さくの家電のーと

オーディオ、音楽、家電全般に関する備忘録ブログ

カセット

WALKMAN DD QUARTZ WM-DD9

カセットウォークマンには一部機種において「プロフェッショナル」の名を冠したものが存在した。

中でもWM-DD9はパッケージにこそプロフェッショナルの文字はないが紛れもない再生プロフェッショナルの最高峰といっても過言ではないだろう。

オレはDD9の音を聴くまではWM-D6またはWM-D6Cが一番音がいいと思っていた。
(総合的に考えればやはりWM-D6/D6Cが一番だが)

実際WM-D6/D6Cは据え置きデッキの代わりにもなり得るほどの性能であり、録音もできた。

この音こそカセットウォークマンの最高峰であることを疑わなかった。

しかし、2000年代初頭のある日、会社の先輩であり変態ウォークマンオタクでもあるS氏にDD9の音を聴かせてもらったことがある。

確かその頃、WM-D6Cがウォークマンの2001年頃のカタログで生産終了のアナウンスされており、S氏と慌てて秋葉原までD6Cを買いにいったのだ。

雪の舞うとても寒い日だった。

結局は生産終了の報で買いが殺到したのか店頭在庫がなく、工場からの直接出荷で到着を待つこととなった。

その後まもなく新品のWM-D6Cを手に入れご満悦なオレだったが、ある日これを聴いてみろとS氏から渡されたのがDD9だったのだ。

この時の衝撃は未だに忘れられない。

全くD6Cと音が違ったのだ。

最初はあまりにクリアな音に「これは音をいじりすぎていないか」と変態S氏に反論したが譲らない。

オレも負け惜しみで言ったのも半分だった。

そのしばらくあと、オレは新品のDD9を手に入れることになる。
(正確には新品と中古の2台)

改めてゆっくりとDD9の音を聴き、やはりあの時の感覚は間違いではなかったと確信した。

先輩の受け売りだが、カセットウォークマンの再生音ならDD9が一番であるとふれ回ったのはいうまでもない。

DD9はドルビーB/Cが搭載されており、Cタイプを使用した際の再生音はカセットであることを忘れさせるほどの音である。

どこがWM-D6/D6Cと異なるのかといえば、10秒も聴けばそれはわかる。

恐ろしく高域がクリアなのである。
(極端に言えばドンシャリ)

高音がキラキラすぎてD6Cに慣れた耳ではこれはやりすぎだ、と思ったほどだ。

しかし高音ばかりではない。

低音も馬力のある力強い音なのだ。

メカの動作音も極めて静かで安定している。

以前ブログにナカミチのカセットデッキの音を「ずっと聴いていたくなる音」と形容したが、このDD9もまさにそれだ。

ナカミチとは異なる音だが、他のどのカセットウォークマンとも異なる音だ。
(当時はカセットウォークマンに着目していない空白期間だったのでその存在すら知らなかった)

DAT、MD、メモリと多くのウォークマンを使ってきて、改めてDD9の偉大さを思い知るのである。


SONY WM-DD9
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※写真は2台あるうちの普段使い用

発売:1989年
価格:43,000円(税抜)
周波数範囲:20~20,000Hz
ワウ・フラッタ:0.07% WRMS
S/N比:48dB
出力:5mW+5mW
重量:約330g(ガム型電池含む)
その他:再生専用、リバース

スペックを見る限りプロフェッショナルを名乗るにふさわしい。
再生周波数は20kHzとは恐ろしいが、S/NやワウフラはさすがにWM-D6に及ばない。
D6の安定した音はこういうところからくるのだろう。
とはいえ、ポータブルとしては上出来だ。

外箱
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この箱からしてスペシャルな雰囲気が漂う。
歴代のプロフェッショナル機のキラキラ箱とはまた異なるが間違いなくただものではない。

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箱から出すとブラックの発砲スチロール容器が現れる。

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新品時のセット内容はこのようになる。
左から専用ケース、中央上が充電器及びバッテリー、中央下が収納ケース付きイヤホン、右が本体だ。
※イヤーパッドは溶けたので捨て、乾電池は液漏れしたので捨てた

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バッテリーはガム型で初期もののNC-6WMが付属。
(液漏れしているのであくまで飾りだ)
DD9は単三乾電池1本でも駆動できるので問題はない。

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イヤホンはオープンエアのインイヤータイプが付属した。
このタイプはもう使うことはないだろう。
現代のイヤホンには到底かなわない。

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専用ケースは分厚く、本体の保護はバッチリ。

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裏面にあるネジはウォークマン本体と固定するためのもの。

右側面
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上からドルビーB/C/OFFの切替スイッチ、EX DBB(エクストラ ダイナミック・バス・ブースト)は低音域の強調スイッチ、テープポジション切替スイッチはもちろんメタル対応。
CD時代になるとCDの録音にオレはCタイプを多用した。
何よりCDのダイナミックレンジを生かすにはテープヒスは邪魔だった。
(しかしレコードはNRはオフ)

左側面
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上がホールド/カセット蓋オープン/バッテリー蓋オープンのコンビネーションレバー。
これの使い勝手が抜群だ。
下がACアダプター差込口。

上面
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さすがの金メッキヘッドホン端子と回転式ボリューム。
ボリュームはやはりこれが使いやすい。

内部
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「ハの」字に見えるのが駆動用のモーターであり、型名のDD(ディスクドライブ)に由来する部分だ。
DD9はこ2のモーターでそれぞれフォワード、リバース側のキャプスタンを駆動するのがすごいところだ。
通常は扁平モーターを使用するがDD9はモーターがでかすぎて露出している。
(わざと見せているのだろう)
クォーツロックのキャプスタンサーボでワウフラは0.07%とD6Cには及ばないまでも音揺れを感じることはない。
電池を装着(電源を投入)するとフォワード/リバース側それぞれのリールが順に回転(インジケータも点滅)するスタートの儀式がたまらなくかっこいいのだ。

ヘッド回り
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ヘッドはリバース用の双方向ヘッド。
初めてウォークマンのリバース用ヘッドを見たときは本当に驚いたものだ。
こうやってリバースするんだと。
DD9には再生中に早送りすると巻取り後に自動で再生するスキップリバース機構がついている。
リバース機なのでキャプスタンとピンチローラーは二つ付いているがクローズドループのためのデュアルキャプスタンではない。

手で持つとこんな感じ。
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明らかにずっしりとした重量感。
厚みがあるもののこう見ると普通のカセットウォークマンとそう変わらない。

EX DBBは低音の増強スイッチで3段階で切り替えられる。
この機構は名前を変えながら初期のメモリータイプウォークマンまでついていた機能だ。
現代のカナル型イヤホンではまず使うことはないと思うが、昔のインイヤータイプのイヤホンは密着性が悪く、ドライバー口径がそのまま低音の能力のような感じだった。
つまり低音がまるで出ないのでバスブーストして不足を補おうという考えだったのだ。
なので現代のカナル型イヤホンを使用してDBBを入れると気持ち悪いくらいの低音と音割れでまず使えない。
DD9は出力5mWながらも機構の安定感からかとても良質な低音がでるので不要だ。

ここにDD9の音を記録しておく。

再生したカセットテープはオレが1987年(昭和62年)に友&愛でレンタルしたレベッカのCDをダビングしたもの。

録音方法は、DD9 Headphone OutからPCM-A10 MIC Directである。

・ソース情報
REC DATE:1987/11/27
TAPE:TDK AR-X C46(TYPE Normal)
CASETTE DECK:AKAI HX-R44
CD Player:Pioneer PD-7010
以下参考(当時のマイシステム)
AMP:SANSUI AU-D707X Decade
SPEKER:ONKYO D-77X
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・元音源情報
ALBUM:REMIX REBECCA
ARTIST:REBECCA
MEDIA:CD
から、Love Passion、CHEAP HIPPIES、WHEN A WOMAN LOVES A MANの3曲を。
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これは録音時にレンタルしたオリジナル盤ではなく現在所有する最新のBSCD2盤だ。
もともと録音がいいCDなので、今もシステムチェックCDのひとつとして使っている。
このシリーズでレベッカアルバムを全て集めなおした。

・DD9設定
TAPE Position:Normal
DOLBY NR:C
EX DBB:OFF
※ヘッドホン端子出力のためEX DBB回路を通るため

・PCM-A10設定
REC MODE:MP3  320kbps

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※DD9は使用時間の極めて少ない新品のほうを使用した

1.Love Passion

LOVE PASSION.mp3

2.SECRET DREAM

SECRET DREAM.mp3

3.WHEN A WOMAN LOVES A MAN

WHEN A WOMAN LOVES A MAN.mp3


これが30年以上前のノーマルテープの音?
いやアナログカセットの音?
と知らない世代なら思うかもしれないがごく普通にこれくらいの録音ができる人は当時ごろごろいた。
音源はDD9の実力がわかるよう、ちょっとドンシャリが強いものを選んだ。
ちょっとやりすぎかなとも思ってしまうが、まずこれらを聴いて思うのは現代のミックス方法と異なるということだ。
現代の音といえばとにかく真ん中に音が集まり、モノラルばりのものが多い。
対してこのアルバムはドラムからシンセから左右にブンブン飛び回る。
これが現代の曲しか知らない者には”音酔い”するらしい。
(音酔いという言葉も初めてきいたが、どんだけ三半規管が弱いんだ)
そりゃヘッドホンで聴いてりゃ気持ち悪いというのもわからなくもない。
しかし、当時は今よりもずっとスピーカーで音を聴いていた人が多かったのだ。
だからヘッドホンで聴くことが多いであろう現代の音はステレオ感が乏しいのであろう。
(逆にいうと現代の音楽はスピーカーで聴くとつまらない)

話がそれたが、これは今(2020年)から33年前にノーマルのカセットテープに当時のオーディオ小僧が録音したカセットの音だ。
(いくらノーマルテープといってもTDK AR-Xは現代のノーマルとはレベルが違うが)

録音時に使用した機器についても高価なものでもない。
(HX-R44は当時AKAI電機で一番安いエントリーモデルだった)

しかし当時のオーディオ小僧の録音もさすがであるが、DD9の再生能力も驚くばかりだ。
(今日まで保存してきた元オーディオ小僧のカセット保管力もさすがである)

しかもこの音はコピーのコピー(CD→カセット→ICレコーダー)の音であり、さらにMP3で圧縮されたもの。

それを考えるとDD9でダイレクトに聴くカセットの音がどれだけすごいのか想像がつくだろう。

これを使ってカセットのデジタル化を考えてもいいレベルだ。

いや、むしろDD9の音を残すためにデジタル化しておくべきかもしれない。

初期の名機 NR-C 初搭載モデル WM-DC2

カセットウォークマンの初期の名作といえばDC2をあげる人も多いだろう。

デザインはWM-2やDDを踏襲。使いやすく完成された元祖ウォークマン的なデザイン。

しかしDC2以降、ウォークマンはダウンサイジングの道を辿っていく。
音質的には数あるカセットウォークマンの中でも上位を占め、後発のウォークマンは
プロフェッショナル機を除き、DC2の音質を凌駕するものがなかなか出なかった。

そういう意味では完成されたカセットウォークマンとも言える。

SONY WM-DC2
価格 35,000円
イメージ 1

サイズ(WxHxD):79.6x110x33.2mm
重量(乾電池含む):305g

再生専用のプロフェッショナルウォークマンである。

カセットウォークマンは最終的にはカセットケースサイズと同等まで小型化されたが
DC2はカセットケースより一回り以上大きく、厚みはカセットケース2個分といった感じだ。

オペレーション部
イメージ 2

再生、停止、早送り、巻き戻しとわかりやすく操作しやすいデザイン。
ボタンのストロークもカチッと気持ちよく入り、確実な操作ができる。
ボタンは側面でなく大きい面に配置されるため、デザインに影響するわけだが見事に融合した機械美。

右側面にはスライド式スイッチでノイズリダクションのB,C切り替えとテープポジション切り替えが配置されていた。
この機種はメタルにも対応なので万能だ。
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ヘッドホン端子とは別にラインアウトまでついているのはプロフェッショナルの証といえる。
ラインアウトはボリュームと連動しないのでアンプやアクティブスピーカーとの接続に使える。
回転式のボリュームはやはり使い易い。
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乾電池は単三形2個を必要とするが、アルカリで7時間、当時はなかったニッケル水素電池なら更に長時間の再生が可能だ。
(当時の再生時間はこれが普通だった)
電池食いなので充電式電池の使用が経済的。
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ヘッドはアモルファスヘッド。
このころからウォークマンはアモルファスヘッドに変更され、据え置き型も含めてアモルファス
の時代が到来する。
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半導体メモリーを使用したポータブルプレーヤーはメディアのサイズに依存されないが、メディアがカセットテープである以上、サイズやデザインには制約がつきまとう。

DC2の発売当時はまだまだダウンサイジングの余地は十分残されており、ソニーほか各社がしのぎを削った部分でもあった。
新製品が出るたびに、小型化、長時間再生、多機能化されていったので、新型が待ち遠しく、買えなくてもカタログを穴が開くほど眺めたものだ。

機械というものは古いものより新しいものがいいのは当然だ。

しかし当時の音を聴くには新しいものではどうしても表現できない部分があるのも確か。

今となっては音質的には絶対に敵わなくても、音楽というものは音質だけで決まるものではないということを改めて思い起こさせてくれる。

当時のカセットを当時の機器で聴くことほど贅沢なことはない。

プロフェッショナルウォークマン WM-D6

カセットウォークマンにはプロフェッショナルモデルがいくつか存在した。

プロフェッショナルといっても一般発売だったが、他モデルとの差別化で筐体が大きく高価だった。

実際の業務用を除き、プロフェッショナルと正式に呼ばれたウォークマンはカセットタイプのみだった。

もちろん、CD・DAT・MDのウォークマンでもプロフェッショナルと呼ぶにふさわしいモデルは存在したが、商品名としてプロフェッショナルという言葉が使われることはなかった。

しかしプロフェッショナルという響きはなんともマニアの心をくすぐるものだ。
価格も当時のラインナップの中で一番高かったので買えなかったが、その性能は今でも語り継がれるほどすばらしく、中古市場においても人気は根強い。

SONY WM-D6
60,000円
イメージ 1


【仕様】
ワウ・フラッター:0.04%WRMS
周波数特性:40~15,000Hz±3dB(メタルテープ使用時)
SN比:56dB
NR:B
最大出力:30mw+30mw
サイズ(mm):W170×H38×D93
重量(乾電池含む):640g
電源:単三乾電池×4、ACアダプタ

このスペックを見てわかる人にはわかるだろうがすごいというほどの数値ではない。
だだし、ワウ・フラ、周波数特性、SN比は当時のポータブルプレーヤーとしては驚異的な数字だ。
最大出力が30mwというのは当時通常ウォークマンが5mw程度であり、その後もMDウォークマンくらいまでは5mwが普通だったので、とても印象に残っている。

プロフェッショナルだけにでかく、重い。
イメージ 2

すでにポータブルというには厳しいサイズであるが、それでも欲しく憧れだった。

バッテリーはアルカリ電池で5時間程度。
当時としては標準的ではあるが、ただ電池は4本必要だった。
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D6の渋いところはカセットテープのセット方法。
通常はフタ側にカセットガイドがありそこにカセットを入れて、フタを閉めてセットするが、本器は本体に直接カセットをセットし、フタはただのフタであるところ。

セット方法は検出孔側から。
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次にテープ面をセット。
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このような形状のため、取り出しの際はフタを先に手で開けてからイジェクトボタンにてテープを取り出す。

基本操作部分。
ボタンはストロークと手ごたえがあり、キッチリ入る。
イジェクトと停止ボタンは兼用。
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マニアックなスライド式ボリューム。
スライド式は微調整がやりにくい。
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右側面はヘッドホン端子(2個)とライン入力兼マイク入力端子。
ラインとマイクの切替はスイッチで行う。
さすが録音機だけあって、大きめの録音ボタンとレベルツマミが目を引く。
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ライン出力は後ろにある。
そしてプロの名にふさわしくテープ速度も変更可能。
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操作状態の確認は本体全面右側に集中配置。
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3桁のアナログカウンター、5連ピークレベルメーター、テープポジション、NRの状態が一目でわかる。
据え置きタイプ並みであるので、家でメインデッキとしての使用もありだ。

ちなみにレベルメーターはスイッチの切替でバッテリー残量も確認できる兼用タイプ。
ただし5段階に残量表示するのではなく、光の濃淡で判断。
初期のウォークマンの電池残量はどれもこんな感じだった。
赤ランプが暗くなると電池がそろそろヤバイなと。
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D6のヘッドは音楽用に適しているといわれたS/F(センダスト・フェライト)ヘッドを採用している。
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これがS/Fヘッド。
以降、カセットウォークマンに採用されたアモルファスヘッドよりも音質がいいと言われていた。
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屋外での生録・取材用途として専用のキャリングケースが付属した。
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ケースに入れた状態でも各操作ができるようになっている。
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イメージ 16


音質は、通常のカセットウォークマンの性能を遥かに凌駕する。
ワウフラの数値はダテでなく、音揺れもほとんど感じない。
パワーもあるので据え置きデッキに近い音だ。

このモデルの後もプロフェッショナルモデルは数台発売された。

特にWM-DD9はずば抜けた音質であったが、性能、音質ともトータルで考えると、やはりWM-D6がカセットウォークマンの最高峰であろう。
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