ主題歌に使うことで未知のアーティストを知り、好きなアーティストがアニメ主題歌を歌っているということでアニメを知るという図式がこの頃のアニメでできたのだ。
(そういう意味では「めぞん一刻」「シティハンター」なども同様だ)
現代アニメではそんなことも大して珍しいことではないが、その礎となった原点アニメがあったということだ。
というわけでサントラの話。
オレは当時アニメを見て、そのオープニング・エンディング曲に使われたアーティストを知り、アーティストそのものの曲を聴くようになった。
ただし、いくらアニメが好きでもサントラを買おうとまでは全く思いもせず、その存在すら知らなかった。
そこにはやはりオーディオマニアとしてのプライドのような、こだわりがあったような気がする。
今で言う「アニオタ」じゃないと自負していたので超えてはならない一線のようなものがあったのだろう。
ただ日本で現代生きるほぼ全世代の人々は少なからず子供時代に親しんだアニメはあると思う。
しかし、漫画・アニメは子供が見るものであり、大の大人はやがてそれらから離れていくものだ。
いつまでもそれにしがみつくのは大人になれないオタクしかいない。
そんな風潮は1990年代まではあったと思う。
(そもそもオタクという言葉は90年代のアニメオタクがルーツなのでは?)
また、サントラでなくてもアーティストのアルバムを聴けば同じこと。
そもそもサントラには余計な曲も多い。
薬師丸ひろ子の映画サントラでそんな経験をしていたものだから、アニメでなくてもサントラには抵抗感があった。
いま思うと、いくらアーティストの歌とはいえ、アニソンであることをあまり大っぴらにしたくない自分がいたのは間違いない。
アニオタとオレは違う。
アニオタを下に見て、ほぼ差別的にアニオタを軽蔑すらしていた時期もある。
しかし近年、日本のアニメ・漫画が世界から注目されるようになるとサブカルチャーとしての地位を不動のものとした。
結局のところ日本人の根底にはアニメ文化が不可欠だったことに気づかされた感じだ。
それを否定することは自分の子供時代を否定するも同じ。
素直に認めて、頭の固い昔の考えを捨てるとすごく楽になった。
いまでは大人だからアニメを見るのはおかしいという偏見はなく、むしろ進んでアニメを見るまでになった。
そして思うことは、やはり日本のサブカルチャーになるまで支えてくれたアニオタたちがいたからこそ現在のアニメの地位が確立されたのだと感謝している。
そんな思いがあったわけで、長い時を経て当時は聴いたこともないサントラを今手にしたのは感慨深い。
(正確には90年代にオレンジロードのCDを1枚だけDATにダビングしたものを今も持っている)
今回復刻されたのは当時LPレコードとして発売されたもののみだ。
では復刻盤全7タイトルをオリジナルの発売日順に見てみよう。
きまぐれ オレンジ☆ロード Sound Color 1
発売日:2021年4月24日(オリジナル:1987年6月21日)
価格:4,180円(税込)(オリジナル2,800円)
品番:UPJY-9157(オリジナル:LB28-5049)
仕様:ターコイズ・ヴィニール、、高田明美描き下ろしB2イラストポスター
帯コピー:レモンよりちょっぴり甘い、オレンジ味を知りたい人に送るシティ派サウンド・トラック!
※封入物の写真撮影は面倒なため全てユニバーサルミュージックストアHPから抜粋
※以降()は歌入りで歌手名を記載
アニメ放送開始からわずか2か月ちょっとで発売された最初のサントラ。
このサントラにはOP(A-1)とED(B-1)の1期分を収録。
各面歌入り(OP・ED)で始まり、間は全てインスト、歌入り(挿入歌)で終わるという構成。
インストはロック、ジャズ、フュージョン、テクノと多彩である。
基本的にアニメシリーズを見ていない人にとっては曲構成に脈絡を感じず、退屈かもしれない。
(見ていてもアルバムとしては微妙だがきまぐれファンとしては及第点だ)
通しでOPに始まりEDに終わると考えるなら、B-1とB-8を入れ替えれば構成としては美しかったかもしれない。
ただ、大して本編で尺が多く使われもしないシーンの音楽をこれだけ本格的に作るのには頭が下がる。
中でもA-6「Walk Struttin’」はフュージョンとして聴けばそれなりに聴けてしまう。
もっとも全てのインストのクオリティが高いので、当時のスタジオミュージシャンのテクニックを堪能するにはもってこいのアルバムだ。
ジャケット・帯・ピクチャーセンターラベルも極力オリジナルを再現している。
また、新たな仕様としてカラーレコードとなり、オリジナルの普通の黒レコードとの差別化がされている。
タイトルごとに色が違うため「きまぐれカラーレコード」と呼んでいるようだ。
オリジナルは所有していないがネットで調べる限り復刻盤でも遜色ない。
先に書いたように、収録曲はアニメを見ていれば知っている曲(ほとんど覚えていないが)であり、主題歌・挿入歌についても元アーティストのアルバム等で聴いているが、サントラ自体を聴くのは今回が初めてだ。
これについてオリジナルも揃えるかは悩んでいるが、やはり当時聴いていないものなのでこの復刻盤があればいいかなとは思っている。
これに限らず、個人的に復刻盤の立ち位置については非常に悩ましい問題だ。
オリジナルを持っていれば不要と割り切れればいいが、現代新品で懐かしいレコードが手に入る魅力は捨てがたい。
明菜の復刻LPの時は音が違うからという言い訳で全て揃えたが、毎度そんなことを言ってたら音源的にはかぶるものがどんどん増えていく。
どこかで線引きしていかなくてはと思うが、考えを整理するにはオレにはもう少し時間が必要なようだ。
こんなことで悩む日が来るとは当時は想像もしていなかった。
きまぐれ オレンジ☆ロード Sound Color 2
発売日:2021年4月24日(オリジナル:1987年10月26日)
価格:4,180円(税込)(オリジナル2,800円)
品番:UPJY-9158(オリジナル:LB28-5056)
仕様:オレンジ・ヴィニール、高田明美描き下ろしB2サイズパステルタッチポスター、きまぐれピンナップ
帯コピー:夏の海に流れるポップスだけがシティミュージックじゃない、ホントの恋を知ってから聴きたいサウンド・トラック。
Side A
アニメ放送も中盤を迎えた頃に発売されたサントラ。
このサントラにはOP(A-1)とED(B-7)の2期分を収録。
挿入歌は4曲に増え、残りは全てインスト。
OP・EDに採用されなかったものの、このアニメを語る上で欠かせない藤代美奈子の挿入歌(A-9、B-1)は王道のアイドルソングとしても必聴だ。
(特に「Again」は最高)
また、B-3「ブレイキング ハート」はあのB.B.クィーンズのボーカルである。
オレも愛する国民的楽曲「おどるポンポコリン」の坪倉の本気の歌声をこんなところで聴けるとは。
こちらはアニメの2期OPで始まり2期EDで終わるというスマートな構成。
効果的に歌入りを挟んだ構成は飽きさせず、聴き終わったあとの充実感は名盤の証だろう。
この復刻シリーズのウリはやはりカラーレコードである。
ただ、カラーレコード自体は別に珍しいものではなく、当時からあったものだ。
最近だと聖子のBibleアナログ盤が記憶に新しいところ。
もともとレコードの素材はポリ塩化ビニール等のため、何もしなければ無色透明だ。
そこへカーボンブラックを混入して黒色にしているのが普通のよくあるレコード。
黒色にする理由は、ほこりや傷を認識しやすくするためだ。
逆にいえば、黒以外のカラーだとこれがほとんど目立たなくなる。
レコードにとってほこりや傷は再生時のノイズの原因となるため大敵だ。
カラーレコードは見た目にも綺麗で一見してほこりも目立たないのはいいが、メンテナンスを考えるとそこが落とし穴ということになる。
ほこりが見えなくてもノイズがあれば当然クリーニングは必要だ。
もっともクリーニングしても綺麗になったかもわからないのだが・・・
そういうわけで一気にカラーレコードが7枚も増えたのはちょっとやっかいであるが、カラーであることで昔は気分が上がったものだ。
(いまも上がっているが)
きまぐれ オレンジ☆ロード Singing Heart
発売日:2021年4月24日(オリジナル:1987年12月25日)
価格:4,180円(税込)(オリジナル2,800円)
品番:UPJY-9159(オリジナル:LB28-5061)
仕様:イエロー・ヴィニール、高田明美描き下ろし大型A全ポスター
帯コピー:TVアニメの常識をはるかに超えた掟破りの洗練サウンドで迫るソング・スペシャル・アルバム!!
まだアニメ放送中であったが、ここまでで使われた劇中歌のみをまとめたサントラ。
Sound Color 1,2の歌入り曲にA-6・B-6の2曲を追加した、全曲歌入りのアルバムだ。
アニメ放送途中のリリースということもあり、全てのOPとEDが収録されておらず、中途半端感は否めない。
1曲目に「夏のミラージュ」をもってくるところはいかに人気曲であったかがわかる。
ただし、曲の流れ自体はレコード時代の曲順セオリーを無視しているように感じるのはオレだけか。
歌入りばかりを集めているので全体の流れが起承転結またはストーリー仕立てであるのが理想とは思うがこの曲順には少々疑問が残る。
楽曲自体は捨て曲がないだけに曲順さえ見直せば気持ちよく聴けるのだが。
とはいえインストがないのでヘビロテ必至の1枚だ。
きまぐれ オレンジ☆ロード Sound Color 3
発売日:2021年4月24日(オリジナル:1988年2月25日)
価格:4,180円(税込)(オリジナル2,800円)
品番:UPJY-9160(オリジナル:LB28-5067)
仕様:グリーン・ヴィニール、高田明美描き下ろしB2ポスター
帯コピー:こんな女の子たちが二人も目の前にいたら、恭介じゃなくてもこまっちゃう♡!!?ラブ・トライアングルの甘さと優しさ、そしてNAMIDAを感じたい、ポップスファン必聴のサウンドトラック第3弾。
アニメ放送も残り1か月となった頃、Sound Colorシリーズの構成を踏襲した最後のサントラ。
3期OP(B-5)とED(A-1)を含むアルバム。
ここまではアニメ放送期間内のリアルタイムでのサントラだ。
挿入歌+インストも含む構成はSound Colorシリーズの共通仕様だ。
OPとEDに同じアーティストは起用したのは3期が初。
両曲とも中原めいこ自身の代表曲のひとつだ。
中原めいこは「君たちキウイ・パパイア・マンゴーだね」で一躍誰もが知る存在となった。
オレも歌番組で彼女を知ってはいたものの、アルバム「鏡の中のアクトレス」にこのオレンジロードに使用された曲が収録されるまで本格的に聴いてはいなかった。
オレンジロードのサントラで聴けるにも関わらず、それをせずに中原めいこのアルバムの方で聴くことを選んだのは当時のオレのポリシーだ。
(中原めいこのアルバム「鏡の中のアクトレス」はこのサントラの8日後に発売された)
もっともサントラの発売自体は知らなかったが知っていたとしてもサントラで聴くことはしなかっただろう。
やはりどこかアニメを小ばかにしてた感がある。
いまでこそ今回の復刻盤を買ったが、インストが大半を占めるこのようなアルバムは頻繁に聴くことはまずないだろう。
ただ、今だからこそ聴こうという気になったのも、音楽に対する姿勢が柔軟になったからなのかなとも思う今日この頃だ。
きまぐれ オレンジ☆ロード Kimagure Orange☆Station
発売日:2021年4月24日(オリジナル:1988年4月6日)
価格:4,180円(税込)(オリジナル2,800円)
品番:UPJY-9161(オリジナル:LB28-5069)
仕様:サーモン・ヴィニール、後藤真砂子(原画)B2ポスター
帯コピー:恭介、まどかがアバカブからお送りする特別放送!ひかる、くるみ、まなみ、一弥も参加して、テレビシリーズゆかりの地を訪ねて実況中継。忘れられないあの曲を10曲、楽しいおしゃべりにのせてお届けします。
MC
MC
MC
MC
MC
MC
MC
MC
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アニメ放送が終了し、ちょうどその1年前のアニメ放送開始日と同日に発売されたサントラ。
全期(1~3期)のOPとEDにおそらく好評であった挿入歌をプラスした決定版。
これだけ聴いていればアニメのオレンジロードを語れるヘビロテ必至のアニメ集大成のサントラだ。
アニメのサントラというより、通常のVarious Artistのアルバム感覚で聴けるのがうれしい。
と、曲目だけを見ればそう思うが、キャッチコピーにあるように実は全ての曲に登場人物のおしゃべりが入っている。
曲中・曲間のMCは曲とともにアニメを振り返るまさにFMのDJ仕立てだ。
曲だけでよかったのにとも思うが、実際のところそのおしゃべりが楽しく、逆にアニメを見ている途中で曲がかかる感覚のようで実に気持ちいい。
おしゃべりが結果的に曲を引き立てているとも言える。
ここまでのサントラは一見して適当に発売されていたように見えるが、実はアニメ放送に準じたサントラであり、ストーリーが成立しているように思う。
当時リアルタイムで聴いていたならそれを実感できただろう。
アニメだけを重視するなら、ここで一旦ひと区切りという感じになる。
よってここまでの5枚を持っていればアニメ版サントラはコンプリートだ。
アニメ版集大成として必聴必携盤だろう。
きまぐれ オレンジ☆ロード <オリジナル ドラマ篇>カセットテープの伝言
発売日:2021年4月24日(オリジナル:1988年4月29日)
価格:4,180円(税込)(オリジナル2,800円)
品番:UPJY-9162(オリジナル:LB28-5072)
仕様:ブルー・ヴィニール、高田明美描き下ろし特大変型ポスター
帯コピー:鮎川がロストバージン?恭介は狂った様にまどかを捜し求める。そしてついに恭介は、まどかに自分の本心を打ち明ける・・・・・・。
(挿入歌:鏡の中のアクトレス/ジェニーナ)
アニメ放送終了の興奮冷めやらぬ、その約2か月後に発売されたオリジナルサウンドドラマ。
これ用に作られた主題歌も収められ、サウンドのみではあるがひとつの追加エピソードという位置づけの異色なサントラ。
オレンジロードファンとしてはもっと見たいと残念に思っていたところの発売なので、サウンドのみであってもありがたいアルバムだっただろう。
のちにラジオドラマ化シリーズがオンエアされたことを考えれば、こんな形があってもいいのだなと思う。
これ以前のアルバムはアニメさえ見ていれば覚えのある曲が多かったが、ここからはオレには未知の領域だ。
アニメ同様OP曲があり、本編ストーリー、ED曲で締めくくる構成。
歌は全て声優による歌唱。
春日恭介役の古谷徹はじめ、全員がさすがに歌がうまい。
声優が歌うことは近年では珍しいことではないが、当時としては先駆的だったのだろう。
ここで描かれるストーリーのあらすじ。
恭介、まどか、ひかるの微妙な三角関係は相変わらず。
夜、主人公恭介の妹まなみとくるみ、飼い猫のジンゴロの入浴シーンで始まる。
長風呂の妹たちにイライラしながら恭介は部屋でラジオを聴いている。
たまたまラジオで紹介された視聴者からのはがきは恋の悩み。
しかし、これはどうやら鮎川まどかの投稿ではないか?
まどかの本音(不満?)を知り、恭介はとまどう。
翌日、まどかは学校を休んだ。
まどかは一体どこに消えたのか?
帰宅した恭介は妹たちがまどかから受け取ったというカセットテープを渡される。
カセットテープでまどかが語った伝言とは・・・
と、アニメでもエピソードのひとつとして描かれそうなストーリー。
しかしながらいつもながらセンスのいいまとめ方。
すっきりしないもやもやを残しながらひっぱるのがこのアニメのいいところ?だ。
「世界の中心で愛をさけぶ」といい、カセットテープを恋のツールとして使った時代もあったのだと、使ってなくてもそれに近いことをやっていたと懐かしく思う人は結構いるだろう。
まどか(鶴ひろみ)が歌う「Whispering Misty Night」は特によかった。
この歌だけならいつでも聴きたいところ。
結果聴きごたえあるアルバムとは思うが、当然原作を把握していなければ楽しめない(情景が思い描けない)のは言うまでもない。
きまぐれ オレンジ☆ロード あの日にかえりたい
発売日:2021年4月24日(オリジナル:1988年10月5日)
価格:4,180円(税込)(オリジナル2,800円)
品番:UPJY-9163(オリジナル:LB28-5084)
仕様:ピンク・ヴィニール、高田明美描き下ろしB2ポスター
帯コピー:お待たせしました!まどか、恭介、ひかる、のトライアングル・ラヴ。劇場の大スクリーンでたっぷり堪能したかな?”きまぐれ”は音楽から耳を離せない!要チェックです。
アニメ放送終了と同年に公開された劇場版のサントラ。
劇中の主題歌と挿入歌、インストで構成される。
(歌入りは和田加奈子の歌唱のみ)
劇場版1本のみのサントラなのでインストが多く、構成としてはやや退屈だ。
アニメ版では中学生活が描かれたが、「あの日にかえりたい」では高校生となったその後が描かれる。
しかし、このストーリーは原作者が描いたものでなく、原作の松本氏の逆鱗に触れたようである。
(そもそも原作者の許可なくそんなことがよくできたものだ)
とはいえ、声優や和田加奈子の歌は継承しており、見る側としてはそんな大人の事情を考えなければ違和感なくそれなりに楽しめる人もいるだろう。
アニメ版のサントラに比べればややクオリティは落ちると言わざるを得ないが、劇場版好きにとっては貴重な音源。
「きまぐれオレンジ☆ロード」としても最後のアナログ音源という意味では意義あるものだ。
なにはともあれ、これで全ての当時のLPレコードがコンプリートできるのだからありがたい話だ。
というわけで今回の再発はうれしいがいいことばかりではない。
全て聴いてみて気づいたのは、なぜかレコードの反りが大きいものが多かった。
カラーレコードが原因かとも思ったが、やはり製造工場や製造工程に問題があるのではと思う。
ここ数年は新譜でレコードを買う機会が増えたがここまで酷いものはなかった。
当時を思い返すに、ここまで揃いも揃って同じ状態のレコードに当たるとは思いもしなかった。
レコードの反りは音質にも影響を及ぼしかねないので品質管理もしっかりしてもらいたいものだ。
さて、懐かしさのあまり購入してしまった「きまぐれ オレンジ☆ロード」のサントラ。
これを機に改めてこのアニメを調べていくうちに時を超えて再びはまってしまった。
サントラは映像見てから聴いてなんぼの世界だ。
幸い今年(2021年)秋にアニメのブルーレイが発売されるので予約したのは言うまでもない。
それを見てから聴くサントラはさらに味わい深いものとなるだろう。
果たしてヘビロテで聴くのかどうかは微妙だが一部はそうなるだろう。
どちらかというと今回は音楽を聴くことより、ジャケットをはじめとするアートワークに惹かれた部分が大きい。
そう考えると、ダウンロードや配信ではそんな動機で購入することは最初からないわけだ。
物理メディアのメリットは目でも音楽を鑑賞することができるということ。
「きまぐれ オレンジ☆ロード」のアートワークはテレビ版アニメとは手法が異なる、ひとつの絵画としての魅力がある。
とても美しいイラストだ。
漫画の単行本を揃えているような感覚に近いかもしれない。
それがLPサイズであることの意義は大変大きい。
物理メディアの魅力の本質を改めて認識できたのは収穫である。
1980年代は歌だけでなく、アニメ・ドラマも名作揃いということを忘れてはならない。
当時はオープニングとエンディングの重要性をよく理解したものが多かった。
良質なアニメ・ドラマに良質な楽曲が合わされば最強なのは言うまでもない。
それが80年代を愛してやまない理由のひとつでもある。
最後に・・・
原作者のまつもと泉さん。
鮎川まどか役 声優の鶴ひろみさん。
心よりご冥福をお祈りいたします。
「きまぐれ オレンジ☆ロード」は忘れられない大切な青春の思い出です。