さくの家電のーと

オーディオ、音楽、家電全般に関する備忘録ブログ

◆雑記◆

360 Reality Audio を聴く

かねてよりソニーからアナウンスされていた、360 Reality Audio(スリーシックスティ・リアリティオーディオ)について、いよいよサービスが開始されるようなので早速試聴してみた。
(2021/3現在はデモ音源しかないが)
無題

360 Reality Audioはいってみれば音楽用サラウンドフォーマットのようなものと考えればわかりやすいだろう。

音源はストリーミング配信により提供されるので現代のスタイルから大きく変わるものではない。
(今後はデータダウンロードで購入できるようにもなるのか?)

ただし、音源があればそれでいいかというとそういうわけではない。

当然環境を整えなければ聴くことはできない。

とはいっても、その環境はすでにスマホやアンドロイドウォークマン等で音楽を聴いている人であればもうゴール手前。

つまり既存の環境で誰もが聴ける新フォーマットということなのだ。

オレはとりあえず手持ちのスマホとヘッドホンだけで30分ほどの設定の後、試聴までこぎつけた。

今回は試聴までの手順とその他所感をまとめておくことにした。


必要な環境
・スマホとヘッドホン(イヤホン)
初期投資なく、一番手軽な方法なのですぐに始められる。
スマホはアンドロイド端末を使用。
(アップルがアプリに対応しているかは不明)
ヘッドホンは基本的に制限はなく、使用するアプリ次第。
ソニー提供のアプリだとソニー製のいくつかの指定ヘッドホンを選択することでさらに最適化された音を聴くことができるようだ。
より臨場感を出したいならカナル型イヤホンのようなインイヤータイプでなくオーバーヘッドタイプのほうがよりよさそうだ。

・スマホと専用スピーカー
スマホまでは同じだが音出しの手段として専用スピーカーも用意されている。
スマホからスピーカーは当然ワイヤレスである。
現時点ではAmazonのスマートスピーカーかSONYの対応スピーカーでなければ再生不可。
今後は技術提携した他メーカーの製品も期待できるだろう。
試聴していないのでなんとも言えないが、そもそもヘッドホンと同等のサウンドステージが再現できるか疑問だ。


360 Reality Audio仕様
音声フォーマット:MPEG-H 3D Audio
サンプリング:24bit/48kHz
ストリーミングビットレート:1.5Mbps

仕様を見る限りストリーミングでもハイレゾ相当の音質で提供されるようだ。
さらなるハイレゾ化はストリーミングでは頭打ちしそうだが、ダウンロードであればより高音質化することも可能だろう。


聴くまでの手順
360 Reality Audioを聴くまでの手順。
(かなり簡略化)
手順はかなりシンプルであるが設定は少しだけ面倒だ。

1.アプリのダウンロード
グーグルストアでSony Headphones Connectアプリをダウンロード。

2.諸設定
ソニーアプリでは自分の耳の写真を撮影してサーバーに送る。
これでより個人に最適な設定ができるらしい。
この間、メールにリンクがきたり、ログインしたりと面倒な手続きがある。
ログインが完了するとすぐに設定に移れる。
ソニー製ヘッドホン(イヤホン)を持っているならメニューで自分のヘッドホンを登録すれば、さらに最適な設定がなされるらしい。
オレはメニューの中にいくつか該当があったが今回はMDR-1Aを選択した。
このアプリ自体は設定のためのアプリ。

3.再生アプリのダウンロード
360 Reality Audioの音源は特定のストリーミング会社のどれかのアプリをダウロードする。
オレはとりあえずArtist Connectionをダウンロードした。

これでもう聴く準備は完了


360 Reality Audio以前に
例えばこれを単なるサラウンドと捉えるとなるとオレは1990年代からヤマハのサラウンドプロセッサーで5.1ch以上を聴いていたわけで、臨場感という観点だけでは目新しいものでもない。
(最高で7.1まで頑張ったがケーブルの引き回しは大変だった)
一般家庭でサラウンド環境を構築している人は少ないだろうが、映画館では誰もが気軽に体験できるのでそう考えれば腰を抜かすほど驚くことではない。

ただ、360 Reality Audioのすごいところはそれをひとつのヘッドホンだけで再現できるところだ。

つまり2chということ。
ドルビーサラウンドのシステムを構築するのにどれだけのお金と手間がかかるかということを考えれば初期投資ゼロで同等のサラウンドを実現できるのは画期的技術だ。
ヘッドホンひとつという話なら、すでにソニーはデジタルサラウンドヘッドホンシステム「MDR-MDR-HW700DS」というものがある。
オレはこれにテレビやプレステをつないで普段から映画・ドラマ・アニメ・ライブ等を見ている。
これは9.1ch相当のサラウンドの再現性があり、ドルビーサラウンドの各種フォーマットに対応している。
その効果はサラウンドバー1本よりははるかにましであるが、本格的なものには敵わない。


再生音について
音は360という名の通り、音場は実際のホールにいるかのような臨場感がある。
これは仮想球体空間に24のオプジェクトを配置し臨場感を再現しているそうだ。
どう解釈すればいいのかわからないが、例えば自分の部屋に24個のスピーカーを配置してそれぞれが独立した音をだしているようなイメージだろうか。

さて、試聴してみて思ったのは確かに臨場感はすごいと思う。
デジタルサラウンドヘッドホンシステム「MDR-MDR-HW700DS」と比べても段違いの臨場感。
これが普通のヘッドホンの音と思うと、これまで音場が広いといわれていたヘッドホンの立場もなくなるだろう。
音源はデモであったため、360 Reality Audioの凄さを見せつけるような演出がされている。
映像とリンクして、試聴ポイントが移動していく。
最初はボーカル。
これだけでもライブのような臨場感、続いて離れた各楽器やコーラスへ視点が移動していくとそれらの音が徐々に近づきボーカルは遠ざかる。
アトラクション的な感じで面白い。
とにかく360 Reality Audioの実力はわかった。
では、実際のリリース版はどうなるのかという話だ。
いくら臨場感を出すためとはいえ、ボーカルが横や後ろにいって遠くに聴こえるようでは落ち着いて聴けたもんじゃない。
では、リスニングポイントは固定でボーカル・楽器の配置をより明確にするのか?
それでもステレオより格段に臨場感があるがメリットを最大限に生かしているとはいえない。

そうなるとコンテンツ作りがどうなるのか気になる。
どちらかというとライブ向けにはちょうどいい。
そもそも最近の音楽はそもそもステレオ感なく音場が狭くつまらない。
(ほぼモノラル)
打ち込みばかりで本来音源は一点なのをステレオにミックスしているわけだ。
(生楽器の演奏でない場合)
これをリミックスするのかという話だ。
1990年代以前の音源であれば面白くなりそうだ。
そういう意味では360 Reality Audioはこれまでの音源と同等に扱うのは多少無理があるのかもしれない。
ちょっとライブっぽい音で聴いてみたいと思った時に時々聴いてみる、そんな感じか。
到底360 Reality Audio 1本で新譜をリリースするアーティスト等いないと思うので、通常版と360 Reality Audio版のような売り方をするのではと推測。
そう考えると確かにストリーミングオンリーのほうが理に適うような気がしてきた。


コンテンツの提供形式について
思ったのは360 Reality Audioを音楽専用フォーマットとするのは若干もったいない。
なにしろ普通のヘッドホンでサラウンド環境が実現できるとなれば、どうしても映画やドラマ・ゲーム等の映像も、と欲がでてしまう。
手始めは音楽ライブ映像と組み合わせてということになるだろう。
あとは例えばプレイステーションVRのコンテンツとして音楽ライブ会場を自由に移動してリスニングポイントを選べるなんてのも面白い。
プレイステーション5は3Dオーディオに対応とあるが、これが360 Reality Audioを指しているかはわからない。


今後の展望
個人的には360 Reality Audioをどのようなスタイルで聴くべきか、どう扱っていくかが課題だ。
つまり、スマホ・PCから出力してヘッドホンまたは専用スピーカーにとどめたスタイルだけでいくか。
オーディオメーカーがアンプやDAコンバーターにデコーダーを内蔵してオーディオ的にも展開していくのなら、より高音質で聴けるオーディオマニアも夢中になれる余地はある。
現実的にはヘッドホンのみが一般的となりそうだが、オーディオマニア的に考えると360 Reality Audioも自身のハイレゾ再生オーディオシステムの中に組み込みたくもなる。
ただし、ネックとなるのは専用スピーカーが必要となる部分だ。
仮に既存のシステムに組み込んだところで専用スピーカーとなると結局このために別のシステム構築が必要となるわけなので既存のシステムとの親和性を計ることは厳しい。
試聴はしていないがこの専用スピーカーによる音場再現がヘッドホンで聴いたような臨場感が出せるとは到底思えない。
複数のスピーカーを360度上下に配置したとしても、音の出どころは1か所の点音源。
これはサラウンドバーで体験済みだが本格的な多チャンネルスピーカーによる臨場感には到底かなわない。
となれば、AVアンプにデコーダーを内蔵させ、5chに最適化して再生したほうが現実的。
または、逆にもともと2chなのだからスピーカー2本を正面でなく横(耳の水平方向)へ配置し、360 Reality Audio専用スピーカーとはならないだろうか?
ヘッドホンでできるならそれがスピーカーに代わるだけ。
ヤマハのホームシアタースピーカー配置でいうならSRとSLを360 Reality Audio専用とするのだ。


懸念点
360 Reality Audioはソニー主導の技術だ。
つまりソニー独占とあればコンテンツは限られてくる。
もちろんソニーに賛同してソニーミュージック以外の企業が参入するのなら全く問題ない。
それより心配しているのは他社でさらに別のフォーマットが出てくる場合だ。
こうなるともう混沌としてくるのは過去の数々のフォーマット戦争で経験済み。
フォーマットの乱立はユーザーがとまどい、普及の足止めにもなりかねない。


今後の展開が楽しみなものが出てきた。

オーディオ小僧 ダビングの流儀(番外編)

今回の一連のダビング再現は音質的には少々残念な結果となった。

久々で感が鈍ったというより、遊びのダビングで油断したといっておこう。
考えてみれば大切な録音を真剣にやったのかというとそうでもない。
(マスターのレコードを持っているのだから)
当時の流儀を思い起こすことに集中するあまり、各工程での油断がそのまま形となってしまった。

特に近年は再生するだけが目的だったレコードプレーヤーの調整は見直さねばならない。

いずれにしてもオーディオマニア的には遊びであっても納得はいかない。

まぁそれも含めてひとつの思い出になるわけだが、いずれ何かしらのリベンジをしなければ気が済まないというのが正直なところ。

そういうわけで今回はAKAI GX-7でダビングしたがダビング後となってはもうどうすることもできない。

しかし、せめて他のカセットデッキでも再生して聴き比べてみることにした。

聴き比べはAKAI GX-7に加えてパイオニア T-D7とナカミチ CR-70だ。
DSC01246

かつて、このT-D7とCR-70の再生能力については記事にしたことがあった。
昔録ったカセットテープをいい音で聴きたい

これがあれば失敗ダビングでも多少はましになるのではと考えたのだ。

今回試聴するのはもちろん「ダビングの流儀」で作成したカセットテープ。

松田聖子「Canary」
ソース:LPレコード
録音年月日:2021年3月5日
カセットテープ:TDK AD(Normal)
録音カセットデッキ:AKAI GX-7
ノイズリダクション:OFF
デジタル化PCMレコーダー:SONY PCM-A10(リニアPCM 44.1kHz 16bit)

それでは機種別に聴き比べてみよう。

AKAI GX-7
まずは試聴機の中では最も古い機種となるGX-7だが、自己録再最強説ということで当然試聴してみる。
DSC01250

率直な感想はGX-7の音はよくも悪くも録音した音をそのままダイレクトに伝えるデッキだ。
エネルギー感があるが古いせいかデッキ由来のノイズ成分も多いようにも感じた。
録音品質が良くなければそれがそのまま強調されているようにさえ聴こえる。
レコードのパチパチやトレースノイズ、テープのヒスノイズも盛大だ。
終始ノイズっぽい音なのでぜんぜん音楽に集中できないというのはオーディオマニアの悲しい性か。
もちろん録音がよくないのが一番の原因であるが、あまりにダイレクトすぎる再生音はまだ熟成前のカセットデッキの音という印象だ。

サンプル
Private School
LET'S BOYHUNT

【気になった部分】
・カセットテープのドロップアウト個所が散見される
→これが一番気になる。音がかすれる部分が多く、このカセットテープは大切な録音に使えるレベルではなかった。

・ボーカルのサ行がサチっている
→強い「サシスセソ」の部分で「ザッ」とノイズっぽくなってしまうのがかなり気になる。

・テープヒスが目立つ
→これにレコードのトレースノイズとカセットデッキ由来のものも合成されて常にザワザワしている。

・ボーカルがややうるさい
→この年代のAD特有の音であろうが高低音とのバランスが若干悪く感じる。


以下、この気になる部分がカセットデッキを変えるとどうなるか試してみる。


PIONEER T-D7
T-D7は光入力も備えるデジタルプロセシングカセットデッキだ。
※このデッキの詳細は前述の記事リンク参照
DSC01251

GX-7で気になっていた部分は多少軽減される。
まずい録音ほどこのデッキの補正の効果は大きい。
特に気になっていたテープのヒスノイズ、レコードのパチパチ、トレースノイズはデジタルNRの効果により大幅に軽減し、3機種中最も音楽に集中できる音だ。
デジタルNR特有の効果を最も実感できるのはレコードの「パチッ」が「プシュッ」と角が取れて聴こえること。
ノイズのみに着目すればスピーカーからだとほとんど認識できないレベルだ。
ただし、ピアニッシモ部分や曲終わりのフェードアウト部分では音がこもりがちでレベル変動もあるのは強力なデジタルNRの弊害だ。
そこを除けば、もう少し欲しかった高域はFLEXシステムの効果で元録音より鮮やかになり、ボーカルばかり前に出ていた音のバランスがよくなった感じだ。
ノイズが軽減された(静寂性が増した)ことで逆にテープのドロップアウトは目立つようになった。
録音さえよければ、カセットテープであることを忘れさせるほどの静寂性となるのはすでに実証済みだ。
ただし厳密に言うと、これら補正システムを使うことで音場に奥行きがややなくなり、不自然さが伴うのも確か。
言い換えれば本来のカセットに録音された音をずいぶんといじった作り物感がある。
カセットはADのはずなのだが、ウォームなはずの音は良くも悪くもキレッキレの音になる。
気軽に聴く分にはこのカセットデッキほどぴったりなものはないだろう。
とにかく持っていてよかったと思えるカセットデッキだ。
しかも使用頻度が少ないにも関わらず、未だ故障知らずなのも驚きだ。
(当時秋葉原で店員が勧めたSONY TC-KA3ESを振り切って買っておいてよかった)
中古でも入手しやすく、年式も比較的高いのでカセットデッキの初心者に1台勧めるならこれになるだろう。

サンプル
Private School
LET'S BOYHUNT


Nakamichi CR-70
CR-70はナカミチの数あるカセットデッキの中でも人気・実力ともに高い高級機だ。
※このデッキの詳細は前述の記事リンク参照
DSC01256

今回最も驚いたのはCR-70。
やはりこれは次元が違う。
といっても音が激変するわけではない。
テープヒスが多いと思っていたのになぜかナカミチだとそれがあまり気にならない。
失敗した「サシスセソ」でサチっていた部分もほんの少しだけ軽減。
ノイズが減ったと感じたのはやはりGX-7は回路からくるノイズも少なからずあったということだ。
何より3機種中もっとも音楽的に聴かせるのが素晴らしい。
GX-7で聴く音が本来の音のはずが、それよりもいい方向で再生できるとなると自己録再至上主義も揺らいでしまうというものだ。
T-D7のように補正機能は一切なく、やったのはアジマス調整のみ。
(これもさほどいじっていないが)
T-D7の再生音でも満足できていたがこれはやはり次元が違う。
(CR-70は若干回転に不安定さが出てきたようだ、そろそろメンテの時期かもしれない)

サンプル
Private School
LET'S BOYHUNT

さて、比較試聴してみて音の変化の大きさには改めて驚いた。
サンプルの音ではその違いがわかりにくいが実際は誰もが気づくであろうほどの違いだった。
ただし、録音の悪さを完全にカバーできるわけもなく、多少はましになる感じ。
T-D7とCR-70は、録音さえもっとよければかなりの音を聴かせるだけに少し酷な注文だった。

改めてアナログ録音の難しさと面白さが確認できただけでもやった価値はある。

それにしても、こんなことはもうやらないと言っておきながらどうにもリベンジしたくてしょうがない。
何よりお気に入りのAKAI GX-7の面目躍如を果たさねばならないだろう。


そして最後の最後で気になってしまったのは、

では当時のオーディオ小僧のダビングの音は実際どうだったのか

ということだ。

そこで当時オーディオ小僧が実際に録音したカセットも聴いてみることにした。

選択したのは3本のカセットテープ。
DSC01263


全部が少しだけ昭和63年が存在した平成元年(1988)の録音だ。
今年(2021年)から見て33年前も前にオーディオ小僧がダビングしたものだが、カセットテープの劣化が一番の懸念点だ。
この時、レコードから決別するために手持ちのレコードを一気にダビングし、その後レコードを全部売ったのだ。

試聴対象の選定条件は、
・レコードから録音したもの
・ノイズリダクションはOFF
でピックアップ。

せっかくなのでノーマル、ハイポジ、メタルをそれぞれ選んでみた。

参考までに当時録音したシステムを。
レコードプレーヤー:YAMAHA YP-700C
カートリッジ:ピカリングのVM型(確かDJ用だった気がするが型名は忘れた)
フォノイコライザー:SANSUI AU-D707X Decadeの内臓でMM
カセットデッキ:AKAI HX-R44

そして今回再生に使ったのはナカミチ CR-70。
サンプルはソニー PCM-A10のリニアPCM(16bit/44.1kHz)でデジタル化。

1.中森明菜「VARIATION」
カセットはTDKのAD-Sでノーマル。
つまり今回録音に使ったADと同等のテープでハーフ違いのものだ。
音質傾向は同じはずである。
クリアなハーフは当時衝撃を受けたものだ。
DSC01262

Sample

まず第一印象はノーマルでも十分だと思ってしまった。
なんとも元気な音でイントロからやられてしまった。
ただし、音が大きい部分で常に飽和しており、歪が確認できるが、サ行がサチっているわけではない。
このことから当時のレコードプレーヤーのセッティングは決まっていたが単純に録音レベルがこのカセットには高すぎたようだ。
(とても惜しい)
無音部のテープヒスノイズは相変わらず大きいとはいえ、曲が始まれば気にならないし同じADテープなのにノイズが少なく録音できている。
レコードのコンディションもよかったようだ。
ドロップアウトはほとんど確認できない。
音質傾向はやはりAD同様ボーカルがよく出ているがそれほどクドく感じない。
初期の明菜ならAD-Sでも十分だったようだ。

2.麗美「“R"」
カセットはmaxellのXLⅡ-Sの3代目でハイポジ。
2代目の前モデルと音質傾向は似ているがよりクリアな音になった。
このモデルチェンジでハイポジ、メタルはこの真っ黒ハーフになったがオレはこのデザインが好きでない。
(手触りは最高なのだが)
DSC01261

Sample

XLⅡ-Sは癖のないやや控えめな音で全体に落ち着いた印象を受ける。
イントロこそおとなしいな、と思ったのだがサビの麗美の強烈なハイトーン部分ではダイナミックな音を聴かせてくれる。
(それでもレコードのほうがもっとダイナミックなのだが一歩及ばず)
さすがハイポジだけあって、ノイズの少なさはADの上をいっている。
高域も出ているとはいえ、同年代のTDKやSONYのハイポジに一歩譲るというところ。
そもそもマクセルの音は原音を大きく変えるような味付けはされていないように思う。
良く言えばモニター的であるが面白みという意味では物足りないかもしれない。
低域もしっかり出ているのでバランス自体とてもいい。


3.松任谷由実「VOYAGER」
カセットはTDKのMA-Xの2代目でメタル。
同年代のMA-XGと同等のテープだ。
メタルの風格を感じさせるブラックハーフに金文字、ラージハブ、広窓デザインもいい音を予感させるものだ。
DSC01260

Sample

さすがにメタル。
オレはマクセル派ではあるが音はTDKが一番好きだ。
どんなジャンルでもソツなくこなす優等生といったところ。
このアルバムはさんざん聴いてきたが、確かにレコードのもつニュアンスは十分再現できている。
間奏のエレキギターのエネルギー感は強烈かつ破綻しないところが素晴らしい。


ざっと聴き比べてみて思ったのはオーディオ小僧の録音は今回のダビングよりノイズが少なめだ。
テープヒス、トレースノイズはもちろんあるが曲が始まればそれを邪魔するほどのものではない。
ノーマルではやや歪も多少あったがサ行がサチる部分はほぼなかった。
何よりカセットの音が未だ衰えを感じさせなかったのは凄い。
懸念していたドロップアウトはほとんど確認できなかった。
ただし、やはりというか録音レベルの高さと経年劣化により、曲間の無音部分で転写が発生している部分があった。

元オーディオ小僧としては余裕で当時と同じレベルでダビングくらいできると思っていたのだが、現役のオーディオ小僧には敵わなかったのが悔しいところ。
(自分と張り合うなという話だが)
レコードからのダビングは劣化要素が多く、難しいものがあるが、オーディオ小僧が当時CDから録音したものに限っては全て合格だ。


さて、この「ダビングの流儀」を記録として残したかったのは、かつてのダビングのお作法を忘れないためであったが、よくよく考えるとダビングしたのはカセットテープだけではない。
オーディオ小僧はカセットの次は「DAT」、その次は「MD」へとダビング先のメディアを変えている。
それらメディアも当然のことながら現在も全て手元に残っている。

となれば、それらの流儀も記録しておく必要がありそうだ。

今後はDAT編、MD編、DCC編(ついで)もやってみよう。

オーディオ小僧 ダビングの流儀 その6(最終確認編)

手作りカセットが完成したのが前回まで。


長かったがあとはオーディオ小僧の最後の仕事となる。

どの商品にでも言えることだが、検品をしなければ世に送り出すことはできない。
つまりカセットを再生してチェックするのだ。

DSC01231

チェックして問題なければ安心してレコードを返却できる。
レコードからカセットへのダビングは一度始めたら片面の録音が完了するまでは止められない。
もし欠陥を見つければ同じことを同じ時間をつかってやり直しになってしまう。
(注意していたので致命的な欠陥はないはずだが)

この再生確認はインレタ作業中にもできるがやはり集中力を要する作業にながらは禁物だ。
一発OKとするためにここまで丁寧な仕事をしてきたのだから問題ないことを祈るのみ。


それでははじめよう。

チェックは普通に通しでカセットを再生するだけである。
ここはさすがにヘッドホンで確認することにした。
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確認事項を順にみていこう。

1.曲のはじまりチェック
DSC01235

まず1曲目の開始タイミングだ。
AB面とも約10秒ほどで曲がはじまったので想定通り。
次にテープの巻始めの不安定さ。
カセットデッキの性能によるものが大きく、音が揺れたりしていないか。
一般的には再生ボタンを押して10秒ほど送ればほぼ問題なく、今回ここはOK。

2.録音レベルチェック
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ピーク部分での音が歪んでいないか。
メーターをモニターしていると想定の+5dBを何度か超えた。
若干歪んだか?と気になる部分がないこともない。
少し高すぎたかもしれないが全体としては問題なさそうだ。

3.音飛びチェック
DSC01241

レコードの音飛びではなく、カセットテープ特有の磁性体のドロップアウトによる音の途切れのこと。
これは通しで聴くべきところ。
また、スピーカーからの音では見落としがちだ。
ヘッドホンのほうが聴き分けやすい。
今回は中古かつ使いまわしのカセットを使ったことで音の途切れは何か所も確認できた。
完全に選択ミスであったがとりあえず大目にみることにする。
実際の大切なダビングでは年数が経ちすぎた中古テープは使用しないのが無難だ。

4.各面の終わりチェック
DSC01239

特にギリギリまで録音できた時はフェードアウト部分もよく聴くこと。
残りテープの残量も気にしたい。
今回はテープの記録時間に余裕があったのでそこは問題ない。
レコード針を上げた瞬間のノイズもその前に録音停止したので入っていない。

5.全体的な音質
これはチェックというよりも総合評価。
上記チェック項目から結論からいうと今回のダビングの質は満点とはいいがたい。
いい機会なので徹底的に気になる部分を挙げていこう。

・レコードの問題
ヘッドホンによる試聴で気づいたのは、レコードにも問題があったこと。
(中古品なのでまぁわかってはいたが)
曲間やピアニッシモ部でスクラッチ音とトレースノイズが気になり、クリーニングが足りないというより、これはもう洗浄するしか手はないようだ。

・レコードプレーヤーの問題
ボーカルのサ行「サシスセソ」の発音で音がサチっていた。
これはレコードプレーヤーの針圧調整が甘かったかもしれない。
(そういえば前に再生した時に針圧をいじっていた)
サチりの原因はこれだけではないのでこの機会にトーンアーム周りも点検の必要がありそうだ。
基本的なこととしてこれは大反省。

・カセットテープの問題
まず、TDK ADは非常に中音域が豊かな音だった。
ボーカルの音域がやけに強調されてうるさいほど。
逆に高低音が弱い。
極端に言うとピラミッド型の周波数特性といったところ。
そういう意味ではバックの演奏とのバランスがよくなかった。
今回使用したADは80年代初頭モデルということもあり、いわゆるノーマルテープ特有の中域が得意でレンジが狭い音だ。
いわゆるカセットテープらしい音というところ。
使いまわしの中古テープで年式も古いこともあり、ドロップアウト(磁性粉の剥がれ)による音の途切れが散見されたのは残念だ。

・カセットデッキの問題
録音に使ったAKAI GX-7は非常にダイナミックかつダイレクトな音を奏でる。
それと引きかえにテープヒスノイズも大きく、再生音には少しがっかりしたというのが正直なところ。
(といってもGX-7だけが悪いわけではない)
レコードとカセットの質の悪さが目立ってしまうのだ。
あとは、このデッキも80年代初頭のモデルであり、今回の録音レベル設定方法がこのデッキでは合わなかったようだ。
(0dBを基準にすればよかったかもしれないし、最後にひと押し録音レベルを上げたのがまずかった)
やや録音レベルオーバーで歪を感じた部分が見受けられたのはオレのミスだ。

これら総じて少しずつ影響しあい、最終的なダビングの質はあまりよくないという評価に至った。

まぁ反省点は多くあるがこれでチェック完了。
とりあえずOKということにしておく。

さて、最後の最後にひとつだけ問題がある。

それはカセットのツメを折るか折らないかだ。
DSC01242

ツメさえ折っておけば間違えて上書き録音するようなミスはなくなる。
しかしオーディオ小僧はいつか使いまわして録音するかも、という貧乏性が染みついているためツメを折ることができない。
(折ったところで、穴を埋めればまた録音できるが)
ツメが折れたカセットの見た目も好きでなく、カセットの価値を下げているようでとてもできないのだ。
これはカセットテープに対するオーディオ小僧のリスペクトということでツメはそのままとする。

さて、これで全てが終わった。

一連の作業が今回も無事完了し、オーディオ小僧は満足だ。
(まだレコードを返却するという最後の仕事が残っているが・・・)

オーディオ小僧は新しく増えたカセットを大切にカセットラックにしまう。
DSC01243


最後にオリジナルのレコードをゆっくり聴いておこう。

レコードを返すついでに次に借りるレコードも見ておこうかと考えるオーディオ小僧。




あとがき

今回、改めてかつてのダビング方法を記事に書き起こすことで、その手順の多さには溜息がでた。
かつてはこれを誰もが何度となく繰り返したのだ。

やっていくうちにすっかり忘れていた細かい部分は思い出した。

アナログ音源をコピーするとなるとデジタル→デジタルのコピーでは考えられないような時間と手間が必要だということも痛感した。
わかってはいたが、到底現代人が日常的にやるには厳しい作業だ。
(たまにやるなら楽しいが)

例えば全自動洗濯機があるのにわざわざ手洗いで洗濯するかという話。

当時は他に方法がないからこれを当たり前にやっていただけなのだ。

しかし、現代の録音(単なるコピー)では絶対に味わえないものもあることは確かだ。

1枚のアルバムと向き合う時間が長いこと、それ自体で一つの思い出にもなり得る。
結果的にアルバムに対する思い入れもより強くなる。
知らず知らずのうちにアーティストをリスペクトする時間でもあったということだ。

現代に至ってはダビング以前に、そもそも音楽メディアを所有する意義さえも揺らいでいる。
データで聴く音楽、またはデータさえも保有しないストリーミング。
これが音楽を聴くスタイルのメインストリームとなりつつある。

これは技術的には進化であるが、ある意味人の心に対しては退化の一途を辿っているのではとも思う。

このような現状ではあるがオレはメディアで音楽を聴くことをやめることはないだろう。

なぜならオーディオを趣味とする以上、レコード・カセット・CDなどの再生装置を使わなくなるのはオーディオの楽しみが半減することと同じと考えるからだ。
また、新譜の発売日に物理メディアを手にした時の喜びと満足感はデータダウンロードでは絶対に味わえないものだ。

メディアに記録された音源というのはデータ音源と比べれば再生環境の影響を大きく受ける。
つまり人により聴く音が違うということだ。
聴いている音が違うのなら、誰よりもっといい音で聴きたいという欲望にもつながる。

かつてのオーディオマニアはそこに価値を見出し、音質の追及へと突き動かされていたのだ。

今回のダビング作業もそのひとつの要素だ。
こんなことはもうやらなくてもいいが、音楽を聴くひとつの形としてこんな方法もあったということだけ忘れなければいいだろう。

そして全国のかつてのオーディオ小僧にはそれぞれの「ダビングの流儀」があったことも忘れてはいけない。

自分で録音した音楽というのはやはり特別だ。
DSC01244


オーディオ小僧 ダビングの流儀(番外編)へ続く

オーディオ小僧 ダビングの流儀 その5(インレタ編)

前回でついにダビングが終了した。

しかしオーディオ小僧にはまだ大切な仕事が残っている。

いよいよ最後の仕上げ、「インデックスカード作り」だ。

DSC01186

この作業で世界でたったひとつのカセットテープが完成するわけなので気合が入る。

インデックスカードへの情報記入、レタリング、表紙選び。
この3つで誰ともかぶることがない自分だけのオリジナルテープが出来上がる。

実際のところダビングの最中にこの作業は同時進行させることもできる。

しかし、レコードからの録音はいろいろと気を使うことが多いのであまりはかどらない。
結局時間がかかるのでダビング後の作業となる。

それでは始めよう。

まずはこれ。
DSC01183
地元鎌倉の銘菓「鳩サブレー」だ。

ふたを開けると、クッキーでなくインデックス回りのこまごましたものが入っている。
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レタリングシート、インデックスカード各種、ステッカー、雑誌の切り抜きなど。
オリジナルカセット作りの素材になるもの入れだ。

では、はじめよう。

インデックスカードの選定

まずはインデックスカードを選ぶ。

インデックスカードの入手方法はいくつかある。

・買ったテープに付属
買ってきたカセットテープにも付属しているのでそれを使ってもいいが、オーディオ小僧は聴き飽きた時のカセットの使いまわしや元のカセットテープの状態を極力保存したいという思いからこのインデックスカードは使わない。
DSC01195
今回使うカセットはTDKのAD。
その純正インデックスはこんな感じだが、表側は使えない。

裏返すと、
DSC01196
とりあえず記入はできるがこのAB縦区切りタイプはあまり好きではない。
どっちにしてもオーディオ小僧は純正インデックスは保管することにしている。
ちなみにカセットに貼るシールラベルも同様の理由で使うことはない。


・FM誌等の雑誌の付録
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FM STATION、FMレコパル等、雑誌に毎回おまけでついてくるオリジナルインデックスカードだ。
FM誌には一定の専属イラストレーターがついており、それがその雑誌のカラーにもなった。
カッターで綺麗に切り取ってストックしておくのだ。

主要紙のインデックスカードをざっと見てみよう。

FM STATION
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当時絶大な人気を誇った、バランス抜群のFM誌だ。
FMステーションのイラストといえば「鈴木英人」。
表紙のイラスト同様、アメリカ西海岸をモチーフにした独特なタッチのイラストは購買意欲を掻き立てられた。
いつも鈴木英人ではないがインデックスカードは毎号ついてきた。
背ラベルの部分が広くとられており、使いやすい。

FMレコパル
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FMレコパルの顔ともいえるイラストはイタリア人イラストレーターの「マルディロ」によるもの。
正直あまり好きではないが、記事はレコパルが一番オーディオ寄りで面白かった。
背ラベル部分はFMレコパルの文字が主張しすぎ、フリーエリアを圧迫するのであまり好きではない。

週刊FM
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アーティストや実写風景等が多く、インデックスも渋い。
アーティスト寄りの記事に強く、大人っぽくもあり、オーディオ小僧はあまり買わなかった。

この他のFM誌やアイドル誌などにもよくカセットのインデックスは付属した。
毎週買っていれば自然に溜まっていくものなのだ。


・カセットテープのセット売りやアーティストコラボのおまけ
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AXIAのカセットは特に多かった。
基本的にCMやってるアーティストとなるがさすがに出来はいい。
テープメーカーのロゴも入るのでカセットと合わせればカッコいい。


・カセットテープのカタログ
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これはAXIAのカセットテープカタログからの切り抜きを使ったもの。

裏返すと、
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カタログだったのがバレバレだ。

インデックスの型があるだけなので裏はカタログ情報なのは仕方ない。
実際使うとなると、
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別のインデックスカードなどから紙を切り貼りして記入エリアを確保しなければならなかった。


そういうわけでインデックスカードは自然に溜まっていくものなのでわざわざ買うほどのものでもない。

この中からの選定方法はインデックスカードの写真やイラストがアルバムのイメージに近ければいい。
イメージが合うものがなければ雑誌の切り抜き等を表紙に差し込めばいいだけだ。

今回はストックからTDK製のものを選ぶことにした。
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インデックスカードもTDKで統一するのがオーディオ小僧の細かいこだわりである。
(TDKのロゴが新しいのが惜しい)
ただし、このイラストは聖子のアルバム「Canary」のイメージにぜんぜん合わない。
しかしこのようなインデックスカードもどんどん使っていかないと溜まってしまう。
表紙差し替え前提でこれにすることにした。


表紙の選択
これはやってもやらなくてもいい。
インデックスカードのイラストをそのまま使えるならそれにこしたことはない。
レコードでいうジャケットにあたる部分なのでアーティストの写真をあてがうもよし。
アイドルなら「明星」や「平凡」などのアイドル誌からいくらでも選べる。
オーディオ小僧はオーディオカタログからの切り抜きもよく使った。

これまでも聖子はウォークマン、明菜はプライベートから切り取ったものは多い。

しかし、ここばかりは我慢できず現代のテクノロジーを駆使してミュージックテープからスキャナー&プリンターで作ってしまった。
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背ラベル部含めて全部使いたいところだが趣旨に反するのでここはジャケット部分だけにとどめておこう。
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録音データの記入
オーディオ小僧がインデックスに一番に記入するのが録音データ欄だ。
普通、インデックスカードには録音データの記入欄がある。
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今回のインデックスカードはこんな感じだ。
あまりよいレイアウトではないが仕方ない。

録音年月日、録音時間、ソース音源、NRの有無など。
このうちもっとも重要なのが「NR」だ。
これはカセット特有の情報であるが、「NR」は「ノイズリダクション」の略で、つまりNRをかけて録音したか、またそのタイプは何かという情報だ。
一般的にはドルビー社のノイズリダクションが有名であるが、ノイズの低減効果の違いでBやCとタイプがあった。
オーディオ小僧の場合はレコードはOFF、CDにはCタイプを多用した。
(他にはdbX・アドレスなど、後にドルビーS、HX-PROも追加された)

今回はレコードからの録音ということでOFFだ。
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なぜレコードからの録音はOFFとするかだが、ドルビーをかけることで音が不自然となることを嫌ったためだ。
また、OFFであればドルビーがついていないラジカセ等でも問題なく再生できるというのもある。
ノイズは多くとも後々のメリットもあるということだ。
(CDからのダビングではもともとノイズがないこととプレーヤーの回転精度がよいことでドルビーとの相性がよかったのでノイズ低減効果が高いCを多用した)

とにかくこの情報があるとないとでは再生時の手間が違う。
こればかりは後から判別するのは少し難しい。
友人とのカセット貸し借りの際も重要な要素となる。

足りない情報は余白に記入した。
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それにしても少ししか書いてないのにすでに字が下手そうなことが予想できてしまう・・・


曲目の記入
曲目の記入は字の下手なオーディオ小僧がもっとも苦痛とする部分だ。
当時はプリンターやパソコン等も当然ないわけで(ワープロくらいはあったのか)基本手書き、楽してFM誌からの切り張りだ。
特に長ったらしくなる英語曲名はスペースの取り方が難しい。
字が下手でセンスがない己をどれだけ呪ったことか。

注意点は記入する向きである。
通常のカセットケースは写真のようにセットすることで曲目がちょうどいい確度で確認できる。
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この向きで読めるように記入していく。
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手が痛くなるほど気合を入れた精一杯の字がこれだ。
(それにしても字だけは今も昔も変わらないものだ)
眺めながら「自分が読めればいい、音で勝負するのだ」と思うオーディオ小僧だ。


レタリング
さて、今回の作業ではもっとも重要となるインレタ作業だ。
レタリングシートまたはインレタと呼ばれる画期的な商品だ。
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字が下手なオーディオ小僧はなるべく字は書きたくなかったし、背ラベル部分は普段目にする部分でもあるのでこれはありがたく、すぐに飛びついた。
常時ストックしており、無くなりそうになると補充する。
無くなってからでは作業が中断するので常にストックが必要なのだ。

レタリングシートは転写防止の裏紙とセットになる。
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早速やってみる。
緑色と悩んだがなんとなく青のイメージ。
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まずは、インデックスカードに軽くあててイメージする。
曲がらないよう、鉛筆でガイド線を引こうか悩んだがなんだかいけそうな気がする。
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まずは1文字目。
ボールペンで文字をなぞる。
ボールペンは文字とは別の色のほうが転写できたか確認しやすい。
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この時回りを押さえすぎると他の文字まで転写してしまうので軽く押さえること。

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転写できたら付属の裏紙をあて、ボールペンの反対側でこすって定着させる。

ちなみに間違えた場合、
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メンディングテープで簡単にはがせる。
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タイトル完了。
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やっぱり曲がっている。
右上がりだ。

気を取り直して、アーティスト名を。
色を変えてみる。
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何か不自然。

全体。
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タイトルはやっぱり緑にすべきだったと思うがそこじゃないだろうという話。

とにかくこれで完成だ。
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すでにオーディオ小僧の精魂が尽き果てようとしているがまだ作業は残っている。

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鳩サブレーの缶にインデックス作成セットをしまうとオーディオ小僧は最後の作業にとりかかる。


オーディオ小僧 ダビングの流儀 その6(最終確認編)へ続く

オーディオ小僧 ダビングの流儀 その4(ダビング編)

カセットテープとカセットデッキのメンテナンスが完了したところが前回まで。

今回はいよいよダビング作業だ。
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これがCD→PCなら数分で終わるところだが、レコードの録音となると収録時間=録音時間だ。
(80年代にはレコードを倍速で再生し、同時にカセットも倍速で録音できるミニコンポも存在したがもちろんセットコンポでないと実現不可能なのが倍速ダビングだ)

ダビング作業はじっくりと音楽が聴ける時間といいたいところだが、まだその段階ではない。

また、その3で述べた通り今回ダビングに使用するカセットデッキはAKAI GX-7である。
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当時使ったAKAI HX-R44はもうないので、年代が近く同じメーカーでもあるAKAI製とした。
また、GX-7は3ヘッドであるが録音同時モニターを封印することで当時に近い録音方法をとることにした。

なお、一連の作業はオーディオマニア寄りの方法のためかなり細かい。
一般的にはもっと簡略化できる部分もあるが、あくまで当時のオーディオ小僧の流儀に則ったものとなる。


それではダビングの準備にとりかかろう。


録音レベル調整曲の選定
今回ダビングするのは松田聖子の8th「Canary(1983年)」のLPレコードである。
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オーディオ小僧がまだラジカセしか持っていない頃、初めて貸しレコード屋でダビングした思い出のアルバムだ。

さて、ここではこのアルバムの中で一番大きい音が入っている曲を選定していく。

録音レベルオーバーによる音の歪は大敵のため、最初から一番大きい音を基準に録音レベルを設定しておけば全体の音はピーク以下になるので歪のない録音ができるという理屈だ。

曲の選定方法はレコードの溝を見て決めるか実際に音を聴いて決めるかのどちらかだ。
レコードでは大きい音が入っている部分の音溝が他より荒く見えるので目立つ。
それも判断のひとつだが、オーディオ小僧は実際に聴いて決めている。
もちろん時間が許せばアルバムを通しで聴くのが理想だが、ある程度めぼしをつけていたほうが作業が早い。
まだやることは多く残っているからだ。

調整曲といっても、欲しいのはその曲の中で一番大きい音の部分だけだ。

では選定にはいろう。

・調整曲の条件
バラード調よりロック調な元気な曲

・調整個所
イントロやサビ部分など、大きい音が入ってそうな部分

そこでアルバム「Canary」の曲構成を見てみる。
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Side A
1.BITTER SWEET LOLLIPOPS★
2.Canary
3.Private School★
4.Misty
5.瞳はダイアモンド★

Side B
1.LET'S BOYHUNT★
2.Wing
3.Party's Queen
4.蒼いフォトグラフ★
5.Silvery Moonlight

※このアルバムはこれまでさんざん聴いているので曲名を見ればだいたいわかるのだが

このうちバラード調を除くと★になる。
A面1,3,5、B面1,4と半分は候補があるといったところか。
レコードの内周曲を避けるとすればA面B面それぞれ1曲目でよさそうだ。
今回はサビがよりハイトーンなB-1「LET'S BOYHUNT」を調整曲にしよう。
例えこの曲がアルバム全体のピークでなくともそこまで神経質になる必要はない。
なんというか細かそうで大雑把でよいのもアナログの特徴だ。

全くの未知の曲ばかりなら、大体1曲目で調整してしまう。
にぎやか目な曲という条件付きであるが、他にピークがあると想定して少し低めに録音レベルを設定すればよいのだ。

ちなみにCDが普及しはじめるとCDプレーヤーにピークサーチ機能がついたものがでてきた。
かつて所有したSONY CDP-777ESJ(1992年)は、CDのピーク部分をサーチし、見つかるとその部分を繰り返し再生するというものだった。
これはかなり便利であったが、その時オーディオ小僧の録音先はすでにDATへと移行しつつあったため、あまり使うことがなかった。
あくまでカセットに録音するためのピークサーチであるため、現代のCDプレーヤーには当然この機能はなくなってしまったのはいうまでもない。

さて、調整曲が決まったら次の作業だ。


カセットデッキの録音レベル仮設定と仮録音

いよいよオーディオ小僧の腕の見せ所。
ダビング作業の一番の肝となる録音レベルの設定だ。

カセットテープをカセットデッキにセットする。
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テープグレードはオートセレクト機能により「ノーマル」に自動判別された。
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テープポジションの自動判別はカセットテープのポジション検出孔により、80年代以降のカセットデッキはほぼ自動で判別される。
(70年代のメタルテープ等、一部認識できないカセットテープも存在する)

今回できることは録音レベルの調整のみだ。
テープに合った特性で録音できる「キャリブレーション機能」がないのは残念であるが、これはこれでテープの特徴がはっきりとわかり面白い。

カセットデッキを録音スタンバイ状態にする。
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アンプのレックセレクター(再生ソースの選択)はPHONOに。
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レコードのB-1の再生をスタート。
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同時にカセットデッキの録音もスタート。
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カセットデッキの録音ボリュームを上げていくとレコードの音にあわせ、レベルメーターが踊りだす。

オーディオ小僧がかつて所有したカセットデッキ「HX-R44」は電子RECボリュームだったので録音レベルの連続的かつ細かい調整ができなかった。
しかし今回使うカセットデッキ「GX-7」は左右独立のスライド式。
微妙な調整ができるだけでもありがたい。

さて、ここで「その3」でふれた録音レベル調整方法で録音レベルを決定していく。

※録音レベル設定にはさまざまな方法があり、これはあくまで一例である。
 人によっては興味深い設定方法なのかもしれない。
 録音レベルの他の設定方法はまた別の機会で詳しくまとめようと思う。

このデッキの基点となるドルビーマーク(db)がある位置は+3dBだ。
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TDK ADのMOL値は+2.5dbなので、メーターの+3dBから足すと最大入力レベルは+5.5dB。
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このメーターなら+5dBの位置に一瞬メーターが振れればこの段階では概ね問題ない。
メーターもそんな細かく表示できないので「だいたい」でいいのだ。
(しかしこのデッキ+8までしかメーターないのに+5付近までノーマルで調整するのはどう考えても高過ぎな気がする)

そういうわけでカセットデッキの録音ボリュームを少しずつ上げていく。
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ほんの一瞬だけ+5dBに触れた。
以降このポイントを超える音が入力されていないことを確認できれば一旦OKだ。

今回はピークで+5dBに一瞬メーターがふれた位置がデッキの録音ボリュームで「7」の手前だった。
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これで音は歪まない ”はず” だ。

もちろんこれでうまくいかないこともある。
うまく録音できるようになるには結局は経験がものを言う。
いかにたくさんダビングし、さまざまなカセットテープを使ってきたかなのだ。

つまり実際に録音された音を聴くまではあくまで仮の設定だ。

デジタル世代には歪んだ音というものがピンと来ないかもしれないが、つまりは再生能力に対する限界を超えた音なので、例えばしょぼいスピーカーの音量を上げすぎた時に音が割れてしまった時のような音と思えばよい。
音の歪は一瞬であれば気にならないが、連続すると音楽として成り立たないので注意が必要だ。
通常、音楽には強弱があり、レベルが一定でないため、でかい音だらけのヘビメタでもない限りそれほど神経質になるほどのものではない。
よってこれはあくまで参考として、実際は自分の耳で限界を探るほうがよりよい録音となる場合が多い。
(3ヘッドではこれが簡単にできてしまう)


いずれにしても録音レベル設定のポイントは「低すぎない・高すぎない」ということ。
せっかくの録音なので失敗したくなければ重きをおくのは「高すぎない」、ローノイズで一段階上の音を目指すなら「低すぎない」と頭に入れておけばいい。


さて、仮録音ができたらレコードの再生を一旦停止、録音も停止し、テープを巻き戻す。


仮録音の再生音確認

さっき録音した音を聴いてみる。
この作業は非常に重要だ。
2ヘッドデッキの場合、録音しながらのモニターができない。
(ソースの音しかモニターできない)

よって仮録音の音を確認して本当に問題ないかを判断したいのだ。

試聴時はスピーカーなら音量は大きめ、できればヘッドホンを使ったほうが確認しやすい。
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とはいえ、ドロップアウト(磁性体欠落による音飛び)はスピーカーでは確認しにくいのでヘッドホンがお勧めだ。

チェックすべきは点は3つある。
・テープ冒頭で磁性体の欠落(ドロップアウト)がないか?
ドロップアウトの音は音が一瞬途切れるのでわかりやすい。

テープの巻き始めは新品であってもドロップアウトが発生しやすい部分だ。
ドロップアウトがあればそれより先までテープを送ってから録音したい。
中古のカセットを使う場合は最初の部分で特に多いので注意が必要だ。

・ピーク部の音が歪んでいないか?
歪んでいなければOK。
録音レベルは適正だということだ。
さらに録音レベルを上げたければ、もう一度仮録音から試してみるのもよい。

・メーターの振れ方が録音時と同じか?
オーディオ小僧が2ヘッドデッキを使っていてもっとも悩まされた部分だ。
これはテープ感度の問題。
つまり、録音時のメーターの振れと再生時のメーターの振れ幅が異なる現象。

通常は再生時のメーターの振れのほうが録音時より小さい場合が多い。
キャリブレーションさえできれば解消できるし、3ヘッド機ならテープの音を聴きながら調整できるので、この確認は2ヘッド機ならではとなるだろう。

今回は録音時に+5dBに一瞬ふれていた部分が、再生時には1メモリ分少ない+3dBしかふれていなかった。

入力信号に対してカセットテープにそのまま信号が入ってくれなかったのだ。
この現象に当たった時、オーディオ小僧は面倒なので気持ち録音ボリュームを上げてそれでよしとしている。
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今回はぴったり7の位置まで上げておくことにし、再度の仮録音は面倒なので行わない。

(細かいことを気にする割に大雑把な部分もあるのがオーディオ小僧だ)


ダビング開始

さて、録音レベルも決まったのでいよいよダビングだ。

カセットデッキを再度録音スタンバイの状態にする。
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レコードプレーヤーを回転させ、なるべく外周に針を落とす。
(ダビング時はマニュアル操作のほうがよい)
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すかさずカセットデッキの録音もスタート。
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カセットテープがまだリーダーテープ部分を走行しているうちにレコードに針を落とすのがポイントだ。
(リーダーテープには音は録音されないのでレコードと針の接触時のノイズはこの部分でやりすごす)
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半透明なテープ部分はリーダーテープといい、録音はできない。
(ヘッドクリーニング効果があるカセットもある)

経験上これでカセットの再生開始から音楽が流れるまでに10秒弱のブランクができるはずだ。

※録音スタート方法は他に、ある程度(10秒ほど)テープを進めた位置で録音スタンバイし、レコードの針を落としたあとに録音をスタートさせるという方法もある。
ただし、この方法は確実である反面、テープの回転が安定する前に録音を開始する危険もある。

ちなみに10秒程度の送りでは足りないという説もあるが、ドロップアウトさえなければデッキの性能にもよるが10秒のブランク後に録音開始してもほぼ問題はない。
そもそも長い無音はオーディオ小僧は好まないのだ。

1曲目がスピーカーから流れはじめ、デッキのレベルメーターも踊りはじめる。

本録音の開始だ。
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これからA面終了まではレコードの針飛び、曲中のパチパチノイズのチェックのため注意しながら聴かねばならない。
針飛びすれば即やり直しで再度レコードクリーニングと針圧の調整、パチパチノイズが酷ければレコードクリーニングのやり直しだ。
新品のレコードでない限り、レンタルでは多少のぱちぱちは大目にみるしかない。
あとはピークレベルが想定より触れていないかもメーターとにらめっこしながら緊張の時間を過ごす。
2ヘッドでモニターができないのでどう録音できているかは終わるまでわからないのでドキドキだ。

やがて、A面の終わりが近づいてくるとオーディオ小僧の緊張も高まる。
テープ残量のチェック。
今回はぜんぜん余裕があるので問題ない。

レコード最後の曲が終わり、無音部分に入ったらカセットデッキの録音を一時停止。
その後にレコードの針を上げる。
(レコードから針が離れる瞬間のノイズを録音しないため)
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カセットデッキを完全停止(テープとヘッドの接触を完全解除)し、余ったテープを最後まで送ってしまう。
いきなり録音停止するとヘッドがテープから離れるタイミングにデッキによってはノイズが入ることもあるのだ。
(といってもこのデッキはREC PAUSEで即ヘッドが下がってしまうのだが・・・)

とりあえずこれでA面の録音は終了だ。


B面の録音
A面と同じ作業をただ繰り返すだけ。
しかし、その前にレコードB面側のクリーニング、レコードプレーヤーの針のクリーニングだ。
デッキ側は再度軽くヘッドクリーニングしても構わないが消磁までは必要ない。

オーディオ小僧のカセットデッキはリバース機だったのでカセット取り出すことなくB面も録音できるが、アジマスのばらつきを考慮して、ワンウェイ機同様カセットをわざわざ取り出してフォワード方向で録音をする。
もちろん再生するときは遠慮なくB面はリバースで再生するが、のちのちデッキが変わった時を考慮しての「フォワード固定録音」なのである。

自分でダビングしたカセットテープのベストな再生方法は録音したデッキで再生する「自己録再」に基本勝るものはない。

(録音したデッキよりも高性能なデッキやアジマス調整できるデッキで再生した場合を除く)
リバース機のヘッドはワンウェイデッキに比べてアジマス狂いのリスクが非常に高い。
(特にリバース側)
それを考慮してのフォワードオンリーなのである。

もしテープが余るようなら、別のレコードから余白を埋めるように録音してもよい。
テープを有効活用し、曲が終わると同時にテープエンドとなるのが美しいと言える。
あとはカセットA面に入るだけレコードB面曲も録音してしまうという手もある。
ただし、レコードはA面とB面の流れを考慮したアルバム作りをしているので、基本はレコードと同じ曲数とするのをオーディオ小僧は好む。

さて、B面も無事に録音ができればまずは一安心。
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どんな音で録れたのか楽しみだ。


オーディオ小僧 ダビングの流儀 その5(インレタ編)へ続く

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