さくの家電のーと

オーディオ、音楽、家電全般に関する備忘録ブログ

◆オーディオ&ビジュアル◆

40年の時を超え復活 オーディオテクニカ サウンドバーガー AT-SB2022

2022年11月 オーディオテクニカの創立60周年記念モデルとして、

・MCカートリッジ:AT-MC2022
・ヘッドホン:ATH-W2022
・ワイヤレスヘッドホン:ATH-WB2022
・ベルトドライブターンテーブル:AT-LP2022
・サウンドバーガー:AT-SB2022

が発売され、大きな話題となった。

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※オーディオテクニカHPより

全て限定生産につき数量限定ということで100万越えのヘッドホンさえ売り切れるほどの人気である。

その中でも俄然注目を浴びたのがサウンドバーガー(ポータブルレコードプレーヤー)なのだ。
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※オーディオテクニカHPより

記念モデルといえばスペシャルなスペックを持ったモデルという印象が強いが、サウンドバーガーだけは毛色が違い、オリジナルの復刻モデルだったのだ。

さて、オーディオテクニカと言えばオレがオーディオ小僧に目覚めた1980年代以前からオーディオアクセサリーを中心に力を入れるオーディオメーカーだ。

ヤマハ、ソニー、パイオニアなど、ハードメーカーに比べれば目立たない存在ではあるが、かゆいところに手が届くアクセサリーを数多く発売し、音楽愛好家ならお世話になっていない者はいないほどの知名度を誇っている。
オレもオーディオテクニカはアナログアクセサリーを中心に現代でも途切れなく使っており、なくてはならない存在だ。
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そんな縁の下の力持ち的なオーディオテクニカもハードを全く出していなかったわけではない。

そのひとつがサウンドバーガーである。

オリジナルのサウンドバーガーが発売された当時のオレの記憶はとてもおぼろげだ。
何しろまだオーディオに目覚める前(小学生)だったので無理もないがその存在だけは覚えている。
まぁ仮に興味があったとして、まともなレコードプレーヤーさえ持っていない子供が初めての1台にポータブル機を選ぶことはまずないし金もない。
レコードプレーヤーは家にあるにはあったが、蓋を開けたらスピーカーになる7インチタイプターンテーブルを備えたナショナルのポータブルもどき(割とでかいやつ)プレーヤーでアニメやヒーロー物の音楽を聴いていた。

何よりレコードは家で聴くものであり、ウォークマンのように外に持ち出して聴くようなものではないことは多くの人々の思うところであり、レコードのポータブルなんてとんでもないという風潮が強かったと思う。
(もっともウォークマンのように歩きながら聴けるものでもないが)
そんな常識外れのサウンドバーガーは当時不遇な扱いを受けていたと思うのだ。

あれから40年の月日が流れた。

現代に蘇ったサウンドバーガーは、当時否定的だったオレはもとより多くの人々の注目を集めることとなった。
レコードが当たり前だった時代より、レコードが復権した現代のほうがサウンドバーガーの存在意義が認められるとはなんとも皮肉な話である。
だからそこに目を付けたオーディオテクニカはあっぱれだ。

さて、今回の復刻のニュースを目にしたオレはこれが猛烈に欲しくなった。
当時と今とでは状況は激変しているのでオレの気持ちも変わっているのは言うまでもない。

なぜなら近年はレコードをもっと手軽に聴きたいという願望が強く、2021年の夏に購入したのがオンキョーのポータブルプレーヤーだ。

ONKYO ポータブルターンテーブル OCP-01
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これは非常に有意義な買い物となったが唯一の不満は音が悪いことだった。
ただ悪いといってもこのタイプではごく標準的な音。
内蔵スピーカーの音のショボさからヘッドホンでも出音のチェックを行ったが、このプレーヤー特有の中音域に重点をおいた音の傾向は変わることはなかった。
まぁ音には期待しないことを承知で購入したので不満というわけではない。
あえてローファイな音を当時のスタイルで聴くところにこれの良さがあるのだ。
ある意味予想通りであり、ONKYOもそのつもりで作っている。

そういうわけで手軽に聴けるレコードプレーヤーはすでに持っている。
しかもこれを買ったら4台目になる。
(全部安物だったり、中古だが)

もう満足だろ?終わりにしよう?

という心の呼びをかき消すだけの魅力がこのサウンドバーガーにはあったのだ。

なによりウォークマンをこよなく愛するオレにとって、小型かつギミックの効いたガジェット感漂うサウンドバーガーはオレの心を鷲掴みにした。
たったそれだけの動機であり、音は二の次で購入の意思を固めたのだった。

サウンドバーガーはもともとオリジナルが1982年発売なので今回は復刻版という扱いだ。

そこでまずはオリジナルについても少しは知っておくべきと思い調べてみた。

ステレオディスクプレーヤーシステム サウンドバーガー(1982年)
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※YouTubeチャンネル「AUDIO VISUALLY」様より画像をキャプチャーして引用

・本体のみモデル
型名:AT727X
価格:23,800円

・アクセサリー付きモデル
型名:AT727
価格:28,000円
備考:ミニステレオホン(インイヤータイプ)、アクセサリー付き

【共通仕様】
トーンアーム:ダイナミックバランス型
カートリッジ:VM型
再生周波数:30~25,000Hz
電源電圧:4.6V DC
重量:1.2Kg

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※当時のチラシ

チラシにある通り、販売形態は2パターンあり、付属品の有無で大きく価格が違ったようだ。
カラーバリエーションはレッド、イエロー、シルバーの3色から選べた。

単二乾電池3本で駆動し、本体にはボリュームつまみ、ラインアウト×1、ヘッドホン端子×2、ACアダプター端子を備える。
現物は持っていないのでYouTubeでいろいろ見たが音は「悪くない」という意見が多い。
復刻版においても意外に「悪くない」という評価が多く期待が膨らむ。
※「音が良い」「音が悪くない」この表現の違いはとても印象が変わる

さて、発売当日の騒動もSNSで話題となっていたのでオレの顛末も記録しておこう。
騒動の根本原因はサーバーが弱かったことに起因する。

1.ユーザー登録は事前に済ませログインしている状態からスタート
2.11/7(月)10時前 PCにオーテクのサウンドバーガーページを表示
3.10時数秒前からブラウザの更新ボタンを押すが更新自体できない
4.しばらくして画面が更新され、カートがオープンされた画面に変わる
5.しかし、、、「在庫×」
6.絶望の中、一応更新ボタンを押す
7.するとなぜか「在庫わずか△」に変わった!
8.わけがわからないがすかさずカートにイン
9.しかしカートに入ったのかどうかもわからない
10.画面を更新しているとカートが点灯
11.購入画面に行きたいがやっぱり画面が遷移しない
12.そうこうしていると情報入力画面に変わる
13.大急ぎで住所やカード情報を入力し次へを押す
14.しかし、、、決済エラー・・・(カードが承認されない)
15.カートには入っているのでもう一度10番からやりなおす
16.再度確認画面に遷移させるが再び決済エラー
17.スマホを見るとカード会社から承認要求が来ていたので許可する
18.また10番からやりおなし、今度はカード決済が承認され確認画面に変わる
19.購入するボタンを押す
20.エラー(最初からやり直してください・・・)
21.一旦諦める
22.休憩後また10番からやり直すがやたらと重い
23.時間は10:30、何気なくスマホを見るとメールがきている
24.10:09の時点で購入できていたいたことに気づく

サーバーのこともあるので購入完了メールさえエラーではないかと疑う。
しかし、2日後の11/9 午前9時頃 ヤマト運輸から無事配達された。
いろいろバタバタしたがこれはおそらく早い到着組だったと思う。

それでは本題に入ろう。

audio-technica SOUND BURGER AT-SB2022

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名称:ワイヤレス ステレオ ディスク プレーヤー システム
発売日:2022年11月7日(再販は12月1日)
価格:23,800円(税・送料込み)
付属品:1.5mUSBケーブル(USB Type-A/USB Type-C)、オーディオケーブル、45RPMアダプター
別売:交換針 ATN3600L
備考:限定生産(7,000台)、オリジナル手ぬぐい付き

本体+同梱物一式
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オリジナル手ぬぐい
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【主な仕様】★は独自調査
●本体
電源:DC3.6Vリチウムイオン電池(内蔵式)
駆動方式:ベルトドライブ方式
駆動モーター:DCサーボモーター
回転数:33-1/3または45回転/分
ターンテーブルプラッター:アルミニウム製
ワウフラッター:< 0.25% (WTD)at 3kHz
S/N比:> 50dB(DIN-B)
カートリッジ型式:VM型ステレオカートリッジ
針圧:3.5g弱★
出力レベル:標準値150mV(1kHz、5cm/秒) (No phono-output)
PHONOプリアンプゲイン:標準値36dB、イコライザー特性RIAA
充電仕様:5V 0.5A
消費電力:1.5W(充電時)
充電時間:約12時間*
使用可能時間:約12時間*
 *使用条件により異なる
入力端子:USB Type-C ジャック
外形寸法:H70×W100×D290mm
質量:900g

●通信部
通信方式:Bluetooth標準規格Ver.5.2準拠
最大通信距離:見通しの良い状態で10m以内
使用周波数帯域:2.4GHz帯(2.402~2.480GHz)
対応コーデック:SBC
伝送帯域:20~20,000Hz

本体背面
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右から給電用のUSB C端子と有線出力用のラインアウト(ステレオミニ)端子のみ。
持ち運び用のベルトもオリジナル同様についている。
限定生産である証のシリアルナンバー表示が誇らしい。

本体操作部
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電源スイッチとスピード切替スイッチのみ。
シンプルなので取説も不要だ。
写真はパワーオン、45回転でLEDが白点灯時。
(保護シールは操作部や余分な部分を切り取って剝がさないことにした←見た目悪いが)

見た目はオリジナルとほとんど変わらないように見える。
1982年デザインなので古さはあるが、だからといってこれ以上手を加えるところがないと思えるほど洗練されたデザインだ。

さて、まず最初に着目したいのは価格である。
オレは23,800円という値を知った時

「安いような気がするがまぁこんなもんか、妥当かも」

と思いつつ、

「どうせオリジナルより高くなってるんでしょ?」

とも思った。

しかし、オリジナルの価格を調べると前述の通り、アクセサリーなしのAT727Xと全く同じ価格だったのだ。
そんなことが可能なのか?

当時と今とでは貨幣価値も違うしオリジナルより値上がりしててもおかしくない。

そこでネットで調べてみた。
日本円消費者物価計算によると、結果は以下である。

・1982年を基準にすると
CPI:1982年(S57)の23,800円は、2019年(R1)の30,172円にあたります(1.27倍)

・2019年を基準にすると
CPI:2019年(R1)の23,800円は、1982年(S57)の18,773円にあたります(0.79倍)

※2019年までしか計算できなかった
※CPIは消費者物価指数(持家の帰属家賃を除く総合)をもとに貨幣価値(物価)を計算

つまり当時の23,800円の感覚で売るなら現代は30,172円で売ってイコール。
また、現代の23,800円は当時の感覚なら18,773円で売られていたということにもなる。

これはオリジナルよりもコストダウンしているという見方もできるが、作り続けていないのでむしろコストは高くなりそうなもの。
むしろ60周年記念の出血大サービス価格ということになるのかもしれない。
オーディオテクニカがいかにがんばったのかが伺える。

なのでこのプロダクトに限って言えば、23,800円を高いと思うのは筋違いということになるんだろう。
各個人のものさしで計るなら23,800円の重みがそれぞれに違うのは当然。
高いとみるか安いとみるかは個人の自由だが、物の価値を見定める場合、それが障害となり実際「お買い得」なことを見逃すことほど不幸なことはないだろう。
何か欲しいものがある時は少しはそれについて調べて判断すべきだと思い知らされた。

お買い得なことはわかった。

しかしオリジナルより劣っているようではただの手抜きの劣化版である。
オリジナルのクオリティを保ちつつ、現代版には+αがあってしかるべき。
見る限り質感は変わっていないようなので「どこが進化し、どこが退化したのか」を挙げ、それがメリットであるかデメリットであるかを確認してみたい。

【オリジナルから進化した点】

・Bluetooth接続ができるようになった

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結論から先にいうとメリットでしかないだろう。
これはもう現代のオーディオプレーヤーには必須の機能といえる。
先述したONKYOのポータブルプレーヤーは受信機能はあったが送信機能はなかった。
(レコードの音は無線で飛ばせなかった)

サウンドバーガーはONKYOより更に小型であり、スピーカーを内蔵するスペースなどないので、当然Bluetoothは必須な機能だ。
本来のレコードの音を聴くならラインアウトで有線接続すべきだが「普段聴きは無線、リッピング等するなら有線」という使い分けができるのは現代的でスマートだ。

・バッテリー駆動(充電式リチウムイオン)になった

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オリジナルの電池ボックスと同じ位置にネジ固定であるが充電式バッテリーが格納された。
充電式バッテリーとなったのはありがたいが、気になるのは電池が劣化した時どうするかだ。
蓋を開けて確認するとバッテリーは簡単に交換可能なようでとりあえず安心した。
(それでもいつまでこのバッテリーが手に入るかは不安だが)
ともあれ乾電池よりもランニングコストは段違いにいいということになる。
乾電池式のまま発売してたら、むしろ酷評されていただろう。
歓迎すべきメリットとなる進化である。


【オリジナルから退化した点】

・ボリュームの省略
個人的にはボリュームが無いことが一番気になった部分だ。
本体でボリューム調整ができないということは外部アンプやスピーカー(ヘッドホン)側での音量調整が必要ということになる。
使い方はある意味制限され、外部機器に委ねる部分となる。
ラインアウト出力もBluetoothも音量は固定なので、ボリューム調整は外部機器にて行うことが前提の商品なのだ。
これをデメリットと取るかは意見がわかれるが、個人的には音響回路の接点がひとつでもなくなり、ノイズの原因ともなる「ガリ」の心配がないという意味ではメリットが大きいと捉えたい。

・ヘッドホン端子の省略
オリジナルにはヘッドホン端子がA/Bの2系統あった。
これはまさにソニーの初期カセットウォークマンと同様だ。
外で聴くポータブル機を誰もが持っていない時代はこの意味は大きい。
しかしこれもボリュームあってのヘッドホン端子。
音量調整できなければ省略せざるを得ないのは当然だ。
復刻版は有線出力がステレオミニの音量固定ラインアウト1本のみとなったが、ここに有線でヘッドホンを接続することはできることはできる。
(ただヘッドホン側で音量調整ができなければ使えない)
普通に考えてここにヘッドホンを有線接続して聴こうとする人はもうほとんどいないだろう。
ボリュームの省略でリスニングスタイルが少し変わるということだ。
製造コストや現代のリスニングスタイルを考慮すればやはりメリットとすべきだろう。

結果的に進化点、退化点は全てメリットとして受け止めることにした。
(個人的に)

さて、ここまでの検証で復刻版サウンドバーガーはオリジナルにひけをとらないどころか、より現代風にアレンジされ蘇ったものであることがわかった。

次は単純に問題点である。

復刻版で歓迎すべき最たる部分はUSB端子の採用とBluetooth接続の追加である。
現代のオーディオプレーヤーとして必須の機能であるが一部ユーザーからは不満の声が上がっている部分もあるようだ。

・入力端子:USB Type-C ジャック
本体の充電端子はUSB端子であり、USBケーブルType-A to Cが付属する。
本体側がCでコンセント側がAという使い方になる。
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充電の際は付属のケーブルを使用し、Type AのUSBコンセント等に接続する。
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全く問題ない。
が、近年はType Cの使い勝手の良さからC to Cケーブルの需要があるのも確か。
そして問題はそのC to Cケーブルでは充電できないとの報告があることだ。
オレの場合、家のコンセント(テーブルタップ)はほぼType Aの端子付きに交換しており、今のところ不自由はしていないので改めて検証はしない。
今後のことを考慮してもType A形状が無くなることはまだまだないと思われるが、忘れた頃にC to C接続をして充電できないということにならないよう、このことは頭の片隅にでも置いておく必要があるだろう。

・対応コーデックがSBCのみ
本機はBluetooth接続で外部スピーカー等と無線通信する際のコーデックに「SBC」を使用している。
コーデックとはBluetoothでは無線送信する際に音楽データを圧縮するための圧縮方式を指す。
そのごく一般的なものが「SBC」であるので問題ないといえば問題ない。
また、SBC方式に未対応という機器も少ないだろう。
問題なのはSBC方式は古いということ。
この方式は音質や遅延状況があまりよくないのだ。
例えば、SONYなら「LDAC」、Androidなら「aptX」、iPhoneなら「AAC」を採用しており、これらは「SBC」よりも音質が良く、低遅延であることで知られている。
これらに対応していないことについて、オレ個人としては特に気にならない。
理由はBluetooth接続して聴く時は気軽に聴く時だからだ。
また、サウンドバーガーは安価なポータブルプレーヤーでありアナログ音源であることも忘れてはならない。
レコードをBluetoothで飛ばした時点でそれはもうレコードの本来の音ではなくなるからだ。
だからそこに執着するなら他のプレーヤーを買った方がいい。
多くのコーデックに対応することで価格が上がるのもいやだし、高音質で聴きたいのならオレはラインアウトで有線接続する。
そもそもの話、Bluetooth接続にオレ個人としては音質を求めないし、音源がレコードであればなおさらだ。
もちろん考え方の違いはあるだろうが、気軽に聴けることが売りのサウンドバーガーに多くを注文するのはちょっと違うような気がするのだ。
また遅延に関しては音声のみならより気にするものではない。

・キャリングケースがない
発売前からわかっていたことだが「キャリングケースはどうした?」である。
ポータブルなのでケースはやはりほしいし、家に置いておくにしても普段はケースに入れてホコリを防ぎたい。
これオリジナルにはついていたようだ。
限定生産で7,000台なので仮に作るなら最低7,000個は作ってほしいが発売後となってはそれが全員の手に渡ることは難しい。
サードパーティーから出てくるか、手作りするか、今後の動向を見守りたい。


そして最後に検証するのは肝心の「音質」だ。

オレはサウンドバーガーは本格プレーヤーではないのでもともと音には期待していない。
ただ、これ1台でレコードを聴き続けたいという人にとってはそれなりの音質であって欲しいということにもなるだろう。
オーディオ製品にとって音質は最重要事項であるが、その反面音質評価は曖昧であり、捉えどころがないものなので他人の評価を鵜呑みにすることは非常に危険だ。
ときにオーディオ評論家やマニアの音質評価は「ポエム」のようだと揶揄されることもあるが、まさにその通りであり、そうなるのも当然なのだ。
オーディオを長くやっていれば誰もが詩人になってしまう。
詩人には詩人にしかわからない言葉の「あや」があったりなので、それを第三者がどう解釈するかで印象は変わってしまうのだ。
ポエムが苦手なマニアは科学的に音を分析しようとするも、それでも一部マニアにしか伝わらないものとなる。

「自分がいい音だと思えばそれがいい音」

ということで解決してもいいが、商品をレビューするならその言葉はあえて封印したい。

1台のプレーヤーの音の良さをロマンチックなポエムを並べ立てて評価したところで理解しろという方が無理がある。

そこで今回は別プレーヤーとの比較とした。

音質に定評がある○○プレーヤーと比較し、このプレーヤーは音が○○です。
とすれば一応指標がある。
その「音質に定評があるプレーヤー」を聴いたことがあればより分かりやすいということだ。
まずは自分のいい音の基準は何かを明らかにするだけでも他人が受ける印象も多少変わるかもしれない。
また、聴かずしての音質良否の判断は他の多くのレビューを参考にすべきであることも至極当然である。

で、今回の基準はオレが所有する据え置き型の中級機のプレーヤー DENON「DP-59L」である。
うちの中ではフラッグシップのレコードプレーヤーだ。
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※写真はわかりやすい「オーディオの足跡」様より引用

1984年に発売されたものだが、メンテしていれば未だ申し分ない再生能力を持ち、当時も評判が良かったレコードプレーヤーだ。
(おそらく今これと同じプレーヤーを作るのなら当時の倍以上の値段になるのでは?)

このプレーヤーとサウンドバーガーを比較するのは少々酷ではあるが、「音は悪くない」との前評判があるのでこれにどれだけ太刀打ちできるかが見ものだ。

音の聴き比べはそれぞれを以下の方法で行う。
1.ラインアウトをアンプに接続してスピーカーから聴く
2.ラインアウトの音を直接聴く
※Bluetoothによる比較はDENON側ができないので省略

【試聴環境】
アンプ:YAMAHA RX-A2040
スピーカー:KENWOOD LS-K901+SW
PCMレコーダー:SONY PCM-A1(録音用)

以下DENON DP-59Lのみ
MCカートリッジ:DENON DL-103
MC昇圧トランス:Phasemation T-300

ついでに音質に影響すると思われるスペックを参考までに挙げておく。

・AT-SB2022
モーター制御:ベルトドライブ
S/N比:50dB
ワウ・フラッター:0.25%
針圧:3.5g弱(実測)

・DP-59L
モーター制御:クォーツロックダイレクトドライブ
S/N比:82dB
ワウ・フラッター:0.02%
針圧:2.5g(使用カートリッジ推奨値)

わかる人ならこれをみればおおよその素性は推測できるだろうが簡単に説明しておこう。

まず、レコードプレーヤーの駆動方式にはざっくり分けてモーターの回転をベルトをかけて伝える「ベルトドライブ」とモーターからダイレクトに回す「ダイレクトドライブ」がある。
(他にリムドライブなどもある)
どちらもメリットデメリットがあるが、サウンドバーガーのようなポータブルプレーヤーのほとんどがベルトドライブ方式を採用している。
ただし、高級機=ダイレクトドライブというわけではない。
ここではサウンドバーガーのベルトドライブの出来が試されることになる。

S/N比は信号対雑音比で数字が大きいほど静寂性がある(=ダイナミックレンジが広い)と解釈してもいいだろう。
筐体の堅牢さやカートリッジ、アーム等さまざまな要因が絡むと思うが、本来サウンドバーガーのような簡易プレーヤーではいいものは少ない。
これが聴感上どれだけ確認できるものなのかを注意して聴きたい。
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カートリッジは安っぽさはあるものの、作りは本格的カートリッジのうような佇まいだ。

ワウ・フラッターは回転ムラであり、ターンテーブルが一定の回転数で回っているかの基準。
数字が小さいほど音がゆらゆらしない優秀機といえる。
(JISでは3%以下と定められている)
サウンドバーガーはスペースの限られたベルトドライブ方式のため、スペックを見る限りでも期待はできないが、それにしてもこのプラッターはただものではない。
明らかに重いのだ。
高級プレーヤーはプラッター部分だけで数キロあるのが一般的で、プラッターが重いことは回転モーメントに有利に働き、ワウフラ値の改善に貢献できる。
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このプラッターには驚いた。

最後の針圧はあくまで参考として。
針圧は使用するカートリッジによって決定される。
適正な針圧をかけなければもちろん音質に影響する。
なぜ針圧を比較するのかというと、DP-59Lの調整上限は最大で3gであるのに対し、サウンドバーガーの実測値が3.5g近くあったことに驚いたからだ。
(ただし個体差はあると思う)
簡易プレーヤーはダンパーで針圧をかけているものが多いので実質調整は不可能であり、カートリッジも専用品となるため、この3.5gが重すぎると言いたいわけではない。
ただレコードの方がちょっと心配かなというのはあるが、実用上は問題ないのだろう。

こうやって並べてスペック比較するとDP-59Lはレコードプレーヤーとして申し分ない性能だ。
参考までに先述のONKYO ポータブルプレーヤー「OCP-01」のワウフラはJIS上限である3%以下としか書いておらず、実際聴感上でもはっきりと揺らぎが認識できる。
(ただ、OCP-01の購入価は9,180円であることを忘れてはならない)
希望としてはOCP-01のように明らかにローファイな音でなければよし。
欲を言えばレコードのリッピング(ダビング)にも耐えうるくらいの音が出せれば御の字だ。

それでは、実際どうなのか確かめてみよう。

音源は何より自分が聴きなれた曲がベストである。
そこで以下の2枚のアルバムから1曲ずつチョイスした。

●松田聖子 Canaryより「Silvery Moonlight」
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この曲を選んだ理由はかつてワウフラの揺らぎを経験した中で最も印象に残っていた曲だからだ。
B面5曲目なのでLPレコードの最内周曲。
つまり角速度一定のレコードにとって最も音が悪い部分。
ワウフラは回転偏差なので外周より内周のほうがより確認しやすいということで。
ポイントはボーカルがない間奏ピアノソロ部分あたりがわかりやすいだろう。
また内周であるがゆえのどんずまり感もプレーヤーの性能をチェックするにはちょうどよい。
この部分をうまく再生できれば言うことないのだが。

●中森明菜 BESTⅡより「DESIRE-情熱-」
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これを選んだ理由はCanaryとは真逆の理由。
このアルバムはオリジナル33回転を45回転の2枚組としたブリッジ盤である。
SIDE2の1曲目なのでレコードにとってはもっともおいしい部分。
なおかつ12インチ45回転なら一番いい音で聴けるはずだ。

ブリッジ盤の詳細は以下

中森明菜 2020年レコードの日限定盤 BEST・BESTⅡ(2枚組レコード ブリッジ盤)

以前の記事では2018年復刻版LPとの比較試聴を行い、勝負にならないほど音がよかった。
音圧が高く、かつ激しく波打つ音溝をピックアップがどれだけトレースできるか、また針飛びや歪なく再生できれば合格だ。
そもそも針圧が最適でなければ破綻するので特にサビ部分に注目だ。


1.ラインアウトからアンプに接続してスピーカーから聴く
この方法はBluetooth接続したスピーカーから出る音だと思っても概ね問題ないだろう。
アンプとスピーカーという外部機器の性能に左右されるが環境は同じなので違いは分かりやすい。

まずはDP-59Lから。
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Canary「Silvery Moonlight」

もともと録音のいいアルバムである。
ただそれ故、下手なプレーヤーで再生すると粗が目立つという特徴がある。
しかしさすがにDP-59Lは終始安定した圧倒的な音を聴かせる。
まず解像度が高く緩急の表現も抜群だ。
針圧が最適でないとサビのボーカルがすぐに歪むのだがほぼ問題ない。
また間奏のピアノソロ部分もゆらぎは感じられず、音楽に集中できる安心な音だ。

Canary「Silvery Moonlight」空気録音サンプル
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BESTⅡ「DESIRE-情熱-」
とかくうるさくなりがちなDESIREだが、さすがにMCカートリッジらしい繊細な音。
メリハリがあり、一音一音の解像度が高いのが好印象。
間奏のギターソロのなんと美しいことか。
ただ個人的にはもう少し迫力が欲しいところだが、うるさくなりすぎないのもそれはそれで聴きやすい。
どんな曲でもどんとこい、とでも言わんばかりの懐の深さが伺える安心感ある再生音だ。

BESTⅡ「DESIRE-情熱-」空気録音サンプル
空気録音_明菜


次にサウンドバーガー。
このスペックのプレーヤーを聴くのは初めてである。
(本格プレーヤーとおもちゃプレーヤーの中間という意味で)
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Canary「Silvery Moonlight」

やはりDP-59Lと比べると1枚ベールがかかったような感じを受ける。
聴き比べてしまえばという話だが、透明感が足りないのがよくわかる。
バラード曲なので静かなところはもっと静かに聴きたいところ。
イントロ部分でわずかに音のゆらぎも確認できるがボーカルが入るともう気にならない。
VMカートリッジゆえの力強い音はちょっとだけこの曲には向かないと思うものの、ドラムの力強いアタック音はたまらない。
サビ部分の聖子のボーカルはやや余裕がなく苦しさが出た。
間奏のピアノソロはやはりワウフラ性能が出てしまい少しだけ気になった。
とはいえ、レコード再生で最も難しい部分をこれだけ表現できるのは大したもの。

Canary「Silvery Moonlight」空気録音サンプル
空気録音_聖子

BESTⅡ「DESIRE-情熱-」
これはいい。
さすがに得意中の得意の分野といったところか。
繊細かつメリハリのDENONに対し、ダイナミックさを前面に押し出した力強い音だ。
DESIREの聴かせ方はこっちの方が好きである。
サビのボーカルも歪むことなく再生できるのできちんと調整できているようだ。
やや大味とはいえ、聴き比べをしなければ十分満足できるレベルの音といえる。

BESTⅡ「DESIRE-情熱-」空気録音サンプル
空気録音_明菜


2.ラインアウトの音を直接聴く
ラインアウト出力の音は空気を介さないため、ノイズや揺らぎをダイレクト聴きとることができる。
スピーカーで聴いていたアルバムをヘッドホンで改めて聴くとそれまで聴こえなかった音が聴こるようになったという経験は誰にもあるだろう。
なのでノイズ含めごまかしは一切きかなくなるのだ。
本来、プレーヤーそのものの素性を知るにはこの方法がベストである。

まずはDP-59Lから。
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Canary「Silvery Moonlight」
関係ないが比較前に聴いていてノイズが酷かったのでナガオカ式クリーニングをしたのが効いた。
ほとんどパチパチノイズがないので曲にとても集中できる。
しかしやはりこれは難しい曲のようだ。
ワウフラは全く問題ない。
ただサビのボーカルは歪みが出やすいので、ちょっとだけビリついてしまった。
とはいえ、合格ラインといったところか。
そこを除けばCDと見まがうほどの安定感。
デジタル化の再生機として十分使える音といえる。

Canary「Silvery Moonlight」直接録音サンプル
ライン_聖子


BESTⅡ「DESIRE-情熱-」
これはさすがとしか言いようがない。
スピーカーから聴いた音は若干迫力に欠ける印象を受けたが、直接聴くとこれはCDをリッピングしてウォークマンで聴いているかのような錯覚に陥る。
何も考えず聴いていればレコードであることを忘れるような圧倒的な音。
間奏のギターソロ部分が気持ち良すぎる。

BESTⅡ「DESIRE-情熱-」直接録音サンプル
ライン_明菜

次にサウンドバーガー。
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Canary「Silvery Moonlight」
バラード調の曲はやや厳しい印象を受ける。
繊細さが欲しいところだが、解像度が今一歩。
空気録音で視聴した時よりイントロの揺らぎも目立つようになった。
サビ以外にもボーカルのビリつきとノイズっぽさはさらに強調された。
間奏のピアノソロはもちろんだがその他の部分でも揺らぎがでて音程が狂うような場面が散見された。
曲は最後にフェードアウトするがここは特にワウフラの性能差がでてしまった。

Canary「Silvery Moonlight」直接録音サンプル
ライン_聖子


BESTⅡ「DESIRE-情熱-」
うーん、これはDENONとは逆で空気録音の方が印象がよかったかもしれない。
直接だとごまかしが効かないので解像度のなさが露呈している。
とはいえこれはあえて厳しく言うならであって、そのレベルは非常に高く、個人的には合格点だ。
油断して聴いていれば気になるところなどほとんどないといってもいい。
表現は大味だがDESIREはこれでいいのだ。

BESTⅡ「DESIRE-情熱-」直接録音サンプル
ライン_明菜


【総評】
DP-59Lに対するサウンドバーガーはもはや大健闘といえる。
ずっと聴いているとこんなちっちゃなプレーヤーで再生していることを忘れてしまいそうなクオリティだ。
聴き比べさえしなければこれで十分なのではとも思った。
厳しく言えば「いい音」だとは評価できないがそれでも「悪くない音」だ。
いい音の基準があっての「悪くない音」なのだからそのレベルは高いと思っていい。
そもそも比較したくなるほど「いい音」だったから比較して「悪くない音」だったという結論はこのクラスでは最高の誉め言葉ではなかろうか。


あとがき
さて、復刻版サウンドバーガーをひととり検証し終えた感想は、

「大変満足」

の一言につきる。

正直音はどうでもよかったので、音もついてきたのは嬉しい誤算であり、いい買い物したなと思える。

ただ、レコードを再生していてひとつだけ気になったことがある。
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見てわかる通り、カートリッジとシェルがかなり平行だ。
これはおそらく激しく反ったレコードを再生すると外周部はシェルに擦るだろう。
そこだけ注意しておきたい。

近年のレコード復権において、新譜レコードの発売も増え、レコードプレーヤーもいろいろ選べるようになった。

とはいえこれからレコードを聴こうという「初めて世代」の中には、まだ敷居が高いと手出しするのをためらう人もいることだろう。
まずはそんな人には自信をもっておススメしたいのがこのサウンドバーガーだ。
アナログというものは極端な言い方をすれば金をかければかけるほどいい音が聴ける。
それはカセットテープにしても同じことが言える。
だから下手なプレーヤーを買ってレコードの音ってこんなものかと思わないでほしい。

安い、コンパクト、音も悪くない(←ここ大事)の3拍子が揃っており、買って失敗はまずない。
例えレコードを聴くことがなくなったとしても引き出しの片隅にでもしまっておけるだろう。

古くからのオーディオマニアに至ってはアナログ再生の新しい形として、またガジェット感を楽しむセカンドマシンとして末永く愛されることだろう。

気になるのは今後のオーディオテクニカの動きである。
限定7000台を売り切った後、更なる再発を予想する声もちらほら。
オーテク社内でもサウンドバーガーの手ごたえは十分感じているはずである。

今回は60周年記念企画だったので便乗して再発するなら1年以内だろう。
例えば次は60周年記念第2弾 イエロー、シルバーというふうに。
でなければ次は65周年なのか70周年なのか・・・。

長年にわたり、人々のオーディオライフに潤いを与えてくれた縁の下の力持ちが日本のオーディオをこれからも支え続けてくれるよう祈って。

祝 オーディオテクニカ創業60周年
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元オーディオ小僧 MD保管の流儀

以前、CDにカバーをつけることでCDをいつまでも美しい状態で保管する記事を書いた。

元オーディオ小僧 CD保管の流儀 その1
元オーディオ小僧 CD保管の流儀 その2

これは、CDのプラケース(紙ジャケット含む)自体を傷などから保護するだけでなく、帯を見せる保管ができることが最大のメリットだ。

CDのケース形状に応じたカバーもいくつか市販されているので一定数の需要はあるわけだ。
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しかし、オーディオ歴が長いとCD以外にも多くのメディアと接することとなる。

そのひとつに1990年代の「MD(ミニディスク)」がある。


音楽入りMD(再生専用MD)について
MDを録音に使ったことがある人は多いだろう。

しかし音楽入りのMDを好んで購入した人はかなり少ないはずだ。

その理由は、当時はCDが一般的なマスター音源であったからだ。
MDは圧縮されたCDより音が悪いメディアという認識が全ての人にあったかはわからないが、少なくともわざわざMDで買うメリットは少なかったと思う。

ソニーからは多くのMDが発売されていたが、どのレコード会社も発売していたわけではなく、さらに過去作品にまで遡りMD化していたわけではないのでラインナップそのものが少ない。
なんでもMDで聴けたわけではなく、MDど真ん中の時代にリリースされたタイトルに限られる。
だからわざわざMDでアルバムを揃えるには不安があったことは否めない。


録音メディアとしてのMD
そもそもMDは録音するためのメディアというイメージが強く、かつてのカセットテープのような位置づけであった。
レコード全盛の時代、レコードとカセットでアルバムが発売されていたらレコードを選ぶ人が多かったのと同じで、CDとMDならCDを選ぶのが当然の流れであろう。
しかもCDはレコードと違い、ポータブルプレーヤーで外でも聴くことができたので「ポータブルはMDで」という使い分けの意味はなかったのだ。
(もちろんCDよりもコンパクトであるというメリットはある)

また、CDとMDは価格も同じだったのでそれなら音が良いCDの方を選ぶのはごく自然なことだ。
さらにMDよりもCDの方が断然普及しており、録音にはカセットを継続使用していたならなおのことMDはなくても全く不便はないという状況となる。
この時はまだ録音メディアとしてのカセットテープは使われていたのだ。

そう考えるとMDは100%カセットの代替とはなり得なかったので失敗したという見方もあるが、それは言い過ぎである。
MDのインフラは十分用意され、カセットの代わりとして役割を担うだけの下地はできていたからだ。
大きく普及はしなかったが、概ね成功という方が近い。
ハードやソフトの充実度を見れば失敗したと一言で片づけるには無理があるのだ。
MDに移行せずカセットを録音媒体として使い続けた人々からすればそう見えるだろうが、移行した者としてはカセット以上に便利で何不自由なく使えたので意見が割れるのも無理はない。

別の記事に書いたが本当に失敗したのはDCCである。
悲運の規格 DCC Panasonic RT-Dシリーズ DEGITAL ZETAS


さて、当時のオレは音楽入りMDはCDとの音の比較のため、ネタとして1枚買ったにとどまる。
(買ったのは松田聖子のBible Ⅲ)
録音レートを同じにして自分でCD→MDに録音すれば音楽入りMDと大して音質に変わりはないだろうとは思ったが、厳密には音楽入りMDのソースはCDでなくスタジオのマスターテープであり、違いがないともいいきれない。
また、ディスク素材や再生機のピックアップも再生専用と録音用とでは若干異なり、違いは出てくるはずだ。
(結果明確な違いはよくわからなかったが)
結局、当時はMDはカーステや通勤用のMDウォークマン用の音源として、CDからコピーして使うことがメインだった。
オレは完全にカセットの代わりにMDを使っていたのだ。

そんなわけで、音楽入りMDはその希少性から今では高値で取引されることが多く、
コレクション的要素が強いレアな音楽メディアとなっている。

オレも現在何十枚も持っているわけではないので、数が少ない分しっかり保管したいと思ったわけだ。


MDにもカバーを
問題はMD専用と銘打ったカバーが市販されていないことにある。
となれば、なにか代替品を考えなければならない。

そこでまずは音楽入りMDの形状から見ていくことにする。
録音用のMDは多くの人々が知るところであるが、音楽入りMDが当時どのように販売されていたかを知る人は少ないだろう。

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参考:松田聖子「DIAMOND EXPRESSION」

サイズ
縦横:97mm×97mm
厚さ:12mm(1枚組)、24mm(2枚組)

録音用MD(右)と比較すると、全然大きい。
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これは、SONY MD2000やTDK XA PROなどに使われた高級MDのケースと同等だ。
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SONY MD2000

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TDK XA PRO

中身はCDよりさらに小さい歌詞カードが封入されているが、CDと異なるのはジャケットが別にあること。
CDは歌詞カードがジャケットを兼用するのが一般的だ。
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しかし、逆に裏面にはジャケットがなく、帯がその役割を担うことになる。
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裏ジャケットは帯側にあるが、開封後は帯を保管ができないのが欠点。
開封後の帯のやりばのなさはカバーをつける以外解決策がないことになる。

これは以前記事にしたCBSソニーの特殊形状スリムケースの帯と全く同じ問題だ。
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松田聖子 特殊形状スリムケースCDシリーズ

よってカバーをつける意義は大きい。

また、音楽入りMDは基本的に2枚組の収納ケースが存在せず、1枚ものを2つつけることで2枚組としていた。
(倉木麻衣のオールマイベスト等、一部例外もあり)
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参考:2枚組MDの松田聖子「bible」

ケースの構造はCDケースの名称を借りるなら、リッド+トレイ(ボトム)の2ピース構成となる。
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MD本体はトレイの留め具に固定される。
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この
トレイのホールド部の強度は弱く、下の写真のように一か所でも破損するとMDが固定できなくなるので扱いには注意が必要。
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CDのように、交換用ケースが市販されていないため、破損すると替えがきかないのは辛い。
よってカバーをつけて保護したいという気持ちはより強くなる。

収納カバーの選定と加工
専用カバーは存在しないので、自分で作るしかない。

ネットで検索すると様々なサイズのビニールカバーを見つけることができる。
それらのカバーから最適なものを選ばなければならない。

当然MD用などないので、マチ(奥行)を考慮した横幅を算出する。

MDの横幅は97mmで厚さとなるマチは12mm。
つまりカバーの横幅は109mm必要ということになる。
(ちなみに高さ方向は余るので考慮不要)

そこで選んだのはこれ。

シモジマ クリスタルパック T-11-16
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横幅110mmでちょうどいいのがあった。
糊付きだが上部は使わない。

MDを入れてみる。
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ストレスなく入り、ぴったり。

ここからは少々加工が必要。

縦方向の余分な部分を切り取るのだ。
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まずはマーカーなどで印をつける。
ここで底部のマチは縦方向でまかなうので必ずきっちり下までMDを入れた状態にする。

MDを一旦取り出し、余分な部分をカッターで切り取る。
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MDを入れて確認。
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最後にマチで出た余分な角が発生するのでこれを切り取る。
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これでカバーはよりMDにフィットすることになる。
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ちなみに市販のCDカバーもここは切り取られている。

次は2枚組のMD。
MDの横幅は97mmで厚みとなるマチは24mm。
つまり横幅は121mm必要ということになる。
そこで選んだのはこれ。

シモジマ クリスタルパック T-13-24
t13

最初、横幅120mmのT-12-23.5で試したがピッタリすぎてこれはだめだった。
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↑T-12-23.5は途中で止まってこれ以上入らない・・・

T-13-24にMDを収納してみる。
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やはり大きすぎた感があるが余裕がないよりはいい。
(CD同様、帯ごと収納するとなるとカバーに余裕がないと収納に手間取る)
とはいえ、もうワンサイズ小さいものがあればベストだ。

あとは同じく縦方向とマチの角を切り取って終わり。
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残念なのは両方とも若干ビニールの厚みが薄かったこと。
まぁ裸で保管するよりはるかにましで、ケースの保護と帯の収納という目的は達成できた。


あとがき
オレはMDというメディアが好きである。
現役で、という話ならカセットよりMDを使った期間の方が長かったからというのもある。
MDウォークマンもたくさん使ってきた。

そんなMDも今ではネオクラシックな音楽メディアといえる。

昨今、レコードやカセットが再び注目されるようになり、新譜の発売からプレーヤーの発売とこれから始めても当時と遜色ない環境が準備されている。

ではMDにもそんな時代がくるのかと問われればそれはないだろう。

理由は、世界的に普及しなかったメディアであり(海外はDCC)、日本でさえ完全普及とはいかなかったので回顧して懐かしむ人も圧倒的に少ない。

さらにデジタルメディアとなればノスタルジーという言葉も似つかわしくない。
なおかつ圧縮されてCDより音が悪いとなると復活させる意味がない。
MDの音を聴きたいのであれば、現代のウォークマンでATRAC録音すれば再現もできる。

レコードやカセットはアナログだからこそ復権する意義があったのだ。

また、MDはオーディオの観点から見てもやや中途半端な存在といえる。
つまりアナログと本格的なデジタル時代へのつなぎであったということだ。

そうはいってもMDは一時代を築いた重要なメディアであることに変わりはない。

オレはMDがあったおかげでカセットよりも充実したミュージックライフを楽しむことができた。

当時MDを使った人にしてみれば人生の大切な思い出の一部なのだ。

MDの記事をひとつでも多く書き残すことで、願わくば人々の記憶からMDを消さないことに貢献できればと思う。

ジュエルトーン ハンドワインダー CT-406J

ハンドワインダーとはカセットテープを手動で巻き取るオーディオアクセサリーのこと。

そもそも何に使うのかといえば、カセットテープをA面またはB面の末端まできっちり巻き取るのに使う。

カセットテープ全盛期に重宝したアクセサリーだ。

かつてこのブログで取り上げたワインダー2種はその電動タイプ。
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カセットテープのメンテ maxell EW-340

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カセットテープのメンテ SONY BE-A200

これら電動タイプのメリットは労力を要さないことだ。
ボタンひと押しであとは待つだけ。

カセットデッキの早送り/巻き戻し機能だけを切り出したアクセサリーだ。

だったらカセットデッキを使えばいいじゃないか、となるがカセットデッキのある場所でなく、どこでもできるところに意義がある。
さらにソニーのBE-A200においては録音内容を消去できるイレース機能までついていた。

デメリットは電源が必要なこと。
両機とも単4形乾電池を複数使用する。
さらに電池食いでカセットを何十本も巻き取れるわけではない。
なので巻き取りという動作がいかに電力を食うのかを実感する。

かつて、テープの巻き取りを極力必要としない(テープを無駄なく使う)「時間ピッタリ録音」でカセットを作った意義は大きかったのだ。

BE-A200は電源アダプターにも対応していたが、電力が必要であることに変わりはなく、使うことはなくなった。
また、機構がカセットデッキと同様のため、駆動部のゴムベルトが伸びると動かなくなるなど、定期的なメンテも必要だ。

これらを勘案すると電力を必要としない手動ワインダーのメリットは大きい。
労力さえ惜しまなければ、どこでも何本でも巻き取ることができるからだ。

手動といえばカセット世代なら誰もが一度は鉛筆を使っただろう。
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1本だけならそれでもいいが、何十本という単位では時間がかかるし、メンテナンスの観点では実用的ではない。
(巻きムラも盛大に発生する)

鉛筆の場合は六角タイプを使う。
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ただし、鉛筆の径が小さいとスカスカで回せないものもあった。

ちなみにオレは鉛筆は使わず、ゼブラのマッキーを使う。
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この極細側のキャップは四角だがカセットのハブ穴にピッタリサイズなのだ。
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回転時のグリップ力も鉛筆の比ではない。
鉛筆と違いキャップの途中で止まるので手を放しても外れず、使い勝手は抜群だ。
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あとはあまりオススメはできないが片手でやる方法もある。
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この状態でカセットの方をブンブン回す。
回しすぎてカセットが飛んで行ったこともあった。

とにかくカセットテープのコンディションを維持するには多少のメンテナンスと知識が必要であり、巻き取りはその重要な要素のひとつであるわけだ。

気軽に使えるカセットであるが、実はレコードやCDよりもデリケートであり、基本的にクリーニングができない。
ノイズがあるからといってどうこうできるわけでもなく、一度ダメになると音質を戻すことが難しいのもカセットだ。
よってカセットを劣化させないことが最重要であり、以下の記事にて状態維持のノウハウを記している。

カセットテープの劣化と対策

そういうわけでミュージックテープを含め、カセットテープのメンテナンスには欠かせない最強アイテムが今回の「ハンドワインダー CT-406J」なのだ。

それでは詳しく見ていこう。

JEWELTONE HAND WINDER CT-406J
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ジェルトーンというブランド名だが、名前にピンとこないかもしれないがレコード針で同じみのナガオカの中のブランド名だ。
かつてはナガオカ製品の高級アイテムブランドだったらしいが、ホームページを見る限り現代もその名残はあるように思う。
(オレが最もナガオカ製品を愛用した80年代はそんなイメージはなかったが)

何より今もブランド名が残っているのは嬉しい限り。

本体はカセットケースと同じサイズの専用ケースに収納されている。
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カセットケースと違い、ケースは90度以上蓋が開かない作りだ。
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蓋を開けるとケースサイズに合わせたスポンジクッションが現れる。
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本体はカセットサイズに見えるが、カセットテープよりも薄いので、このスポンジがないとケース内で固定されず、中でガチャガチャ動いてしまう。

本体角にある金属チェーン。
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持ち歩きも想定してのチェーンだ。

カセットウォークマン全盛の80年代。
ウォークマンと共にこれを持ち歩いた者もいただろう。
(オレはそこまでしなかったが)

なぜ一緒に携帯したかというと、ウォークマンのバッテリー節約のためだ。
当時のウォークマンのバッテリーはガム型電池登場以前は単4型乾電池を1~2本使用し、再生時間が5~10時間程度のものが多かった。
それしか使用できない中で巻き取りに使用する電力がいかに無駄かというのは言うまでもない。
電動ワインダーがバッテリー食いで乾電池の消費が激しいと書いたが、それはウォークマンにおいても同様なのだ。

A面を聴き終わり、無録音部分のテープの早送りにウォークマンの電力を使うのは外出先では気が引けた。
そこでこのワインダーを使って残りを巻き取り、ウォークマンのバッテリーを少しでも節約して再生に回そうという考えでワインダーを携帯したのだ。

いま考えるとなんとも滑稽にうつるかもしれないが、そういった問題もあったからこそ、ウォークマンのバッテリーは後にロングライフとなり、進化していったのだ。

そういえば、80年代後半あたりになるとウォークマン専用なるカセットテープがソニーから発売されるようになった。
誤解を生みそうだが別にウォークマンでしか使えないカセットではない。

これは単純にテープの回転時にかかる負荷を軽減したものであり、のちにBS(バッテリー・セービング)メカニズムと呼ばれた。
カセットの構成要素である、テフロンシート(セパレートシート)、リールハブ及びパッドなどのテープ回転時に摩擦(接触)抵抗を生みそうな部分を改善したものだ。
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※コトバンク「コンパクトカセット」のページより引用

ウォークマン専用と謳われたこのカセットはテープの回転が非常に滑らかで、結果ウォークマンの再生/早送り時にトルクを必要とせず、軽い力で巻き取りができたのだ。
それまでのカセットといえば、例えばハブに指を入れて回転させると強い抵抗を感じるカセットはたくさん存在した。

とはいっても、初めてTDKのMA-Rを使った時はその回転の滑らかさ(軽さ)に驚いたものだ。
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ウォークマン専用カセットが登場するずっと前からこの高級テープはそこまで考えて設計されていた。

後にソニーカセットの裏書には「ウォークマンで電池長持ち」と一言記載されるようになったがそれはこういう経緯があったからだ。
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とにかく、滑らかなテープの回転は様々な面でメリットがあったということだ。

では、ワインダーの構造を見ていく。

本体はハーフ、手回しギア(白・大)、セカンドギア(オレンジ・中)、ファイナルギア(白・小)で構成される。
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ギア比の変化によって回転数を変化させるという、車や自転車のギアと同様の原理だ。
一番大きい手回しギアには折り畳み式の取っ手がついている。
この取っ手だけは耐久性に不安があるので常に慎重に扱いたいところだ。
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手回しギアを1回しする間にファイナルギア(白い小さい方)は7.5回転するようだ。
つまり鉛筆なら1回しで1回転に対し、これはその7.5倍で巻けることになる。
これをよどみなく回転させることができるので巻き取りが早いことは容易に想像できる。

四隅はカセット同様ねじで締まっているだけなのでメンテナンス性はよさそうだ。
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もっとも、よほどのことがなければ動作しないなんてことはなく、頑丈なので普通に使っていればそうそう壊れることもない。

本体には「onehand & gear」と刻まれている。
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使用方法は簡単。
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カセット装着後

ワインダーの透けてる方に巻きたい方向のカセットのハブが見えるようにセット。
あとは→の方向(時計回り)に回すだけ。

そこで46分テープを使って実際に時間を計ってみた。

使用したのは46分のスモールハブタイプのカセット(maxell UR)。
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手回しギアの回転数はとりあえず1秒につき約2回転のスピードで回せたので、ファイナルギアでは15回転/秒ほどになる。

回し始めると軽い力で巻き取りができる。
しかし、半分くらい巻き取ったあたりで回す指に抵抗を感じるようになる。
回転数を維持する必要はないが、今回は検証のため2回転/秒を意識しつつ巻き取ってみた。

結果は35秒。

これは鉛筆では到底無理な早さだ。
(鉛筆だと休みなくやっても5分はかかるだろう)
さらに早く回せば時間は短縮できるし、ハブ径が大きいラージハブタイプのカセットなら同じく短縮できるだろう。
(巻き取るほどにテイクアップ側の径が大きくなるため巻き取りスピードは上がる)

また、カセットの回転時の摩擦抵抗もカセットにより差があるため、これはあくまで参考値だ。

結果的にカセットデッキでもこの速度で巻き取りできる機種はそうそうない。
(46分で1分くらいなら早い方だろう)
従ってハンドワインダーはゆっくり回してもカセットデッキ並みのスピードで巻き取ることが可能ということだ。

参考までに以前の記事の電動ワインダーで計測した巻き取り時間は以下。
maxell EW-340:約30秒
SONY BE-A200:2分弱

ちなみに気になるのは巻きムラであるが、手持ちである以上皆無とはいかない。
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写真ではわかりにくいが巻きムラはできる。
ただし、鉛筆やマッキーに比べれば優秀だ。

巻き取りスピードをもう少しゆっくり目にし、テーブルに置くなどして固定すればもっと綺麗にできると思う。


電源を必要とせず、外出先でも巻き取りができるハンドワインダー。
手軽で使い勝手のいい最高のアイテムだ。

ただ残念なことに現代は売っていない。
(類似品もみたことがない)

近年カセットテープが見直されるようになり、再びラジカセ等が発売されるようになった。
ただ、普段からカセットテープを愛用するオレにとって、現状では完全復活とは言い難い。
当時と同等の機能やインフラが整っていないからだ。

例えば今のラジカセはノーマルしか録再できないとか、このワインダーのような周辺アクセサリーにしても然り。
そういう意味ではレコードの復活に関しては現環境に不満はない。
(むしろ現代のほうが充実している部分さえある)
カセット以上に需要があるからだろう。

全盛期同様の利便性・多様性も復活してこそ真の復活だ。
カセットに関してはまだそこに到達していないし到達できるとも思えない。

オレは別にカセットの復活を望んでいるわけではない。
単に個人的な思い出や思い入れが強いので常にカセットを再生できる環境を維持してきた。
よって個人的には不便はない。

中途半端でノスタルジーに浸るためだけの復活は正直歓迎できない。
とりあえずカセットの音を聴くことができても、本来のカセットのポテンシャルを引き出せず、カセットを知らない世代に誤解を与えてしまうからだ。

80年代カセット全盛時の音に現代手に入るラジカセ、カセットでは到底及ばない。

残念な話だが、本来のカセットの音を聴きたいのなら当時のカセットデッキと当時のカセットテープを使うほかに方法がない。

本当のカセットの音を知っているからこそ、オレは今もカセットを使うのだ。

4K有機ELテレビ SONY XRJ-65A90J(設置編)

2021年12月 リビングのテレビを買い替えた。

買ったテレビは2021年秋現在ソニーテレビカタログのフラッグシップモデル「XRJ-65A90J」だ。
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思えば実家を出てからのオレのテレビ遍歴はほぼソニー。

・ビクターブラウン管(1989年~)
・ソニートリニトロンワイド(199?年~)
・ソニー液晶ブラビア(2007年~)
・今回の有機ELブラビア(2021年~)
(未だ4台目なのはすごい?)
もちろんメインテレビに限るという話で、サブはソニーエアボードやパナのプライベートビエラ等も使ってきた。

レコーダーやプレステとの親和性もあって今回の機種選定もソニー一択。
液晶の選択も価格の面でなかったわけではないが、やはり有機ELで見てみたい。

また、自称オーディオマニアとしてはフラッグシップモデルが欲しいとなるが・・・。
今回購入したフラッグシップA90Jと下位モデルA80Jにはカタログ数値には出ていない画質の差があるとの口コミも見た。

そこで実際店頭で見比べてみたが、うちの今のテレビに比べたらどれも綺麗で何に買い替えても間違いないというのが正直な感想・・・
まぁオーディオもそうだが真剣に比較しようとすればその時に違いはわかっても買ってしまえば比較はできないし、差があったとしてもだから何なの、とそんなもの。

それでもA90Jを選んだのは14年間も買い替えずに頑張った自分へのご褒美以外のなにものでもない。
あとはオーディオマニアとしてのくだらない意地と自己満足のため。
何よりフラッグシップという魔法の言葉だけでもオーディオマニアにとってプラシーボ効果は抜群だ。
(普段フラッグシップなんて買わないし)
とはいえ買い替えスパンが短ければこの選択はなかっただろう。
今回も当然少なくとも10年は使うつもりだ。
基本不便であるとか壊れない限りは買い替えないタチ(ケチ)である。

そういうわけで新しいテレビは2021年12月10日(金)に我が家に届いた。
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事前に設置場所は片づけておいたので作業スペースも確保済み。
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ソニーから取り寄せた設置イメージ用の紙で65インチが余裕で設置できることも確認済みだ。
左側の梁と右側のカーテンの関係でこれ以上はちょっと厳しいのだ。

ノジマの委託業者さんが設置作業を始める。
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大の男が二人掛かりで作業するのであっという間に組み立て、設置は完了した。
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テレビは壁掛けではなく、ハヤミ工産の壁寄せスタンドKF-260Wを選択した。
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ハヤミ工産 KF-260W

まず壁掛けにしなかったのには大きな理由がある。

オーディオマニアあるあるだが、配線は自分でやるし、ケーブルの取り回しの変更やらでテレビ裏をいじることがちょくちょくあるからだ。
そういった時に壁掛けだと作業がしづらい。
また、壁掛けすると設置後の位置変更の自由度が低く、次のテレビの買い替え時にも何かしらのトラブルの原因ともなりかねないからだ。
(もちろんスペースに余裕があるのであれば壁掛けはしたかった)

よって業者の方にはスタンドの組み立て、テレビの取り付け、テレビケーブル仮接続&チャンネル設定のみお願いし、帰っていただいた。
作業時間はトータルで40分もかからず終了。
(旧ブラビアはリサイクルで引き取ってもらったがリモコンは忘れていった)

あとはオーディオマニアの大好物「配線」の時間。
思惑通り、何度も配線をやり直すことになり壁寄せスタンドで正解だったとつくづく実感。
KF-260Wは底面にフェルトシートを貼ることで床を傷つけることなく動かすことができる。
65インチのブラビアを取り付けた状態でも片手で楽々動かせるのはうれしい。

ここでスタンドの話になるが、今ではかなりの種類のスタンドから選択することができる。
しかし、そのほとんどがオレには使えないスタンドばかりだったのだ。
その理由は、既存TAOCのオーディオラックキャスターが6本脚だから。
お気に入りのオーディオラックなのでこれは変更したくない。
つまり6本脚のうち中央壁側(奥)のキャスターがあることで普通のスタンドは使えないのだ。
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そこで探し当てたのが、ハヤミ工産の「KF-260W」だった。
65インチまで対応した壁寄せスタンドでカラーは壁の色に合わせてホワイトにした。
一番の特徴は写真でもわかる通り、ベース部が四角いフレーム形状で中があいていること。
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ここにラックのキャスターを入れることでベース部に干渉せず、かつラックもある程度動かせるのだ。
このスタンド自体はずいぶん前から知っていたので買うならこれと思っていたが、ひとつだけ問題はテレビの設置高がわからないことだった。

オレの場合、TAOCのラック高(61.5cm)からプラス12cm上にテレビの下端がくることが希望だった。
つまり床からテレビ下端まで最低73.5cmの高さが欲しかったのだ。

その理由は今回を機にレコードプレーヤーをラック上に設置したかったので、レコードプレーヤーがテレビ画面に干渉しないだけの高さが必要だったのだ。
(ちなみに設置予定のレコードプレーヤーは高さ12cm)
店頭でラックの現物を確認していけそうかなと思っていたが、実際設置が完了するまではドキドキだった。
結果、スタンドの最高部に65インチブラビアを取り付けたら77cmも確保できたのだ。
3.5cmもマージンができたのは正直予想外だった。

テレビ下端が床から77cmもあり、上端は床から約160cmにまで及ぶのでちょっと高すぎではないかと思っていたが、ソファに座った状態では意外に違和感がない。
確かにやや見上げる姿勢となるが、ソファにもたれかかると自然に目線は上向きになるため全く疲れないのだ。

実はテレビ買い替えを躊躇していた理由のひとつがこの壁寄せ方法に長年悩んでいたというのもあったので達成感もひとしおだ。

そもそもオーディオもありきでのこの設置高。
設置スペースはテレビの幅分しかなく、のちのちスピーカーを置くことを考えるとテレビ画面にも干渉しないある程度の高さが必要だったのだ。
また、テレビ音声はヘッドホンか今回導入したネックバンドスピーカーを使うので、基本テレビ音声はオーディオから出すつもりはない。

さてテレビ高が問題ないことがわかれば後は楽しい配線。
新しいレコーダーとネックバンドスピーカーが今回の追加機器となる。
既存のケーブルを使いまわすつもりだったが、せっかくなのでケーブルも最適な長さのものに交換してケーブルの煩雑さも軽減したい。

オーディオマニアには購入後も多くの仕事(出費も)が残っているのだ。

アンテナケーブルはテレビ端子が壁に二つあるのでそれぞれテレビ用、レコーダー用として電波の減衰を最小限におさえる接続とした。
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これまでテレビ裏に隠していた無線ルーターはスタンドの後ろに設置スペースがあったので有効活用。
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あとはレコーダー、ネックバンドスピーカー等を仮接続してとりあえず完了した。
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ちなみにテレビ裏面のヘッドホン端子に防塵用キャップをつけたらヘッドホンが常時接続された状態と認識され、テレビスピーカーから音がでなくなったのでキャップは外した。
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細かく接続状況を確認しつつ、様子を見ながらなのでまだまだ終わりではない。

テレビ買い替え

2021年12月 リビング用テレビを買い替えた。

これまで使ってきたリビングのメインテレビはソニーのブラビアで2007年製46インチ液晶「KDL-46X5000」
KDL-46X5000

人生初液晶テレビ ブラビア視聴記

買って間もない頃のブログ記事を読み返すと懐かしい。。
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思えば当時は自身初のハイビジョン対応液晶だった。
アナログ地上波もまだ放送していた。

あれからまる14年、壊れたわけではないがさすがに14年も使ってると現代のコンテンツを視聴するには厳しいものがあった。

2022年現代のテレビの視聴スタイルは放送波だけでなくインターネットによる配信をオンデマンドで視聴できることも必須となっている。
もちろん2007年製のブラビアでもそれができなかったわけではないがテレビ単体としては無理。
プレステやパソコンを介してそれらを視聴してきたのだ。

それに不便を感じるも、まだ綺麗に視聴できるし、何より買い替えは大きな出費となるのでなかなか重い腰が動かなかった。

これまでも何度か買い替えを考えたが強く意識したのは東京2020オリンピック前だった。
オリンピックのタイミングでテレビを買い替えるなんてことは多くの人がやることだが、2020年はコロナの影響でオリンピックの開催自体が怪しいという状況。
当時は「やるかやらないか」そんなグダグダ感も手伝ってオレのテレビの購買意欲もなえていた。
結果、東京オリンピックは一年延期の2021年開催となった。

2020年はテレビを買わない口実ができたことに内心ホッとした部分もあったが、2021年になってギリギリまで迷うも結局既存のブラビアのままオリンピックを迎えることにした。
理由は車の車検で大規模修理費が発生(50万)したため、お金が工面できなかったからだ。

そういうわけですっかり買い替えのタイミングを逃してしまったわけだが、今までのブラビアでは機能面で不満があることに変わりはない。
また自称オーディオマニアのオレが2021年まで2Kテレビを使い続けたことにも驚きだ。

東京オリンピックが終わっても、テレビを買い替えたいという思いは大きくなるばかり。

とにかくお金は貯金を崩してでも工面するしかないが、それなりの購入理由もオレには必要だ。
(何しろテレビは壊れてないので)

そこで買い替えが必要な理由を考えた。
・2022年に冬季オリンピックが開催される
・AmazonプライムビデオやYouTubeを見るのにPS4を起動するのがもう面倒
・テレビをオーディオラックの上に置きたくない(壁掛けまたは壁寄せしたい)
・とにかく4Kが見たい

考えようによってはどれもぜいたくな理由かもしれないが家電好きのオレには十分だ。

オリンピックイヤーが翌年もやってくるのは異例なことだが買い替えの理由にはなる。

また、インターネット配信をシームレスにテレビ単体で見ることこそ真の現代スタイル。

テレビをラックの上に置きたくないのはリビングにもレコードプレーヤーを置きたかったからだ。

もちろん古いブラビアでも壁掛けに対応してはいるが、46インチなのに重量は約40kg、厚さも10cm超と壁の強度やスタンドの耐荷重を考えると現実的ではない。
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ブラウン管から液晶に買い替えた2007年当時はその薄さ軽さに感動したものだが、現代のテレビの物理的な進化も特筆すべき点だ。

なのでテレビ買い替えのタイミングでラック上スペースをクリアにするつもりだった。
リビングラックにはすでにアンプ、CDプレーヤー、カセットデッキ、ミュージックサーバーを置いているが実はこれ全部飾り。
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なぜならスピーカーがないので鳴らしていないからだ。
長年リビングにもセカンドオーディオシステムを作りたいと思っていた。
ラック上がクリアになればさらにレコードプレーヤーも置ける。
テレビを壁掛けまたは壁寄せする際、テレビ下端の高さが決まるのでそのタイミングまでスピーカーを設置するのは控えていたのだ。

とりあえずっていうのができない性分でテレビを買い替えたらやってやろうと長年考えていた。

4Kについては2Kで十分という声もあるがそれは違う。
画質の違いは明らかであり、現代に至ってはコンテンツ不足とは感じない。
4K放送は現状BS/CSのみであるが各種ストリーミングやUltra HD Blu-rayを含めればコンテンツは豊富とも言え、恩恵に預かるには十分な時代となってきた。
将来的にPS5も加えることを考えれば4Kは必須と言える。

そんな訳で今に始まった不満でもなく、数年悩んでいたということで、もう買い替えるのがベストだっという結論に至った。

しかし、最後に背中を押してくれたのはソニーの「セットで最大7万円キャッシュバック」キャンペーンだった。
これは対象のブラビア・ブルーレイレコーダー・ネックバンドスピーカーを購入すればモデルに応じてキャッシュバックされるというもの。
大きな買い物になるので資金の工面が少しでも楽になる本キャンペーンは渡りに船となった。

そういうわけでキャンペーンの条件に合致するかだが、4Kテレビにしたらついでにレコーダーも4K対応にしようと思っていたので同時購入は問題ない。
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Ultra HD ブルーレイレコーダー SONY BDZ-FBTシリーズ

ネックバンドスピーカーはドルビーアトモス対応の「SRS-NS7」のみキャンペーン対象だったがネックバンドスピーカーにはもともと興味があった。
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ネックバンドスピーカー SONY SRS-NS7

実は現状デジタルサラウンドヘッドホンシステム「MDR-HW700DS」を愛用していることもあって、後継機種の発売をずっと待っていたがどうにもモデルチェンジの気配がないのでちょうどいい。

すでにHW700DS付属ヘッドホンのイヤーパッドやヘッドバンド部は経年劣化でボロボロなのだ。
テレビは買い替えなくてもこれだけでも買おうと思っていた。
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サラウンドヘッドホン SONY MDR-HW700DS

そういうわけでたまたま買い替え対象が一致したのは幸運。
(ただ同時購入するつもりはなかったが)

こうなるともう早い。
ソニーホームページで商品仕様を確認し、機種を絞る。
ソニーストアと価格.comで最安金額を比較。
しかし購入するのは地元の家電量販店で現物を見てからと決めていた。

早速、2021/12/3に地元ノジマ鎌倉店に足を運んだ。
リサイクル料金(運搬料)、設置サービス等細かい部分を確認し、金額の折り合いがついたのでその場で即決してしまった。
(お金のことは後で考える)

結果的に支払額はソニーストアでの購入金額よりプラス1万円、価格.com最安よりプラス2万円。
まとめ買いできることや地元の安心感を考えればこの価格差は許容範囲。
ひとつだけ特別なのはノジマのオリジナル保証で売り場担当者の言う「無敵保証」なるものをつけたこと。
これをつけなければ実はどこよりも最安で買えた(ノジマすごい)のだが、今後起こりうる天災を考慮するならテレビが壊れることもあるかもしれない。
ノジマの「無敵保証」はいかなる場合でも破損したら新品交換できるというものだったのだ。

そういうわけで我が家のテレビ環境はようやく時代に追いつくことができたわけだ。

しかし、いざ旧ブラビアとお別れとなると14年も使い続けていたのでいくらテレビであっても愛着がある。
KDL-46X5000は46インチ液晶であるが2007年当時としては大画面の部類に入るものだった。
一番のお気に入りは液晶パネルを囲むスピーカーとさらにその周りを囲むアクリルパネルのデザインだった。
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46インチではあるがこれらのおかげで見た目は55インチに迫るサイズとなる。
難点としては画面横に配置されたスピーカーのグリルにホコリがたまるくらい。
今でも洗練されたデザインだなと思うが、実のところぶ厚くて重い。

それでも当時は32インチのソニートリニトロンブラウン管テレビからの買い替えだったのでその薄さには驚いたものだ。

そしてもっとも古さを感じさせる部分はやはりこれ。
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購入当時地デジはまだ地上アナログ放送との過渡期であったため、アナログチューナーも搭載されていたのだ。
当然近年では何も映らなく、無用の長物となっていた。
また、ビデオ入力にコンポジットやD4端子があるところも時代を感じさせる。
(無線LANはないが有線LANは装備している)

惜しむべきは全く問題なく視聴できていたことだ。
他の部屋で使おうにもさすがに無駄にでかすぎる。
しかし、新しい家電を導入することで自分の生活がより便利になることのワクワクはそれに勝る。
家電にはアップデートがつきものだ。

接続機器の配線を考えたりケーブルの交換を考えるのもオーディオマニアは楽しい。

この記事を書いている時点ですでに新しいテレビは導入済み、かつ1か月以上使っているので、引き続きテレビ・レコーダー・ネックバンドスピーカーのレビューも記録していきたい。
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